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「ゆ、勇者か!」


「そんな称号で呼ぶなんて、アクトルは他人行儀だなぁ。」


「き、貴様か!貴様が殺ったのか!」


神父は残った左腕で、勇者の襟首を締め上げた。


「僕は王国軍、人間達に協力しただけだよ。まぁ、いろいろとアイデアは提供したけどね。」


神父は、怒りの為に顔が真っ赤になり、眼は出血するほど充血していた。


「君は、どうしてそんなに怒っているのかなぁ?僕は君とは協力関係を結んだけど、魔族と同盟を結んだことはないよ。」


「詭弁をぬかすな!」


「それに、僕は元々女神に呼ばれて人間の国にその身を置くことになったんだから、女神や人間への協力を反故にすることはない。この世界で人族が覇権を握るために一番邪魔なのは魔族で、それを排除する必用があったからそうした。ただそれだけだよ。」


「わ、儂は始めから利用されていたということか……」


そうやっと呟いて、勇者の襟首を掴んでいた神父の左手がダランと下がった。


「でも、たかが百人程度の中隊から逃げるのに、貴重な右腕一本失う程度の能力だったなら、協力関係結ぶほどもなかったのかな?」


その言葉で、神父はあの部隊が神殿を攻略するためではなく、自分を始末するために派遣されたのだという事実を知った。


「ふっ……あの部隊なら一人残らず殲滅されたぞ。」


「えっ?なかなかやるじゃん。けっこう優秀な兵士を集めた部隊だったんだけどな。」


「僅か数秒で掃討されたらしいぞ……残念だったな」


その嫌みを含んだ神父の返しに、


「ん?」


勇者は首を傾げた。


「……された?君が殺ったんじゃないの?」


その時、勇者の背後の夜空を十三本のオレンジ色の光の帯が走った。それは、燃え盛る街を飛び越え、丘の正面にある平原へと向かい真っ直ぐに進んでいった。


「あそこは王国軍第二、第三師団を待機させていた……」


勇者が言い終わらぬうちに、そのオレンジ色の帯は王国軍の待機している駐屯地へと着弾し、大爆発を起こした。


「ち、地対地ミサイル?」


着弾するのを確認していたかのように、すぐさま次の光の帯が放たれ、その平原は間もなく火の海へと変わっていた。


「そ、そんな筈はない!この世界にはミサイルなんて物はない筈だ!」


そこまで言って、勇者は何かを思い出したかのように言葉を続けた。


「……そ、そうか!古代兵器だな。魔族も古代兵器を……いや待て、それなら、あんな湯水のような使い方などしない筈だ。なんだ?何があった?」


今度は、勇者が倒れている神父の襟首を捻り上げて、強引に立たせた。


「冥土の土産に、いつも取り澄ましておるお前の焦った顔が見れるとはな。これは良い眼福を味わせて貰ったわ。」


質問には答えずニタニタ笑う神父を見て苛ついた勇者は、神父を大地へと放り出した。


「例え、物がはっきりと判らなくても、一緒にぶっ飛ばせば良いんだよ。」


そう言って、勇者は胸の前で印を結んだ。


「召喚!破壊砲デウス・エクス・マキナ!」


勇者のその言葉と同時に、宙に巨大な金色に輝く召喚陣が出現した。


すると、それを待っていたかのように、大地から一本の銀色の光が上空目掛けて真っ直ぐに放たれた。


「対空ミサイルまで持っているとはな……しかし、あの陣は僕の結界で何重にもガードしてある。たかが一基のミサイルで何とかなるほど易くはない。」


神父は、再び見せつけられるであろう光景を直視することができずに頭を垂れていたが、勇者の驚きの声に再び顔を上げた。


「な、なんだ!あの光は?」


宙を引き裂くように上り続ける銀色の光から、三日月状の金色の光が放たれ、鳥が群がるように勇者の結界に襲い掛かると、その結界は弾け飛ぶように消失し、その銀色の矢は真ん中から開き始めた召喚門へと突入した。


「ありえない!ありえないぞ!核ミサイルでもなければ、たかがミサイル一基で何とかなるとは思わないが、不愉快だ!全くもって不愉快だ!」


徐々に姿を現す破壊砲の砲身に、その銀色の光が絡み付くように纏わり付き、その輝き始めた砲身は、鋭い刃物で両断されたように崩落し、地に墜ちていった。


「……はぁっ?」


見えている光景が信じられずに、口をポカンと開けた間抜け面のまま勇者が固まっていた。


その光は、召喚門の中に姿を現してくる砲台を巻き込むように絡み付くと、至る所から焔が噴き出し、稲妻のような雷光がバリバリと音を放ちながら、小爆発を繰り返していた。


「止めろ!止めてくれぇ!」


勇者の絶叫をBGMとするかのように、破壊砲の部品が次から次へと雨のように落下していく。


「お前、知ってるんだろ!誰だ!誰がやったんだ!」


そう言って、勇者が神父の襟首を捻り上げ、その頭をガクガクと揺らすと、さも面白そうに彼は笑みを浮かべた。


「知らないよ。例え知っていても、お前に話すことはない……」


その言葉に憤怒の形相へと変わった勇者が、もう一度彼を突き飛ばし、


「そうかい、それならそれで構わない。もう少し遊んでやるつもりだったが仕方ない。」


そう言って、勇者は胸の前で印を結んだ。


「究極傀儡魔法、脳内情報強制開示。」

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