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ユニットハウスを地底湖の探検ツアーに利用することが決まり、寝室を三部屋に変更し、食堂と居間、台所を続きのオープンスペースとし、浴室ユニットには温泉を封じたタンクを繋げるように工夫した。
念の為に、追加のユニットが作成できるような素材を封じた収納リングも五つほど準備し、とても探検ツアーと呼べるような遠征になるとは思えず、どちらかと言えば、豪華観光ツアーと呼ぶに相応しいものとなることが想定された。
こうなると、物の序でという事で、湖畔に資材を持ち込み、大型バスに車輪を片側に巨大な六輪のタイヤを取り付け、底を密閉して万が一水に落ちても沈まないような物を生成し、動力としては、その上部に円筒上の風洞試験に使うような風発生装置を取り付けた。
内部からの操作で円筒の向きと、前三輪の向きを変えることができ、方向変換できるようには工夫したが、実験を繰り返したわけではないので、実際に稼働させて調整する必要があると考えていた。
内装は更に拘り!前面には強化ガラスを間に空層を挟んで三層に重ねたものを採用し、サイドにも大型の窓を両面に採用し、更にカーテンも設置した。床面は全て板張りとし、やや後部と運転席上部にクイーンサイズのベッド、最後部には大理石を用いた浴室、そこを出た所にはトイレと洗面台を設営した。
中央部には流しと蛇口、三つ口の魔道コンロ、冷凍保存用魔道具を左側面に、右側面にはダイニングテーブルと木製ベンチを固定した。
内部照明には間接光となるように小さな魔道灯を設置、外部照明には強力な魔道灯にレンズを組み合わせたものを前後に二つずつ、両サイドに一つずつ設置すると、そこには屋根に円筒を積んだ巨大モーターホームが存在していた。
「これ、ユニットハウス要らないんじゃねぇ……」
リュートが次に生成に取り掛かったのは、携帯するための武器だった。職業が定まり、体力と魔力は少々マシになったが、まだまだ一般人レベルであり、戦闘力は皆無と言って差し支えなかった。
「近距離用、中距離用、遠距離用に加えて、非常時の投擲武器も必要かな。今は収納リングもあるから、地対空ミサイルとか、無反動砲とか、対戦車ライフルとか、対戦車誘導弾も作れたら作ってみたいな。将来的にはビームサーベルとか、レールガンも作れるようになったら最高だね……」
リュートは、ゲームで使用していた武器達を自分の手で作り上げることができるかもしれないと思い、この生成スキルを手にしてからは、毎日のようにレベル上げに努めていた。ジェシカを見ていると、それは絶対に可能だという確信があったのも幸いしていた。
そんな彼が、今回の遠征の為に準備したのは、近距離用として村正擬きの日本刀、コルトM1911ガバメント風拳銃、SIG MPX風サブマシンガン、中距離用としてHK433風アサルトライフル、L129A1風狙撃銃、遠距離用としてバレットXM-109(ペイロード)風対物ライフルを生成し、M26手榴弾風の投擲弾も非常用として携帯した。
それぞれの弾丸を二百個ずつ確保したが、万が一に備えて、いつでも生成できるような資材も専用の収納リングに準備した。これでリュートの遠征用の装備は完成した。
ーーー
探検ツアーに出掛けることに決定してから七日後の朝、トンネル内にリュートの声が木霊した。
「さぁ、出掛けるぞ!朝食は車の中に準備してあるから、各自三十分で支度を終えること!間に合わなかった奴は?置いてくからな!」
そうルリとジェシカに伝えると、トンネルの外へと向かい、ゴーレムを束ねるジャックに声をかけた。
「ジャック!俺達はこれからトンネル奥の探検に出発するから、ここの守りをお任せするな。侵入した魔物は殺しても構わないが、もしも人族ないしは知恵あるものが侵入してきた場合は、可能な限り排除に留めてくれ。ただし、こちらに被害が出そうな場合は、全力で対処して構わない。結果として殺しても仕方ないと思ってる。頼むぞ!」
「イエス!ユアマジェスティ!」
「……ジャック!その返事は止めろと言ったよね。」
「ジェシカ様のおっしゃるように、あなた様は、私達にとって神に相応しき存在です。このように御返事差し上げるのも許可して頂きたいと思います!」
はぁ!と大きくため息をついて、
「勝手にしろ……」
「イエスユアマジェスティ!」
リュートが背中を向けながら右手を上げて去っていくのを、ジャックは直立不動で敬礼をしながら見送っていた。
トンネルに戻り、白と黒、ルリとジェシカを連れてトンネルを奥へと進んで行くと、淀みの水溜まりは凍りついているにも関わらず、洞窟の隅を流れる水が流れ続けているのを見て、
「わぁっ!冷たいよ!手が凍っちゃうかも!」
光る壁を見て、
「わあっ!壁が光ってるよ!何?何?どうなってるの?」
「これは光苔でちゅね。ダンジョンでもないのに珍しいでちゅね。」
そんな感じで、目的の湖に着いた途端、ルリの顔つきが変わった。
「……イライ・ナイア…」
「……えっ?ここを知ってるの?」




