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第二章 37

「しかし狭い!世の中は狭すぎる!まさか、こんな所で、昔の姿さえ無くしたこの世界で、唯一の気がかりであったドラ暴に会えるとは、我は今でも信じられん!」


顔を真っ赤にして興奮しながら話すアリアナを横目に見て、マリナが雫に話しかけた。


「ねぇ、雫。これってヤバくない。私達の立場ないよね。放置よ放置。私達も散々龍人先輩探してたけど、完全に蚊帳の外よ。どうする?(小声)」


「私は先輩と一緒にいる子達の方が気になる。みんな子供。もしかして、先輩はロリコン?それなら……(小声)」


そう言って、雫は自分の胸を見て、ガッツポーズを作った。それを見たマリナは、小さくため息をついた。


「神ちゃま、デザートを食べたいでちゅ。」


場を全く読もうとしないジェシカの提案により、機嫌の良いリュートは、リングから『飛びっきりシリーズ』の一連のデザートを、一緒に取り出したテーブルの上に並べた。


「僕がこちらに来てからチャレンジした究極のデザート達です。皆さんで御賞味下さい!」


ふわふわパンケーキに大きなバニラアイスを載せ、生クリームと苺ソースで飾り付けたものを先頭に、十数種類のパフェ、ケーキ、タルト等が並べられ、更に汁粉、ぜんざい、餡蜜、葛きり、おはぎ、みたらし団子等の和風の甘味も並べられた。


リュートの連れてきた三人を始めとして、雫とマリナ、アリアナも含め、そこに居た全ての人がそれに魅せられていた。あのエルドリッジでさえ、真っ先に争奪戦に参加していた。


「な、なんじゃこりゃぁ!」

「身体が蕩けてしまいます!」

「これが人が作った料理だというのか!」

「う、うますぎて……死んでしまう!」


リュートの甘味に初めて出会ったエルフの人達は、阿鼻叫喚と呼んで相応しい程の興奮に陥っていた。


その興奮に招き寄せられたかのように、入り口の扉がソッと開けられた。


「お前か、忘れておった。お前も……」


「リトッ!」


アリアナの声を掻き消すように、ルリの絶叫が響き渡った。


彼女は手にしていたみたらし団子をシュテンへと押し付けると、扉の所に呆然と立っている少年の所へと駆けつけ、その細い身体を全力でハグしていた。


「リトッ!リトッ!生きていたなら、なぜ連絡しないのよ!お姉ちゃん、心配してたんだよ!良かった!生きてて良かったよ~!」


それでも呆然として立ち尽くしている少年に抱きつくルリの肩を、アリアナは優しく叩いた。


「少女よ、この少年の名はリトと言うのか?」


問われたルリは、リトの反応の乏しさに気付き、恐る恐るその少年の顔を見ると、そこには戸惑いに溢れた頼り無さげな少年の深紅の瞳があった。


「……リト?」


「お姉ちゃんは、誰?……僕のことを知っているの?」


「……リト…」


「少女よ。この子は勇者の愚行のあった二日後の明け方に、その近くの広場で見つかった。見つけたのは、そこにいるマリナと雫じゃ……」


「ホントに酷かったの……まるで焼け焦げた材木のように手足も燃え尽きて、顔も消し炭みたいに真っ黒で、目も口も耳も判らないほどで、ただの丸太が燃えて炭になったような状況だったの……でも、生きてたの。それで、私達がアリアナから渡されていた転移魔法を使って、ここに戻ってきて、アリアナに霊薬のアムリタを使って貰って……」


「……しかし、身体は戻せたが、記憶はうまく戻せんかった。その状況になってからの時間が開きすぎた……記憶だけでなく、魔力回路にも支障を来しておる……力足らずで、申し訳なかったの。」


「そんな事はありません!アリアナ殿が居てくれたからこそ、リトはここにこうして生きているのです。それを望んだらバチが当たります。頭をお挙げください!」


熱い会話が繰り広げられていた。そんな真っ黒な炭のような状態から生き返ったことこそ奇跡であるということは否定できない。


しかし、リュートには責任があった。その事を引き起こした原因が、隣でジャンボチョコレートパフェに貪りついているジェシカだからだ。


「ジェシカ、お前はあの時の事を覚えてるの?」


「覚えてりゅ、あいつはスゴい火焔魔法を使う。千年に一人の逸材でゃと思う。」


「僕に治せると思うか?」


「大丈夫。私達の記憶回路やエイルの魔法回路治すのより簡単だと思う。」


「良し、ジェシカの父として責任を取ってくるよ。」


父と言われて、ジェシカの頬は真っ赤になり、両手を添えて彼女は嫌々してた。


「お話し中申し訳ありません。私にも診せて頂けませんか?」


「リュート、治せるの?」


「判らない……でも診るだけなら、身体や記憶には全く影響しない。」


皆が、リトの所までの道を開け、リュートがリトの手に触れると、彼は一瞬身体を固くした。


「大丈夫……今は診るだけだから。」


そう言って、リュートは両手をリトの頭に添え、生成スキルを発動した。


「解析、記憶回路!」


すると、記憶は存在していたが、それらが全て島状に孤立しており、繋がりができていない事が判った。


「解析、脳神経、脳血管!」


更に神経や血管を解析すると、大きな血管や神経は問題なく再生されていたが、細かな血管や神経が至る所で、絡んでいたり、捻れていたりしていた。

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