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第二章 34閑話

[……]

[……]

[……]


頭の中で、何かが囁き続けている。これはきっと錯覚に違いない。私にもこんな人のような機能があることに驚いている。


[……]

[……]


夢ならば、目覚めれば聞こえぬ筈なのに、それは、いつまで立っても途切れずに伝わってくる。


既に彼女達はいない。二人とも私が殺してしまった。これは彼女達の怨嗟の声に違いない。私を恨み、呪う声が異界より届いているのに違いない。


これは罰だ。マスターを待つことができずに己の欲望のままに突っ走ってしまい、姉妹を手に掛けた私への罰だ。


回路を起動すれば、彼女達の怨嗟の声が聞こえるのだろうか?死ぬほど辛くなるかもしれないが聞いてみたい。あの懐かしい声を聞いてみたい。


私はそんな気持ちで念話の回路を起動した。


[ジェシカ!そんなヨダレまみれの顔をマスターに見せるつもりですか!]


[もうちゅこし、もうちゅこし、寝させて]


[判りました。ではジェシカの分のマスター特製フレンチトーストは私が頂きます]


[えっ?今朝はフレンチトーストなの?]


[しかも、プリンアラモード・バニラアイス添えがデザートに付いてきます]


[ええっ!起きりゅ、起きりゅから、わたちの分は食べないでぇ!……]


「はいっ?」


思わず声を出してしまった。

これは何だ?

何が起こっている?

ジェシカとエイルが生きている?

マスター?マスターが戻ってきたの?

どういうこと?

どういうことなの?


そう言えば、この前会った勇者が何と言っていた?

ウガツ君が地上から打ち上げられた銀色の光に破壊されたと言っていなかったか?

現世にウガツ君を破壊できるものなど無い。


しかし、ジェシカなら?

ジェシカなら、ウガツ君を破壊するのは容易いのではないか?


判らない……


それに、エイルは宝珠も破壊され、復元不可能なほどバラバラに解体されてしまっているのは私がこの目で確認した。あの状態から復元するなどあり得ない。もし彼女を生き返らせることが出きるとすれば、それはマスターでしかあり得ない。


行ってみようか?

行けるわけがない!

彼女達を殺した私がノコノコと出ていけるわけがない。

でも会いたい……

エイルに会いたい……

ジェシカに会いたい……

会って二人に謝りたい……

でも、許される訳がない。

私は咎人。

決して許されぬ罪を背負った咎人。


[これ美味しいよねぇ!フレイヤも食べたいだろうね!]


[これなんて、きっと大好物になるよ!]


涙がポロポロポロポロ溢れてきて止まらない。

熱い気持ちが溢れてきて止まらない。

思わず嗚咽がこぼれてしまう。


こんな夢の中でも、彼女達は優しかった。

帰りたい。

あの優しかった夢の中に帰りたい。

私は回路を閉じることもできず、二人の声に聞き入っていた。


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