23話 悪意の出現
「な、なんだ!? レシレイラ城で何が起こっている!?」
レプリル、ゲヴェイア、ルフロウの三人は鋼鉄車に乗ってレシレイラ城を目指していた。
レイダークに遅れ、やっと城を目視できる距離まで来たが、その時見えたのは信じられない光景だった。
ドォンと爆発音が聞こえたかと思うと、レイシレイラ城が崩壊したのだ。
城の崩れゆく音が鋼鉄車にまで届き、レプリルとゲヴェイアの目と耳がレシレイラ城に釘付けになる。
だが、釘付けになった理由はレシレイラ城の崩壊だけではない。
それ以上の事が起こっているから、ハッチから顔出しているレプリルとゲヴェイアの二人は崩れゆく城から目が離せないのだ。
「あれは……巨人?」
思わずレプリルが呟く。
卵の殻を破る雛のように、レシレイラ城から巨人が現れた。人ではあるが、その全身は歪で、子供が組み立てた積み木の人形のようだ。何処か違和感があるのだ。だが、それは遠くにいるから確認できた全貌だろう。もし、あの巨人の間近にいる者がいたなら、天に届きそうな壁が動いているようにしか思えないはずだ。
巨人なのにキチンとした身なりの衣服を着ているのがさらに違和感だが、それら様々な理由を気にしている暇はない。アレは間違い無くレプリルの――――いや、レシレイラ王国の敵だった。
「あの巨人……シュルークの神魔一体……」
間違い無い。レプリルが知る限り、巨人なんてモノが現れる理由なんてそれくらいしかなかった。
巨人は今の所その場に止まっているが、いつ動き出すかわからない。もし巨人が城の敷地を飛び出し、走り出すなんてしたら悪夢だ。周辺の街に甚大な被害が出るのは必至で、それがどれだけの被害になるかわかったものではない。
「ルフロウ! 一体何が起こっている!?」
「不明です! 現在、秩序警が対応すべく巨人の元へ向かっています」
ルフロウは無線で的確に指示を飛ばし、現地の秩序警を動かしていた。相手が巨人というあまりにも未知の存在だからか、無線向こうにいる秩序警から動揺が伝わってくる。仕方ないだろう。こんな事態、レシレイラ王国の歴史を見ても起こった事がないのだ。
「全鋼鉄車を向かわせろ! 攻撃も許可する! あの巨人を確実に殺せ!」
「はっ!」
ゲヴェイアはルフロウにそう告げると、改めて巨人を見上げた。
「あのクソ怪盗はあんなモノと戦っているというのか……くそっ! ヤツは私が絶対に逮捕しなければならない! 死なせんぞレイダーク!」
「レイダークさん……」
もうすぐレプリル達もレシレイラ城に到着する。
その時、戦場はどうなっているのか。
ただ一つはっきりしているのは、レイダークと神魔一体したシュルークの戦いが始まっているという事だけだった。




