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翌日、ジェシカとルリを連れて、リュートはルリとリトが襲われた地点の探索に向かった。


ルリは白の背中にどうにか乗ることができたが、ジェシカはまだ小さくリュートの前にちょこんと座り、ヒモで腰をリュートに縛り付けて黒の背中に乗った。本人はかなりの上機嫌で、神しゃまとタンデムだなどとはしゃぎまくっていた。


「お前、タンデムなんて言葉をよく知ってたな。普通は使わないぞ。」


「ジェシカの頭の中には、神しゃまと会ったらしたいことリストがあるでちゅ。タンデムはその一つでちゅ!」


「へぇ~、他には……止めとくわ怖くなってきた。」


リュートは黒に乗っている間に乗馬のスキルが生えたのを感知し、目的地へ着くまでの間に(1)へとレベルアップした。始めからスキルのことを理解していたら、既に幾つかはカンストしているかのようなレベルアップの早さだった。


現場は周囲に放射状に倒れた焼け焦げた木と、半円のクレーター状の焼け焦げた地面があるだけだった。


「……リト……ごめんね…お姉ちゃんが不甲斐ないばかりに……ごめんなさい」


大型犬程度の大きさに姿を変えた白と黒も、ルリの悲しさは理解できるようで、彼女の後ろに控えて大人しく待機していた。


ルリが一頻り泣いて少し落ち着いた頃を見計らって、リュートはなるべく刺激しないよう言葉を選び、ルリに目的であった死者の弔いの行事を促した。


「ルリ、辛いと思うけど、リトが生きていた証を探しにいこうか……」


三人と二匹で半円の中心部までいくと、そこの焼け焦げかたは、周囲よりはるかに厳しく、土の上にはガラス状の結晶が散見でき、リュートは絶句してしまった。少なくともこの中心地は千五百度近い温度になったということだった。この状態では、遺品の一つも見つからないだろうとリュートが思った時、その違和感に最初に気づいたのはジェシカだった。


「ちょっと止まってぇ!この中心がなんかへん?周りにいっぱい人の足跡の痕跡がありゅ……」


ジェシカの目が妖しい光を放ち、強い光を当てたかと思うと、紫色の目へと変わって紫外線探査のようなことを行い、更には真っ赤な目へと変化し赤外線での探査まで行っていた。


「やっぱり中心部に何か物があって、それを何とかしようと二種類の靴が周りを動き回ってりゅ。大きさはあまり大きくにゃいから、二人は子供か女の人だと思う……でも、おきゃしいのは、一人はここから出てるけど、もう一人はここから動いてにゃくて、そのまま消えてりゅ……状況から考えて、真ん中にあった物を持って転移したみたい……」


その言葉を聞いたルリは、目を大きく見開いた。


「ど、どういうこと!リトを誰かが転移で連れ去ったということ!どうして?どうして、そんなことするの!」


激昂してジェシカに掴みかかろうとするルリを後ろから抱えるように止め、リュートが思ったことをそのまま伝えた。


「まず落ち着け!ジェシカは目の前で起こったことをありのままに伝えただけだ。彼女は何もしていない(たぶん、そう思いたい)。」


彼の言葉を聞いて少し落ち着いたのか、ルリは少し力を緩めた。


「俺は、ここに来た二人が、倒れているリトを見て助けるために転移したように思える。」


「えっ?」


その言葉に、ルリは振り返ってリュートを見た。


「良いか、もしリトが死んでいたら、転移魔法まで使って転移するか?死体はアイテムボックスとかにも収用できるから、持っていくにしても、転移を選択する理由がないだろ。次に、仮に重傷を負っていたとしたら、普通は回復魔法やポーションを使うんじゃないか?」


「そう!絶対にそうすると思う!」


ルリは涙が溢れた目を大きく見開いて答えた。


「転移魔法を使えるような人間が、そのどちらも使用できないということは考えれるか?」


「ありえない!そんなのは当たり前のこと!」


持てる全ての思考をこの問題に回しているように見えた。


「じゃあ、回復魔法もポーションも使用できない場合というのはどういう時だ?」


「瀕死ないしは死んで間もない状態か、身体に欠損がある時、中途半端に回復すると固まってしまう……蘇生魔法や蘇生薬、欠損まで回復する万能薬もあるけど、いずれも国宝級で、一般には絶対に普及していない……」


そこまで言って、ルリは気づいたように更に目を見開いた。


「リトは生きてる!人間の国以外の人間がリトを連れていった。しかも、回復させる為に……」


そこからは声にならなかった。そしてそのまま、その場に泣き崩れてしまった。


そんなせっかくの素敵な温かい時間だったのに、それを邪魔するように、嫌らしいダミ声が聞こえてきた。

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