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第二章 15

リュートが飛行船に戻ると、既にその子供はユニットバスで身体を洗われて、お客様用のベッドに寝かされていた。


「神ちゃま、ポーションを飲まちて、少し体力を回復させてから、お風呂に入れた。でも、全然目覚める気配がない。」


「ありがとな。この子は栄養失調と脱水で死にかけてるから、先ずは栄養補給かな。」


そう言うと、医療用リングから簡易点滴セットを使って、脱水改善を考えて、低張電界質輸液を始めることとし、急速に輸液し過ぎると心臓に負担がかかることも考えて、時間あたり100ml程度で輸液を開始した。


二時間程で、青白かった頬にもうっすらと紅が差し始めたので、輸液のスピードを時間あたり30mlに落とし、少しブドウ糖を多く含んだものへと変更した。


そんな小康状態に落ち着いた時に、白とルリが帰って来た。


「子供を拾ったんだって?」


「この子なんだけどね。かなり衰弱した状態で、木の洞に隠れていたんだよ。」


「何者なの?」


「それをルリにお願いしたいと思って。」


「鑑定ね。判った。やってみるよ!精密鑑定!」


???

人種 鬼/Жψ‡§

称号 なし

年齢 8歳

職業 魔法拳士

熟練度 1クラス

1レベル(制限中)

体力 16+???(制限中)

魔力 25+???(制限中)

所持スキル

ΨΦθκε ΛλΦβδ ψωВФε 仮死(2)

所持魔方陣

ΞΠΙΦΨ Χδελθ ХЪШю


「「「えっ?」」」


「名前もないってどういうことなの?」


「産まれて直ぐに捨てられた子供達は、名前もつけられていないから『名無し』と表示されるんだけど……たぶん、この子は何らかの呪いか何かを掛けられて名前も記憶も何もかも忘れてしまったんじゃないかな……きっと、自分が鬼族だということも覚えてないと思う。」


「この(制限中)っていうのは何なの?」


「それはね、何らかの手段で成長を阻害されてるってことだと思う。」


「じゃあ、この(+???)っていうのは?」


「それは、その制限が無ければ更に上乗せがあるという意味になるんだけど、どの程度かは判らない……」


「この訳の判らない文字というか記号は?」


「元々持っていたスキルや魔法が、何らかの手段で封印されたのかなぁ?よく判らない……」


「じゃあ、この子の判ってることって、『八歳の鬼族の子供』という情報だけなのか……ところで、鬼族でも子供の頃は角がないの?」


「普通はあるわよ。角は鬼族の力の源だから、能力を制限されたことで消滅したんじゃないかな。その額の傷がその(あと)だと思う」


そのルリの言葉を聞いて、リュートは言葉に詰まってしまった。まだ八歳という幼い年齢で、記憶も能力も名前でさえ奪われて、森の中へ捨てられる。普通なら、そこで諦めてしまっても仕方ないと思える。


でもこの子は、そんな中でも必死に食べるものを探して、木の実を食べたりして生きようとした。彼の眦から涙が一筋流れた。


「僕が、この子の家族になるよ。この子が一人前になるまで育てようと思う。」


「は~い!神ちゃまが家族になるなら、ジェシカもこの子のお姉ちゃんになる。」


「「ウォン!!」」


「白と黒も同じ考えなんだね。」


そう言って、二人と二匹はジッとルリの顔を見た。


「し、仕方ないわね。私もこの子の家族になるわよ!」


「ちょれは違う。ルリはこの子のお姉ちゃんじゃにゃくて、隣のおばちゃん。」


「どうして、私だけ家族じゃないのよ!しかも、おばちゃんって何!私はまだ十歳のピチピチなの!」


さっきまでの暗かった雰囲気が一瞬にして明るく変わり、部屋にはみんなの笑い声が響いていた。


「ん!ん~ん!」


「おっ、起きたみたいだよ。」

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