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「ジェシカ、精密鑑定の結果が出たから、そのリュートのボードに、日本語で書き写して貰っても良い?」
「ルリの言うこと聞くのは嫌だけど、御主人ちゃまの為に頑張る。」
そう言いながら、二人でカキカキとペンで、精密鑑定結果を書き写していった。
「御主人ちゃま、こんな結果でしゅ。」
リュートがボードを覗き込むと、そこには通常の異世界転移(主にアニメやラノベの世界線)では見たこともない体力と魔力が表示され、それに相応しくない数のスキルが並んでいた。
名前 深海龍人
リュート
人種 迷い人
称号 白と黒の父
ジェシカの神
職業 無職
熟練度 0クラス
0レベル
体力 17
魔力 33
所持スキル
鍛冶(NA) 彫金(NA) 木工(NA) 栽培(NA)
裁縫(NA) 錬成(NA) 調理(NA) 解体(NA)
抽出(NA) 分解(NA) 育児(NA) 鑑定(NA)
酪農(NA) 狩猟(NA) 釣り(NA) 馴致(NA)
言語理解(NA) 剣術(NA) 鎗術(NA)
「少し聞いて良いか?俺はどうしてこんなに所持スキルが多いんだ?」
「◎▲△◆◆★○■□(御主人ちゃまが、スキルがどうしてこんなに多いのかって)」
「◆η▽♯▼●◎▲◯Φ□」
「フムフム、スキルは本人の行動に沿って生まれてくるから、御主人ちゃまほどの知識があって本質を知る者が、それを実行したり、実践したり、こちらに無いような料理やデザートを次々と作ったりしていたから、この位の数になっても不思議はないって、それに、今は多いかもしれないけど、使わないスキルは自然に消えていくから、最終的にはもっと少ないスキルになるはずだって……ねぇ、御主人ちゃま、このジェシカの名前の後ろにある字はなんて書いてあるの?」
そう聞かれて、リュートはスゴく嫌そうに渋々ながら、彼女に読み方を教えて上げた。
「これは《かみ》って書いてあるんだよ。」
「かみって、何?……神様と似たようなもの?」
「うん、そうだよ……ジェシカを作ったのが、俺みたいだから、そんな表現になったんじゃないかな?」
それを聞いたジェシカは、ニヘラーと嬉しそうに笑って、頬をポッと染めながら、ボードを両手でギュッと抱き締めた。
「神ちゃま、御主人ちゃまは神ちゃま……」
秘密の夢園のような自分の世界に入ってしまったジェシカをどうにか呼び戻し、リュートは更に質問を続けた。
「このスキルの後ろにある(NA)という表示は何なの?」
「△□▽○☆▼(NAが何か教えてって)」
「▲■□◇●★☆」
「これまでに一度も使われていないスキルだって、このまま使わないと消えちゃうんだって。」
「◎▲△◆◆★○■□」
「こっちの世界の人は、子供の頃からスキルがあるのが当たり前だから、無意識のうちに使ってるけど、スキルのない世界に生きてきた御主人ちゃまは、意識しないと使えないかもだって。」
「えっ?じゃあ、意識したら使えるのか?試してみるか、言語理解オン!」
「どう?何か変わった?▼○□▲■なんかはどう?」
「あっ!ルリの言ってることが判るようになった。でも全部じゃなくて、簡単な言葉が理解できるようになった感じかな?」
「どれどれ……」
先程と同じ様にルリがリュートの額に右指を当て、左手の指を自分に当てて精密鑑定を作動させた。
「……あっ、言語理解が(1)に変わった。」
「本当だ、全部じゃないけど、ルリの言葉がかなり理解できるようになった……なぁ、俺のスキルに鑑定があるんだけど、これも頑張ればルリみたいに精密鑑定できるようになるのか?」
「そうね。目に見えるものを、かなりしつこく、これは何だって見てると生えてくるから、それを意識して見ると……」
「あっ、情報が出た!これが鑑定か!もともと、こっちの世界に来てから、これは何だろう?って見てたから、このスキルは意識したら、成長早いかもね。」
「うっく、かなり天才的なスキル成長の早さね!普通はそんなに簡単には成長しないわよ。」
リュートは、スキルの便利さに驚くだけでなく、これは成長の目を摘む諸刃の剣かもしれないと用心もした。
以前なら、目の前の物が何か判らない場合は、多方面から観察して糸口を掴もうと努力したが、これからは鑑定のスキルを使えば、勝手にスキルが分析してくれるようになるだろう。でも、これまでに判明していない能力や成分、効能は鑑定されないために、せっかくのチャンスを不意にすることもあるかもしれない。この事を心に留めて置かないと大きな失敗をするかもしれないということと、現代知識を組み込めば、この鑑定の力は大きな武器になるということを頭に入れた。
その日などは夜の食事の後で、あんまり西洋系のデザートばかりだとバランスも崩れると思い、葛の根から取った澱粉を利用した葛粉を使い、葛切りを作ってみると、抽出と調理のスキルが上がり、抽出(1)、調理(2)へとレベルアップした。
この子達のメニューを考えていくと、それだけで調理スキルはカンストするに間違いないと確信していた。
ちなみに葛切りは、
「「チュルチュルだぁ!スゴい!スゴい!」」
と大ウケだった。




