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第二章 33

「はい、この子が今日から仲間に入るエイルです。ジェシカの一番上のお姉さんになりますが、今はまだ記憶が混乱しているので、いろいろと無茶も言うと思いますが、宜しくお願いします。」


「うるさいロリコン野郎!ちょっと知らない間にまた美少女増えてるでやす!ホントに最悪でやす。みんな、こいつはゲスでクズな軽い男でやす。気をつけるでやす!」


パカーンと小気味良い音が響き、エイルの頭が後ろから叩かれ、エイルは頭を抱えた。いつの間に準備したのか、ジェシカの右手には身体の半分くらいもある大きなハリセンが握られていた。


その場にいたルリもシュテンも口を大きくパカーンと開けて、その二人のやり取りに見惚れていた。


「エイルって、さっきの探索の時に遺跡の最下層で見つけたあの機体?」


「そう、もともとジェシカ達の身体の中には自動修復機能が備わっていてね。宝珠さえ無事なら時間はかかっても再生可能なんだよ。あの子の場合は宝珠が破壊されていたから、再生されなかったんだけど、ジェシカの身体に保存されていた欠片を利用して、宝珠を再合成することで、その機能が復活したんだよ。あとは僕の能力でその機能がスムーズに動作するように補助した感じかな。」


「なんか姉妹みたいで、羨ましいです。」


「それはないでちゅ!」


「ええっ?」


「あんたみたいな口の悪いのがお姉ちゃんだなんて、恥じゅかしいでちゅ。」


「それはないでやす!あんなに一生懸命護ってきたでやすのに。」


「護られた記憶はにゃい!」


「ジェシカ、それは違うよ。」


リュートは、フレイヤに自動再生機能を破壊されてからの一万年もの間、記憶や機能が不完全なジェシカを護ってきたのがエイルだということを丁寧に説明した。


「お前はゲス野郎だけど、良い奴でやす。我は少し見直したでやす。」


エイルはすぐに反応したが、その間の記憶のないジェシカは、複雑な表情(かお)をしていた。


[マスターの話を聞いて、あの時の私がしたことが間違っていなかったことが確信できました。有難うございます。あの時、ジェシカに分身を渡しておいて本当に良かった……]


[一万年は長いからね。分身には分身の記憶があるから、記憶の統合には時間がかかると思うけど、時間はたっぷりあるからね、のんびりとやっていけば良いよ。僕も協力するから]


[マスター……ありがとうございます]


「さぁ、この遺跡には最下層に特大の時限爆弾仕掛けてきたから。あと二十時間程で爆発します。一旦、ここを離れて近くにあった大きな湖の湖畔で夕食を食べ、そこでゆっくりと休みたいと思います。メニューは今日はみんな疲れたと思うから、すき焼きにするね。」


「「「やったぁ!」」」

「「ウォン」」


ーーー

すき焼きをたらふく食べ、お風呂も終わり、部屋割りの段階でまた一揉めした。ジェシカとエイルで一部屋にする予定が、ジェシカがリュートと一緒の部屋を強く主張し、それに強く反対するエイルが割って入る感じだった。


「仕方ないでやす。それなら私もこのゲス野郎の部屋で一緒に寝るでやす。それなら良いでやす。」


ということになり、両側からジェシカとエイルに挟まれて寝ることになったリュートは、二人が完全に爆睡した頃を見計らって、ベッドから抜け出した。


「どこに行くでやす?」


「トイレだよ。ついてくる?」


「結構でやす。」


「ジェシカを頼むね。」


「判りきったことでやす。」


部屋を抜け出したリュートはアカイ君達が待機している部屋を訪れた。


「お疲れ様。」


「「「イエス、ユアマジェスティ!」」」


「長い間の激務大変だったね。フレイヤが、迷惑をかけてごめんね。」


「とんでもありません。我々は命令を実行するだけです。」


「話をしにくいから、腕のラインの色に合わせて名前をつけさせてもらうね。君はクロイ君、その隣の子はアオイ君、そっちの子はモモイ君とシロイ君、その名前で構わないかな?」


「「「イエス、ユアマジェスティ!」」」


「光栄であります。マスターから直接名前を頂けるなどと考えてもおりませんでした。」


「私もです。」


「みんなが喜んでくれて良かったよ。今日来たのはね、僕の推測が正しいかどうか確認に来たんだよ。」


「ストレートに言うと、エルドはあの遺跡にいた住民を連れて森へと出て、エルフになった。違うかい?」


「断定はできませんが、それには私も同意します。エルドはジェシカ様の襲撃を強く恐れていました。フレイヤ様の協力が無い以上、殲滅されるのは間違いなく、あそこにエイル様のご遺体があることが知られたら、それ以上に悲惨な目に合うと恐れていたように思えます。」


「そうですね。機械文明を維持すればジェシカ様の襲撃からは逃れられないと判断し、自然回帰、森への逃走を決断したと思われます。」


「エルフがどのような種族かは判りませんが、彼らが機械文明を捨てたことはほぼ間違いはないと思います。」


「そうだよね。やっぱりそうなるよね。この後、僕達は理由があって、エルフの集落へ向かうことになる。君達にはエイルと共にこの飛行船に残って、この船を守り、いつでも飛び立てるように準備しておいてほしい。」


「「「イエス、ユアマジェスティ!」」」


アカイ君達の部屋を出ると、そこにはエイルが立っていた。


「そういうことでやすか……」


「そういうこと、宜しく頼むね。」


そう言って、リュートはエイルの手を取り、部屋へと戻っていった。その時のエイルは何も文句も言わず、嬉しそうに素直に手を引かれていた。

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