第二章 47
「な、何が起こっている!」
「あ、ありえん!儂は王だぞ!この世を統べる資格を持つ者だぞ!」
議事堂内には絶え間ない震動と爆発音が響いていた。
≪地下に幽閉していた人質は、全て正面玄関より森へと逃走されました≫
≪侵入者は更に上層階へと侵攻しています。一般居住区へのゲート閉鎖しました。内部の被害は判明しておりません≫
「これは罰だ!神が我々に下された天罰だ!もう終わりだ!我々は殺されるんだ!」
「軍は何をしてるんだ!どうして早く儂らを助けにこない!」
≪王城ゲート、貴族区ゲートに第一級封鎖を展開しました。第一隔壁閉鎖、閉鎖完了。第二隔壁閉鎖、閉鎖完了。第三隔壁閉鎖、閉鎖完了。最終隔壁閉鎖、閉鎖完了。敵部隊第一隔壁到達、20%損傷。30%損傷。維持は困難と判断します。アンダーレイクからの避難を推奨します≫
議事堂内は阿鼻叫喚の坩堝となっていた。呆然として座り込んでしまう者。やたらと叫びまくり他人を罵りまくる者。現実を全く受け入れることができない者。多くのタイプが散見できたが、自らの行いを悔い改めるような者達は一人もいなかった。
≪ビッビッビッビッ≫
≪フォーンフォーンフォーンフォーン≫
≪緊急脱出装置を起動します。対象者は速やかに非常ゲートに備えてある避難船へと向かってください。貴族区ゲートより避難ゲートへの通路開放します。王城ゲートからの通路を開放します。三十分後には避難ゲートへの通路を閉鎖し、移動が不可能となります。住人は直ちに避難を開始してください。≫
ちなみに一般居住区の住民には当然避難する権利などなかった。
議事堂内にいた者達は、大急ぎで移動を開始した。命が第一と考え、直接避難ゲートへと移動する者。財産が大事と考え居住区へと移動する者。国が大事と残る者は、議事堂内には王も含め一人もいなかった。
堂内には、誰も見ていない敵侵入画像だけが静かに流れていた。
ーーー
[こちら地下侵入部隊隊長のジェシカ、敵勢力はゴーレムと自動防衛装置を除き、殆んど遭遇しません。正門ゲートに数十人の衛兵と思われる部隊が存在しましたが、こちらの姿を確認すると同時に撤収を開始し、殆んど戦闘してはおりません。正門ゲートを確保し、一般居住区への通路、貴族区、王城区への経路を探索中です]
[了解、人質解放状況を報告せよ]
[地下二階の資源処理施設より侵入し、地下一階に収監所と思われる施設を発見。ゴーレム並びに数人の警備兵を排除し、内部へと侵入。檻に閉じ込められていた村民の方達を発見し、七十三名を解放。更に最奥の拷問部屋代に閉じ込められていたエルドリッジ殿を発見し、すぐの移動は難しいと判断された為にポーション使用して回復を促し、現在行動を共にしております]
[了解!一般居住区は無視して良い。そのまま上層階への侵攻を続けろ]
[[[イエス、ユアマジェスティ!]]]
[こちら王城降下部隊隊長のエイル。防御の薄い王城三階広場より侵入し、下層よりのルートとなる階段並びに昇降機を破壊。新規部隊の侵入を阻止した上で、ゴーレム、自動防衛装置を破壊しつつ上層階へと侵攻し、最上階へと到達。予想通り執務室より出入り可能な拷問部屋を発見した所、内部に二十六名の婦女子を発見し、保護しました。そのまま一部部隊には最上階の探索を命じ、保護した人質は飛行船への移送を開始。三十分後には完了します]
[了解、人質の移送を優先し、完了した後に、降下部隊は王城一階より避難ゲートへと向かえ]
[[[イエス、ユアマジェスティ!]]]
[飛行船残存部隊に命ずる。アンダーレイクゲートより、脱出してくる住人を救助するために多数の住民が脱出してくるであろう正面ゲートへと迎え]
[[イエス、ユアマジェスティ!]]
ーーー
侵入部隊が避難ゲートを抉じ開け、中へと侵入を果たした途端、ホールに轟音が響き渡り、一機の巨大なアーモンド状の飛行体の後部より大量の爆炎が吐き出され、外部から筒状の構築物に見えた離陸路を凄まじい勢いで駆け始め、元より逃げ出すなら邪魔する必要はないと命ぜられていた侵入部隊は、それを阻止することもなく見送った。
エイルとジェシカより報告を受けたリュートが、アリアナを伴いそれぞれ灰塵と麗雅に搭乗したままアンダーレイクの広間へと移動すると、そこには地下の牢獄より解放されたエルドリッジも姿を見せていた。
「一般居住区のゲートはこれですか?」
目の前には厚いシャッターで隔離されたゲートがあった。
「神ちゃま、破壊するでしゅか?」
「いやいや、ここの人達は逃げた奴らと違って、本人達にその気がなければ戦闘する予定はないから、なるべく穏便にね。」
「アリアナ様、リュート様。もし許して頂けるなら、私が交渉いたしますが如何でしょうか?」
リュート達は、そう提案したエルドリッジに任せることにして、様子を見ていると、彼はゲートの一番壁に近い所まで歩いていき、そこのインターホンのようなもののボタンを押した。
「私は、エルドリッジです。今後のことについて代表の方と話がしたいのですが ……」




