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第二章 42

「本当にありがとうございました。こちらの世界に来て、何も判らない私達に、一からいろいろと教えて頂いて……わぁぁぁぁん!」


マリナがアリアナに抱きついて泣き始めた。その裾をつまんでいた雫も、マリナと一緒にアリアナに抱きつき泣いていた。


「アリアナ様、再生薬を使用して頂けなければ、私は間違いなく死んでいました。このご恩は命つきるまで忘れません。きっとお返しさせて頂きます。」


「子供はね、大人に甘えるものだよ。大人はね、子供を護るものなんだ。当たり前のことをしただけさ。」


「それにお前の世話は我より、そこの雫とマリナの役目であったからな。大したことはしておらんよ。」


雫とマリナは、リュート達と一緒にトンネルへと向かうことになり、リトもルリと一緒にトンネル前に作った魔族の集落で暮らすことを決め、その日は飛行船でトンネルへと旅立つことになっていた。


「アリアナ様、三人がお世話になったお返しに、ジェルカイはマスターをアリアナ様として、この村に置いていくことにします。面倒みて上げてください。材料とか足りなくなったら、一年に何度かは訪問させて頂きますので、その時に言って頂ければ準備しますので、よろしくお願いします。」


「本当に几帳面な性格だね。生きていくのに疲れてしまうよ……もう少し気楽に生きることがあんたの課題だね。」


「あともう一つ、私の師匠に対するお礼として渡したいものがあるのですが、受け取って貰えますか?」


「あぁ、構わないよ。何をプレゼントしてくれるんだい。」


そう言われて、リュートはリングより真っ白な搭乗型機動兵器を取り出した。


「こ、これは……も、もしかして……」


「はい、僕が生まれて始めて負けた相手である『灰塵(かいじん)戦乙女(ヴァルキリー)ジェシカ』を元に作成した搭乗型機動兵器で、名前を『灰塵』と言います。受け取って頂けますか?」


「本当に、私が貰って良いのかい?遠慮なんてしないよ。ずっと、それこそ産まれてからずっと願っていたものだよ。貰ったら、絶対に返さないよ!本当に良いんだね?」


「意外とアリアナさんしつこいんですね。ただ、機体の微調整やら整備が必要だから、ここに来る度に点検はさせて貰いますよ。取り敢えずは、一旦トンネルに戻って、一週間くらいしたら鬼の国に向かいますので、その時に寄らせて貰います。」


「判った!判った!本当に良いんじゃな!もう返せと言っても返さんからな!」


そんな言葉を交わしながら、リュート達はアリアナやエルフの集落の人達に見送られて、飛行船でトンネルへと向かった。


ーーー

トンネルに着いた一行は、魔族の人達に大歓迎され、宴会は二昼夜続いた。


リトは、今回の災厄を生き延びた子供達の間でも人気が高いようで、着いたと同時に揉みくちゃにされ、それを見たルリがおもいっきり拗ねて、セレニア達の大人組に慰められていた。


トンネルへと戻ってきた雫とマリナは、そのあまりの変わりようにビックリしていた。彼女達が、この世界に迷い込んだのは、今から十年以上前の事で、幸いにも、職業が魔女と巫女というチートな戦闘職と回復職であった為に、ある程度体力、魔力が上がった時点で、早々にトンネルを出て、人の居るであろう場所を目指したらしい。


もし、北に向かえば魔族と遭遇したと思われるが、南に向かった為に、最初に遭遇したのがエルフで、最初は斥候に捕えられた二人であったが、彼女達二人の姿を確認したアリアナが、異世界というより、日本からの転移人だと判断し、保護されたらしい。


それからはアリアナの元で、攻撃魔法や支援魔法、回復魔法を学び、ある程度の実力を有した時点で、彼女を補佐する職を与えられ、各国の情勢、情報を探ったりしていたらしい。


リトに出会ったのも、たまたまウガツ君の調査で魔皇国へと出向いた際に、空き地に転がる彼を見つけ、アリアナの魔法に期待して、転移の魔道具を使用したとのことだった。


こちらの世界に来てから十年以上が経過しているのに、二人の容姿には全く変わりがなく、不思議に思って尋ねてみると、どうやら異世界転移した生き物は、この世界の理から外れる為か、年を取るのが極端に遅くなり、殆ど不老と言っても過言ではないとのことだった。


その言葉に、リュートは自分の成長期がまだまだ来ていないことも考慮すると、これから身長が伸びる可能性は極めて低いと判断せざるを得ず、大地に両手を付いて大きく肩を落とした。


あの猫の魔物が現れた時の為に、雫とマリナは、トンネル内に待機させておきたかったので、リュートは万が一の時の事を考えて、二人にはトンネル内に自室を作るように促した。トンネル内に設置できる六畳程の広さのユニットルームを二つと台所、トイレ、お風呂を備えたユニットルームをそれぞれに渡し、内装はいろいろと自分で工夫してほしい旨を伝え、更に、ベッドやチェスト、ドレッサー、ダイニングテーブルやダイニングボード等の大きな家具は、なるべく希望を聞いて事前に作り上げ、それらを納めたリングを渡しておいた。


本人達は異様に盛り上り、今回に関しては自らトンネル内に残ると言ってくれたので、説得の必要もなく、問題児のルリは、リトのことがあるので、魔族の元を離れることはできずに、エルフの集落から鬼の王の国へと向かう探索には不参加となった。


飛行船にはアカイ君を部隊長とした部隊と、白と黒の神狼姉弟、ジェシカ、エイルのコンビ、それとシュテンが乗り込み、万が一避難民を受け入れる等の処置が必要になったことを考え、千人の住人が半年間生きる為に必要な量の食糧を詰め込んだリングが複数積み込まれ、予定よりも一日早くエルフの集落へと旅立った。


どうせアリアナは『灰塵』に騎乗するだけでは飽きたらず、バトルになることを考慮し、リュート自身の騎乗機である『麗雅』の調整も済ませておいた。


このことが後で役に立つなど、この時には全く想像できなかった。

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