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鎖止島の絡む理由と悲しみ

大きい音を立てながら山にぶつかりガイダスが機能を停止した。

「うっ……痛い」「大丈夫?アヤメ……ほんとごめん」『損傷を確認。システム修復モードに移行します。データベース確認。回復コード起動。この処理には95秒ほど掛かります』「ちょ、翡翠!大丈夫?!」「翡翠君?」2人にゆらされる。視界が揺れるがヴェートルが修復プログラムを立ち上げてるせいで駆動系統が動かない。

「ちょっと不味ったわね。私背負うからアヤメはガイダスもう一度出せるかやってみて。とりあえず逃げる事に集中しないと」

凪紗が軽々と持ち上げる。アヤメは何回か発動させようとするが何も起きない。

「凪紗ちゃん……無理みたい」「なら小型でいいよー。さいあく動けない翡翠をどうにかすれば逃げ切れるし」「やってみる。【クロミス】」青紫のロボットが現れる。半円に四足の付いた運搬用ロボット、そこにみんな乗り込んで進み出す。

独特の駆動音が森の中の静寂を打ち破る。木々の隙間を縫うように移動をしていく。

『ヴェートル起動。マスター。指示を』「はっ?!」「翡翠!心配したんだぞ!私が殺しちまったみたいじゃねぇかって」「あぁ、問題ない」「翡翠君ごめんね?」「莢蒾さん、気にしなくていいよ。それに2人が無事なら結果オーライだよ」「随分と丸くなったね」「まぁーな。それが原因でお前と別れたんだがな」「何?あんた根に持ってるの?」「持ってねぇーよ。んで、この後どうする予定だ?」「一応山を通り越して国に戻る予定かな。事情を話せば翡翠も援助して貰えるかもよ」「あー、その件なんだがな……」『マスター。ここでの最適解は無知です』「いや、こいつは信用できる。それに言われたって逃げるのには変わらないだろ?」『マスター。分かりました』「実は、魂だけになった僕はヴェートルという機械人形の中に入ったんだけど。実はこの人形、この国の国宝だったらしいんよ」「えぇー、マジで?でもさっき髪の毛伸ばしたじゃん?そんな感じでなんか誤魔化せないの?」「ちょいまち。ヴェートル、ってことだが?」『マスター。可能です、それと国にルーツを持つことにより資金稼ぎを狡猾にさらに行方不明者の救助が確実に近付きます』「行ける。それと寒いから1回、莢蒾さんこれの上閉じれる?」「う、うんできるよ」クロミスの上が閉まっていく。

「とりあえず1番重要なのは僕が機械人形ってこと。それだけは伏せて欲しい」「あぁそこら辺はいいよ。そもそも私がバラすわけないじゃん」「だったな。ありがと」「照れんだろ。やめとけ」「とりあえず僕復活したから能力使うよ」「ひ、翡翠君使ったら倒れるんじゃ?」「アヤメの言う通りだよ。翡翠休みな」「お、おう。女の子二人から言われたら寝るしかないか。復活したら変わるよ、アヤメだって連続起動辛いだろうし」『視聴覚情報オールダウン。思考システム停止。快眠を提供致します』


『システムセーフティ解除。メイン思考回路エネルギー充填。視聴覚情報良好。擬似睡眠システム解除します。現在バイタリティ安定率96パーセント。機能異常無し。少なくとも能力の使用は可能です』「ありがとよ、2人とも」「しー、凪紗ちゃん寝ちゃった静かに」「お、おう……」凪紗がアヤメの太腿の上で寝ていた。スヤスヤと寝息を立てていた。

「凪紗ちゃんずっと頑張ってたから……私を守ってくれてたの」「そうだよな、莢蒾さん静かだったもんな。まぁそんな姿にどこか憧れも」「ん?」「いや、なんでもないよ。まぁ凪紗起きてから移動すればいいからしばらく待つか」「そうだね……」

空を見上げると星で埋まっている。都会とは違う空を楽しんでいた。

「う、くぅーう……」

しばらく2人で黄昏てると凪紗が目覚めた。「ん?翡翠も起きてたの?よーし行こう!」「あぁ、問題ない。凪紗と莢蒾さん行くよ?【並行移動!】」『起動ワード確認。システム起動』

人々の行き交う街中に3人で現れた。

「おー、街に戻ってきた!」「夜だけどなー。とりあえず動くなら明日だろ」「私らは宿あるけどあんたはどうすんの?」「まぁーお前と2人なら大丈夫だろうけど莢蒾さん居るからな。僕は別口で探すよ」「はっは!私もそうだね。アヤメがちょっと心配だし」「べ、別にそんなことは」「私が心配なの!ほら!アヤメ行こ。ごめんね翡翠」「あぁ、明日またこの場所に来るよ」

『マスター。予定は?』「日本で野宿するか。あっちの方が安全だしな」『マスター。了解。【並行移動】を開始します。地点日本』「もしかして時間かかる?」『先程の爆風でシステムに1部不具合が生じたようで演算システムの構築に時間がかかっています』「ヴェートルだけで能力起動出来るのか?出来るなら僕は借金返済に向けての策を寝るけど」『YESマスター。ヴェートルサブコアにて演算を回して能力はメインで起動できます。ヴェートルとマスターは一心同体なのでマスターの能力はマスターの指示なしでも起動可能です。ですが権限上確認が必要なのでいつも確認を取っています。この権限は書き換え不可能です』「おけおけ、わかった」『マスター。起動可能です』「能力!【並行移動!】」

抉れた地面に現れた。

『マスター。鎖止島です』「なに?!」

「えーそこの女装癖少年大人しくしなさい」「これは向こうで仕方なかっただけだ!!」「知ってるよ。んで?有力情報はあったのか」「2名の命を救いました。僕がいなければ無残な目に」「おうそうか、んで?金の方は」鎖止島(さどじま )の丸太を思わせる太い腕がヴェートルの胸ぐらをつかむ。

「とりあえず落ち着いてください……お金はまだです……明日王国に行って話をつける予定なんです」「王様に色仕掛けをしようってか」「違う!これは潜入用の時にした格好!ほら!髪の毛戻した!」「ちっ、つまんねぇな」「とりあえずこっちの世界で捨てる機械類を清掃して向こうで売るってのが得策と思いました」「向こうのヤツらに使えねぇもん売り付けるのか?詐欺罪で捕まえるぞ」「違います!ってか前話したでしょ?向こうの世界には電気に近い物があるって」「なるほどなー、まぁ機器類のゴミ問題は年々増えてるしな。それで1週間様子みてそこまで稼いでなかったらそれを集めたり清掃した費用を全額借金に乗せるからな!」「自分でやれますよ!」「よーし言質とった。お前の借金に対する支援はしなくていいってことだな」「え?いや」「国が可哀想って1部援助してくれる予定だったんだがなぁ」「そんな!援助欲しいです!」「そうかぁ。なぁお前さ、まぁこんな勢いで言うのもなんだが春夜(はるよ )見てないか?」「(さくらの )さん?」「そうだ。俺の娘なんだよ……お前と同じクラス。と言っても離婚してな、親権取れなかったから元娘か。実はお前の管轄は自衛隊だったんだが無理言って変わってもらったりしたんだ。借金への協力は俺個人からも惜しまない。だから娘をどうか、春夜を頼む」

さっきまで圧をかけてきた男とは思えないほど弱々しく頭を下げる鎖止島を見て初めてこの世界から人が消えたと実感した。

「お前の、お前の能力で戻せるんだろ?」『マスター。それは不可能です』「すまない……僕としてもそうしたいけど、無理なんだ」「そうか、まぁ無理言って悪かったよ。今夜は家に来いどーせ、行くあてもねぇだろ」「え?いいのか」「あぁ、威圧系キャラは本日閉店してな。その代わり学校での春夜の話とか聞かせてくれよ」ガシッと肩を掴まれたままパトカーに乗せられた。


『マスター。時間です』「あぁ、行くかヴェートル」

酒瓶を片手にひっくり返ってる鎖止島に別れを告げず向こうの世界に戻った。

「夜明けだからか人居ないな」『マスター、向こうとこちらでは若干の時差があるようですね』「だな。にしても鎖止島の野郎一晩中語りやがって……話聞きたいんじゃなくて語りたかっただけだろ」『YESマスター。彼は心に闇を抱えてました』「まぁーいっか」

ヴェートルと話していると向こうから2人がやってきた。

「おーい、翡翠」「凪紗!起きれたのか偉いな」「舐めんなよ!」「それで、どうするんだ」「もうすぐすると城が開くからそしたら向かうって感じだけど?」「国王は流石に国宝を覚えてるよな……何か変装の手段を」「あ、あのこれ」アヤメが学生服を手渡してきた。「みんなと、同じ格好なら怪しまれない」「いや、みんな冒険服とか来てるじゃん」「いや、翡翠だけ別の所で見つかったていで」「それでその学生服はどうしたんだ?」「北織知ってるしょ?あいつ初日に死んだのさ……」「北織か、異世界1番好きそうだったのに」「それがアダよ、能力に魅入られて暴走しまくったからね」「そうか」「ほら!辛気臭い話は辞めて、着替えて」

学生服に腕を通した。微かに北織の匂いがして切なくなった。

「そろそろ開門ね、ほら髪の毛も前回みたくどうにかしてよ」「伸ばすって、これでいいか?」「に、似合ってるよ」「莢蒾さんありがとな」

凪紗が兵士に話をするとすぐ案内された。というより王様直々に現れた。

「すまなかったね、まさか他の場所に出てしまう子が居るとは思わんなったでな」

深々と頭を下げる王様にこちらこそ国宝持ち出してごめんなさいと言いたかった。

王様から諸々の説明を受け、謝礼金を受け取り城を後にした。凪紗達も作戦失敗について報告をし王様はそれを宣戦布告と捉え本格的に攻めると約束をした。

「なんかいい人だな。少し仲間意識強過ぎるけど」「でしょー!来てそうそうやらかしたヤツに対しても凄く怒鳴ってソイツらが泣いて謝った時に初めて優しさを見せたりってアメとムチのプロだね」「凪紗、そのありがとな……ヴェートルのこと黙ってくれて」「気にしなくていいよ。前々から言ってるじゃん?弱いやつの味方って」

3人で移動をしてると冒険者の格好をした知り合い4人が見えた。

「おっす、凪紗っち!とアヤメっち。それと誰?」「お、真ん中の誰ー?凪紗の新しいコレ?」煩い男女2組。

「ユータと、ジロー、それにヨシエとサキも!無事だったんだ」「よっ、残念ながらみんなの知り合いなんだよな」「「「「翡翠だな」」」」「バレんのはや」「だって1人だけ居なかったし」「だよな、みんな探したんだぜ!」「まぁ腐っても翡翠だからどこかで生きてるだろってなってたけどな」「でー、その格好はなんだ?」「王様には隠してたけど死んで生まれ変わったって訳」

みんなアニメや漫画にハマりきってただけあって理解は早かった。その道を教えてくれた担任に感謝だな。

「翡翠が生きてるってことは34人か無事なのは」「5人も死んだのか」「カスミ、秋森さん、北織、石田、それと今でも実感がないけどサキ先生……」「サキ先生が?!」「あー、悪かったよ翡翠……あんた悲しむと思って言えなかった」

「……一応聞くけど、どんな最後だった」「誰とは言えないけど、そいつを庇ってね。なんで最後まであの人は命をかけるんだろうね……もう先生とかの括りはないのに」「そうかありがとう。少し1人になりたい」

みんなも雰囲気で察したのか「城に報告行ってくる」と離れていった。

『マスター。大丈夫ですか?』「大丈夫、って言いたいけどヴェートルなら分かるだろ」『YESマスター。私にも悲しみが溢れています。しかも怒りのない本当の悲しみが』「先生は僕の、いや僕らの全てだった。なりきれない半端荒くれ者な僕らにアニメや漫画の世界から見た感動を教えてくれた。まぁおかげで厨二病に目覚めたりしたんだけどね」『マスター。現状における最適解とは何でしょうか』「喜ぶ事じゃないか。最後まであの人はあの人らしかったから」『YESマスター』

悲しさが頂点に達したにも関わらず涙の1つ流れない身体に感謝しつつ歩き始めた。

「よーし、ヴェートル。金を稼ぐぞ」『YESマスター』

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