20 妹聖女と秘密の温泉
いっしょに入るって――え?!
ひょっとして、konyoku? 思わずカタコトになっちゃうんだけど、ここ混浴?!
水浴びのときも誘ったよな? この国ってそういう文化?!
そうこうするウチにミィはパパッとローブを脱いでお湯に走っていってしまった。
「にゃーっ」
「あ、ミィちゃん」
聖女の衣服を脱ぎかけのエルミナが声をかけるのだけど、なんだかもじもじしていて捕まえられない。
銀色の前髪の奥から何度もこちらを気にしている。温泉の湯気がただよってくるせいか、頬が赤い気もする。
美少女エルミナと……混、浴ッ。
でも……文化ならしかたないよね! 郷に入れば郷になんとか。あわせないのは逆に失礼だよね!
こんな天使みたいな子と、いっしょにお風呂!
ゴクリと生唾を飲み、それならばと自分も上着に手を――。
「おーい、来たべか? 勇者の兄ちゃん。男湯はこっちだよう。そっちは女湯やけん。ハハハ」
……気のよさそうなおじさんの声が柵のむこうからした。
***
ですよねーーーーーーー!!
「じゃ、じゃあ俺はあっちで! またーー!!」
片手を上げて脱兎のように庵を去った。馬鹿馬鹿。そんな習慣ないなら押しかけてただけじゃないかっ。そりゃはずかしがるよ!! このこのっ。
なんでも、脱衣所に屋根のある庵が用意されてるのは女湯だけなんだって。男湯側は柵と棚だけでした。知らないよそんなしくみ! 来る前に教えてよ! あああ恥ずかしい!!
その後は村のおじさんと親交を深めつつなごやかに温泉を楽しんだ。
埋めた火竜の話題になると(俺は封印したと言い張ったんだけど)、ドラゴン温泉として人が呼べるかもなどと話していた。たくましい。
まあ、出汁が出るかもしれないしある意味間違ってないか。
洞くつは竜がいたらどうせ使えないから埋めちゃってよかったって。よしよし。
竜がいなくなって魔物が戻ってくるかもしれないから、それは自分たちでなんとかすると言っていた。
***
「…………でな、兄ちゃん。……」「……そうですか、あはは」「……」
やや離れた男湯から兄とおじさんの談笑する声が聞こえる。村の女性陣はいない時間みたいで、女湯はエルミナとミィの貸し切りだった。
ミィは少しはなれたところで遊んでいる。
「兄さまと入りたかったのにな……」
身体の芯まで温まるお湯につかりながら、エルミナは少しさみしさを感じていた。
でももう小さい頃じゃないから、兄さまもはずかしいかな……?
本当は私もちょっとはずかしい。
首すじや肩に湯をかけ、やわらかな胸をなぞる。プリムローゼ姫ほど大きくはないが、ツンととがった先端といい形のよいふくらみだ。
兄さまはあの方みたいな女性がお好きかしら?
ミス・ローランドにだってなれそうなお姫様。あんなに強くて美人でおっぱいも大きな方だから、きっと男の人は好きですよね。泉で裸を見られちゃったとき、兄さまは私のことどう思ったかな?
線の細い身体を湯船に浮かべつつ、胸に手をあててずっと兄に思いをよせるエルミナだった。
いっしょにお湯に入ることがあったら、背中を流してあげよう。
今度は兄さまから誘ってくれたらいいのにな。そしたら……。兄さま。兄さま。兄さま。
「にゃ~、にゃ~。にゃ~」
「ほらほら、動くとお湯が目や耳に入っちゃいますよ」
温まってお湯から出ると、ミィの髪をわしゃわしゃと洗って流してあげた。肩にかかるふわっとしたボブで、可愛らしい子だと思った。
「ゆーしゃさまもいっしょに入るといいのにね」
パタパタと足先を遊ばせながらミィが言う。動きにあわせて元気に尾がゆれる。
「うふふ。そうですね」
最後に自分も身体と髪を流して女湯からあがる。
疲れもとれてとてもくつろいだ夜になった。
温泉で甘えられなかった分、湯あがりに兄さまにくっついたらやっぱりドキドキしていた。
あたたかくてしあわせ。ふふ。
***
3人でほかほかになって温泉を出た。
「今日はがんばりましたね! 兄さま」
女湯からあがったエルミナがずいぶん近くにきてびっくりしたけど、なんで? ご褒美?!
手をつないで、やわらかな胸に俺の腕をかかえる。上気した肌が色っぽい。だ、抱きかえしたい。『セーブ』してからぎゅってして、嫌がられたら『ロード』したりしちゃギフトの私的利用でNG?
「がんばったにゃ?」
「ええ、ミィちゃんも」
集落へ戻ると長の家に入り、エンシェントブロウを倒したお祝いの宴会をしてもらった。
お腹も空いてたし、採れたての山菜にジビエを煮込んだ鍋がおいしかった。よろこんでもらえてうれしいな。
聖女様の謎のスキンシップに悶々としつつも大仕事の緊張と疲れで、離れに戻るとその日はそのままぐっすり寝た。
――火竜エンシェントブロウ討伐戦、大成功!!
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・聖女エルミナって実は意外と?!
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