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第二章 53

「今、フレイヤからの念話が入っただろ!どの辺りから発信されたか判るか?」


「私もあれからすぐに探りをいれたけど、かなり距離があるみたいで、位置が特定できない!」


「これまでの状況から判断ちゅると、人族の王国に居る可能性が高いでちゅ。行きまちゅか?」


「もちろんだ!この後トンネルに戻り、すぐに準備に取りかかるぞ、白と黒は参加すると思うが、シュテンはどうする?トンネルに戻れば、ルリやリト、雫やマリナも居るから一緒に待ってても良いぞ。」


「もちろん、師匠が行かれる所には必ず同行させて頂きます!」


「判った!急いで戻るぞ!」


この判断は、後になって考えると間違っていたと言われても仕方がなかった。


ーーー

「ただいまぁ。」


飛行船を空港へと着陸させ、アカイ君達に係留を任せると、リュート達はトンネル前にある魔族達の宿舎へと足を運んだ。


玄関に掛かっていた鍵を開けて中に入っても、何の反応もなく一瞬不安になったリュートだったが、玄関横にかけてあるホワイトボードを見て納得した。


「泊まり掛けで、始まりの神殿へ行ってるのか……それじゃぁ、誰も居なくて当たり前か。」


そんな事を話ながら、彼らはトンネル内へと入った。


「ただいまぁ……」


リュートは、入ってすぐにその異変に気がついた。色々と改装したトンネルの内装が全て消え失せており、雫とマリナに提供したユニットハウスは、トンネル内のどこにも見当たらなかった。リュートの心の中に焦燥感が巻き起こり、押さえきれずに言葉が飛び出した。


「雫!マリナ!居ないのか?冗談だろ!冗談って言ってくれ!」


リュートは二人の名を叫びながら、トンネル中を走り回ったが、残されているものは、彼が始め転移してきた時に見かけたレールや雑貨ばかりで、それもほんの僅かしか残されていなかった。


「ふざけてないで、出てこいよ!隠れてるだけだろ?」


半分涙声になり呼び掛け続けるも、その声だけが虚しくトンネル内に響いていた。


「神ちゃま、一度前の宿舎に戻って対策を考えよ。」


「そうでやす。今のマスターでは、キチンとした判断ができないです。」


「……師匠」


ジェシカとエイルに両肩を支えられて歩いていく姿は、いつものような溌剌とした彼ではなく、見かけ通りの十代の姿に見えた。


食堂の椅子に座らされたリュートの前に、ジェシカがホットミルクティを置いた。


「神ちゃま、飲んだ方が良いでちゅ。少し落ち着くと思うです。」


両手で顔を覆い、ガックリと肩を落とすリュートの前のテーブルには涙がポタポタと溢れていた。


暫く二人に慰められ、やっと落ち着いたリュートは、その思いを口にした。


「ごめんな。自分が帰れなかったことがショックなんじゃなくて、あまりにも突然に消えてしまうことが受け入れられなかったんだ。例えば、今帰りますかと聞かれたら、僕には二人やシュテンや白と黒だけじゃなく、アカイ君達ゴーレムもいるから、みんな一緒なら別だけど、自分一人では帰ることを選択しないと思うんだ。でも、そんな事に関係なく消えてしまう……その事が怖かったんだと思う。」


「それはよく判るでやす。私達もマスターから切り離された時は同じ気持ちだったでやす。」


「そう、あの時は世界が目の前で崩壊した感じだったでちゅ。」


そう言われて、リュートは彼女達もまた三人で放り出されて一万年以上も彷徨ったことを思い出した。そこを思いやれなかった自分が恥ずかしくなっていた。


「よし、気合い入れ直して、フレイヤを助けに行くぞ!全員総出で迎えに行く。支度してくれ!」


「「イエス、ユアマジェスティ!」」


三時間後に、空港を離陸した飛行船ヤマトと新たに命名された飛行船クマノには、ジャック隊、ドゥム隊など拠点内に残る全てのゴーレムが一機残らず乗り込んだ。


「目指すは、ガルラット王国王都!目的は我らか同胞フレイヤの救出だ!」


「「「「ウォォォォォォ!」」」」

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