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05 ヒゲ熊騎士団長と第三王女プリムローゼ

 街道を抜け王都へと。

 城壁の大きな門を抜けるといっそう賑やかになり、大通りの左右に色とりどりの建物が並んでいた。


「すごいね、エルミナ。ここは」


 ここが王都なの? とうっかり聞きそうになって何とか踏みとどまる。兄ってことになってるんだから知らないわけがない。


「はい。この国一番の都ですから。アウラーラ様の加護の力も強く、魔王の軍勢は城壁を越えられないと言われています」


 おおお。それなら人も集まるだろう。途中の宿で一泊しつつ村から街を順番に進んで来たが王都はさすがに壮観だった。

 石造りの長大な壁に囲まれ、さらにはその外まで市街が広がっている。街路が整い、敷き詰められた石畳だけでも発展した街なのがわかった。


 城壁の正門では兵士たちに一度止められたけど、やはり聖女の紋章の威力は大きくて同行者の自分もすんなり入ることができた。

 首から提げた聖女の印と杖を見ればエルミナが神官職だと誰でもわかるのだそうだ。 


「聖なる杖は女神様に認められないと持てないんですよ。兄さまのために頑張りましたっ」


 めずらしく胸を張って教えてくれた。しとやかなこの子のドヤ顔を見たのは初めてで、なんだかすごく可愛らしい。ほめてほしそうだったので恐る恐る頭をなでると、うれしそうに目を閉じてくれた。


 銀の髪が手にここちよい。天使か? 天使なのか? 結婚して?!


   ***


「お初にお目に掛かります、勇者殿とお付きの聖女殿。国王陛下の臣下のギュスターヴと申す者です。陛下はお忙しいお方。代わってご用向きをうかがいましょう」


 ――とはいえ、そのまま城に行ったのは無茶でした。


 いや、荘厳なお城にテンションが上がってつい……。

 アウラーラの聖女がついていようと! どこの馬の骨とも知れない自称勇者が急に王に会えるもんか。


 かくして豪華な応接室までは通してもらえたが、王の代わりに熊のような巨漢の騎士と対面することとなっていた。重そうな立派な全身鎧を身につけた壮年の男性だった。


「はい。神官のエルミナと申します。女神の命により魔王討伐にのぞむにあたり、勇者さまを国王陛下にお目通り願いたく、うかがいました」


 ノープランで絶句している俺にかわってエルミナが答えている。ごめん。

 とりあえず一緒に頭を下げておいた。

 

「ふむ。御用の(むね)しかと。お会いいただけるかはわかりませんが、伝えておきましょう。本日のところはお引き取りください」


 ひとまず門前(門中?)払いである。

 しかしこの騎士だって見た目からしてただ者ではない。すごい筋肉の壁。そしてすごいヒゲだ。少なくとも隊長格以上だろう。今度からヒゲ熊騎士団長と呼ぶことにしよう。


 ゴネてもしかたないのでおとなしく引き下がろうとしたところで、なにやら部屋の外が騒がしくなった。


「こ、困ります姫様――!」


 部屋番の若い騎士を押しのけ、意匠をこらした真っ赤なドレスをまとった少女が入り口から姿を現した。

  

「こちらに勇者だと言う者がいらしてるんですって? ――フフ。貴方がそうですか。初めまして。第三王女のプリムローゼと申しますわ」


 俺とエルミナがいるのを見つけると、ロングスカートを両手で広げ優雅に一礼した。黄金の髪がなびき、立ち振る舞いに自信と気品があふれている。

 薔薇の香りをまとった娘の、猫のような瞳が妖しくきらめいた。


   ***


 挨拶を聞きエルミナが慌ててかしこまる。突然の登場に驚きつつ、俺もならって礼をした。

 騎士たちにも予想外だったのか、ヒゲ熊団長が頭を抱えている。


「プリムローゼ様、お戯れはほどほどに――」


「あら。ようするに手を貸してほしいってことでしょう? それならどれほどの腕か見ておいてもよいのではなくて。勇者様が実力十分でしたらわたくしから口添えするのもやぶさかでなくってよ」


 図星だ。そして王が会わないのもわかってるのだろう。

 言ってることはおかしくないが……。まさかこのヒゲ熊と立ち会えとか言うなよ。


「ですから、わたくしと勝負してくださらない?」


 ……は?


「ギュスターヴ、修練場を開けなさい。試合用の模擬剣を用意して」


 え。


「姫様、さすがにそれは……。万一のことがあっては……」


 ほらみろ! ヒゲ熊団長まで驚いてるじゃないか。


「万一はどちらにかしら。だいたいその勇者とやら、本物ですの? 本物だとしても、私に勝てないような腕でしたら価値はないと思わなくて?」


 痛いところを突かれてグゥの音も出ない。

 よく見ると高級な服も動きやすそうなそれで、身のこなしに隙がない。もしや本当に剣が振れるのか。


「あなたも異論ありませんわね?」


 ヒゲ熊の眉がハの字にゆがみ、苦悩が深くなった。

 あれ? 姫を心配する顔じゃない!


「勇者さま、あの――。くわしくは存じあげないのですが、プリムローゼ様は"姫騎士"と呼ばれていらして……」

 

 エルミナがそっと口をはさむ。

 そうですか! さっきからね、周りの騎士の止め方が変なんだよ。

 どっちかって言うと俺が心配されてるんだよ!


「案内しますわ、どうぞこちらへ。そうですわね、おもてなしと思って下さい。紅茶ぐらいは出しますわよ」


 そんなもてなしがあるか! これ負けたらどうなるんだ。

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