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第二章 34

「あの下に見える森が、エルフの森です。」


密集した緑色の濃い高木が生い茂る森の中に、生木を利用した百軒程の木造住宅の並んだ集落があった。


「少ないな……」


その予想よりも少ない住宅の数に、リュートは嫌な予感を覚えた。もしも、あの遺跡の住人を引き連れて移住したのであれば、少なくともその数十倍の住宅があってもおかしくはなかった。


「もともとエルフの民は長寿ですので、一年に産まれる子供の数も少なく、総人口はあの事件の前までは、魔族よりも少なかった筈です。」


[ジェシカ、エイル!この付近の探索をお願いして良いか、どこかに奴らの逃亡先が別に作られている可能性がある]


[[イエス、ユアマジェスティ!]]


「あそこに着陸するまでに、周辺の探索をしても良いだろうか?あの集落では、この飛行船を降ろすことができない。」


「事前に連絡してあるわけではないから、その方が良いかもね。少し離れた所に降ろして、地上を行った方が良いかもしれない。」


「アカイ君、クロイ君、あの森の後方にある頂上に湖を持った山の方に回ってもらっても良いかな。」


「イエス、ユアマジェスティ!」


飛行船は、エルフの集落の上を大きくグルリと旋回してから、船首を山の方へと向けた。


[マスター、良く判りましたね。あのカルデラ湖に見える湖の下に多くの生体反応があります]


[透視でも、湖底に多くの人工物がありますから、おそらくはここに集落を形成していると思われます]


[問題は、それとこのエルフの集落の関係かな]


[おそらくは黒だろうね]


山と森と湖しか見ることのできない場所に、着陸できるような場所はなく、エルフの集落から湖側の方向に五百メートル程の所にジェシカに先に降りてもらい、周囲五十メートル程の樹木を伐採してリングに収納することで空き地を作り、そこに飛行船を着陸させ、エイルとアカイ君達を残して皆が降りた後にアンカーを十本程大地に打ち付け、再び飛行船は五十メートル程上昇させて待機状態とした。


「さぁ、行こうか。」


とリュートが声をかけると同時に、周りから声がかかった。


「何者だ!所属を言え!」


前へ出ようとするルリを抑えて、リュートが前へと出た。


「魔皇国シスターセレニアの命により、かの大災厄を生き抜いた魔族の探索、救助、救出を担当しております。リュートと申します。残りの者達は同胞であり、この二頭の神狼は私の従者であります。宜しくお願いします。」


「子供ばかりで探索行とは、魔皇国の人手不足もたいがいだな。」


と一人のエルフが笑った時、


[ジェシカ殺気を撒き散らせ]


[白、黒、本来の姿へと戻れ]


突然、目の前に巨大な白と黒の神獣が出現し、濃密な殺気があっという間に充満した。笑ったエルフの男は、そこにそのまま尻餅をつき、股間を汚した。


「気をつけて言葉をお選び下さい。あの事があり、我々魔皇国の民は、この世界が他人(ひと)様の国だと自重する事を止めました。既に王国軍二個師団を壊滅させ、あの帝城と多くの民を亡きものとした悪魔の兵器も破壊しました。我々と敵対するというなら、それなりの覚悟をお持ちください。」


すぐにリュート達を取り囲んでいたエルフの責任者らしき男が進み出て、リュートの前に立った。


「申し訳ありません!し、しかし、早計に事を運ばれては困ります。こちらにも上の者の指示を仰ぐ必要がございます。猶予を頂けないでしょうか?」


その男は、ジェシカの殺気にも耐え、白と黒の迫力にも臆せず、堂々と自分の意見を言いきっていた。


「そちらの意向は理解した。無理を言っているのは此方だと理解もしている。我々はここで一日キャンプを張る、明日の朝、八時に結果を伝えに来てほしい。此方から出向くのでも、そちらが重鎮を連れてくるのでも、どちらでも構わない。良い返事を待っている。」


「ありがとうございます。では、失礼致します。」


その男は、周囲を囲んでいた男達全員を引き連れて、村の方へと戻っていった。


ーーー

「な、何なんだ!あの化け物どもは!どいつもこいつも人外ばかりじゃないか。それに神獣が二匹だと、ありえないだろ。あの村などたったの一分で滅亡するぞ。これは父や祖父に相談せねばならない案件だ。今晩、早速アンダーレイクに向かうぞ。」


あまりの戦力に圧倒されたエルドリッジは、ブツブツ呟きながら、これからの事を頭で纏め、村への道を急いだ。


そのまま、村の中央にある一回り大きな屋敷に飛び込むと、直ぐ様、村長であるアリアナの部屋を訪れた。。


「アリアナ様!アリアナ様!大変でございます!」


「エルドリッジよ、少し落ち着け。先程の飛行船のことであろ。騒いでも事は解決などせぬ。まずは報告じゃ!」


「雫よ、茶を淹れてくれぬか、熱いほうじ茶を頼む。」


囲炉裏を挟んで、上手にアリアナが座り、背後に雫とマリナが控え、下手中央にエルドリッジが座って、二名の部下が背後に控えた。


エルドリッジは、雫とマリナの存在が気になったようだか、アリアナはそれを気にすることなく話を進めた。


「話せ!」

第二章も終盤に入ってきました。

おそらく、次回5月22日の投稿で

第二章は完結します。

多くの方に読んで頂けて

本当に有り難いです。

まさか10000PVを超えることになるとは

夢にも思っていませんでした。

感謝しかありません。

☆☆☆☆☆での評価は、本人のヤル気に繋がりま

すので、可能であればお願いします

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