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第二章 44

三時間もすると、エイルとジェシカが帰投して、前線基地本部での作戦会議が始まった。


「まず、アンダーレイクですが、全体の見取り図はこのようになります。」


スクリーンに山頂にある湖の画像が映し出され、水が徐々に透明化していき、その全貌が映し出された。


「このような構造になりますが、カスケルトさん、あなたの情報とは一致しますか?」


「は、はい……」


彼は、あまりの精密な画像に一瞬言葉を失ったが、すぐに正気に戻り、自分の頭の中にある街の概要を、目の前の画像に照らし合わせて確認し、何ヵ所かで首を捻った。


「何か、はっきりしない場所がありますか?」


「一般居住区、共用施設等は全く問題ありませんが、高位貴族の貴族区と王族が暮らす王城の部分が、私の知るものと異なっております。特にその二つの区域の中間にあるこの筒状の建物に関しては一切記憶がありません……」


「エイル、この建物について、少し角度を変えて撮った画像もあると思うから、それから計算された形状をスクリーンに出してくれるかな。」


「こうでやすか?」


そこに現れたのは、一見湖の底を走るトンネルのように見えるもので、エルフの集落の反対側へと続いていた。


「おそらく、避難路か、物資の搬入路だろうな。今回は、殲滅が目的ではないから放置かな。逃げたい人には逃げて貰いたいからね。」


その判断が間違っていたと後悔することになるとは、その時のリュートは思いもしなかった。


「じゃあ、ジェシカの方はどうだった?」


「主な侵入経路は五ヶ所ありまちゅ。一つは今話題になったトンネル。出口は擬装してありまちたが、簡単に侵入できまちゅ。」


「そこは逃げ道を残すという意味で無しかな。」


「次は、村の中にあるエルドの拠点から、地下を通って行く方法。通路が狭いので、一気に攻め込むことができまちぇん。」


「そこも通路を爆破されたりしたら、手間が掛かるから無しかな。」


「三番目は、山の中腹におそらく空気の取り入れ口と思われる洞窟が幾つかあります。そこから、部隊を幾つかに分けて侵入する方法。」


「それは有りかな。候補に置いておこうか。」


「四番目は、わたち達二人と、ジャック隊、ドゥム隊で、水の中を進んで、壁を壊して侵入する方法。」


「その場合だと、浸水で民間居住区の被害が大きくなるかも……最終手段としておくね。」


「最後は、村の反対側の森に流れ込む川があるですが、、そこに山のトンネルから流れ込む水路があったです。おそらく下水口だと思うでちゅが、そこからなら、街への地下からの侵入経路となるでちゅ。」


「……なるほど。ところでカスケルトさん、エルドリッジさんと村の人達はどこに捕らえられているか判りますか?」


「あくまでも推測ですが、犯罪者を勾留するための施設は地下にあります……ここですね。」


カスケルトは、スクリーンに映し出された映像の左端の部分を指差した。


「おそらくはそこに抑留されていると考えますが、村人全員となると、狭いように思えます。エルドリッジ様は確実にそこに勾留されていると判断できますが、そこに村人全員を入れるとなると、一つの牢屋に十人以上を収容しないと難しいので……断定できません。」


「僕は、あの前線基地を見てきて気づいたことがあります。高位貴族や王族は、弱者に対して加虐志向を持っているようですから、残念ですが、若い婦人や娘達は貴族区ないしは王城に運ばれていると思います。アリアナを脅迫する材料にしないといけないので、すぐに手を出すとは考えにくいですが、考慮する必要があるはずです。」


その言葉に思うところがあったのか、カスケルトはハッとして顔を上げた。


「確かに!おぞましいことですが、あいつらにはその傾向があります。となると、王城のこの部分に王族しか入れない部屋があります。ここの可能性が高いです!」


と言って、王城の一部を指差した。カスケルトの指摘した二つのポイントに目印となるマークを入れ、当日の作戦行動へと話が進んだ。


「まず、明日私が村を訪れると、そこにはアリアナが『灰塵』に機乗して現れるはずです。」


「師匠!どうしてか判りません。」


「シュテンにはまだ少し難しいかもしれないけど、あの機体はアリアナしか動かせないように設定してあるから、自分で動かすのが無理と判った時点で、捨て駒にされる可能性が高い。奴らはね、アリアナに対しては人質を取らないと心配なレベル。ということは、個人レベルで言えば、アリアナよりも弱い。だから、彼女が倒せない敵を自分達が倒せる可能性は低いと判断して、アリアナに戦わせようとする。上手く倒せればそれで良し。もしアリアナが負けても、弱っていれば自分達が倒せる可能性が増えると考えるし、それ以上に強いと判断した場合は、距離があるから自分達の逃げる時間が稼げると考えるようなクズなんだよ。」


「そ、そうなのか!少し判ったような気がします。」


そのシュテンの言葉に、リュートは笑みを返した。


「明日、僕は一人で村へと向かう。『灰塵』の姉妹機である『麗雅』に乗ってね。その二機のバトルの開始。それが僕達の真のバトル開始の合図だ。みんな宜しく頼む。」


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