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「このアバジュレは、だれ何でちゅか?」


そう言って、背中の剣を抜こうとするジェシカを、リュートは羽交い締めしながら止めた。


「御主人ちゃま!どうして止めるんでちゅか!ここは御主人ちゃまとわたしの愛のちゅでしゅ。こんなおじゃま虫は必要ありまちぇん!」


「△▲◎□★■▽◆▼(何?一体何が起こったの)!」


その声を聞いたジェシカは、即座に反応した。


「魔族語でしゅか!●★△▽◎Ψ((クソチビが、ここは私のおうちなの)★◆△▽η(出ていくが良いです!)」


「えっ?お前って、魔族語判るの?」


「当たり前でしゅ!対勇者用最先端魔動機士ジェシカは、万能でしゅ!」


「▲○□▼●▽ΠΦΡ☆‡§(チビはあんたでしょうが!私はもう十歳なの!どう見ても幼年組のあんたに、チビと言われる筋合いはないわ)!」


ガルルルルと唸るように睨み合うルリとジェシカは、まさに一触即発の状態に陥っており、白と黒もどうすることもできず、ハラハラと見守ることしかできていなかった。


ハァと軽く一つため息をついたリュートは、効果があるかは判らなかったが、試しに一つの提案をしてみる為に、手をパンパンと叩いて注目を集めた。


「朝からケンカする子は罰として、朝ごはんのスペシャル生クリームケーキ・イチゴバージョンを無しにして、ただのトーストに変更するよ。」


その言葉に即座に反応したのはジェシカだった。首をキリキリキリと回してリュートの顔を見ると、


「スペシャル生クリームケーキ・イチゴバージョンでしゅと……」


そして生唾をゴクリと飲み込み、確認するかのように目で彼に問いかけ、その頷きを確認すると、即座にルリに交渉を持ちかけた。


「△#♯§※▼□★●○☆(朝ごはん、ただのトーストとスペシャル生クリームケーキ・イチゴバージョンとどっちが良い)?」


「▲◎◯○□☆(もちろんスペシャル生クリームケーキで)!」


あっという間に、二人の間に休戦が締結され、仲良く両手を繋いで食卓へと向かうと、並んでテーブルの席に着いた。


二人の前に、搾りたての生乳で作った蜂蜜入りホットミルク、上面が隠れるくらいに苺を載せて生クリームで飾り付け、更にスポンジ部分にも苺たっぷりの二層の生クリームを挟んだケーキを出して上げた。


背が高くて、お子ちゃまには食べにくいと思われて、初めから倒した状態で出されたことには少し不満があったようだが、二人共に満点の笑顔でナイフとフォークを持ち、顔中を生クリームで汚しながら、無心に食べ続けているのを見て、初めからこれなら何とか上手くやっていけるかもしれないと、少しホッとしたリュートだった。


食後のデザートに出した、オレンジシャーベットとバニラアイスを食べているふたりを笑顔で見つめながら、リュートがジェシカに尋ねた。


「ジェシカ、今の俺には自分がお前みたいな高機能なアンドロイド、この世界ではゴーレムというのかな、それを創造できるようになれるとは思えないんだが……何か情報持ってるか?」


それを聞いたジェシカは、思いっきり首を傾げて、まるで理解不能な言葉を聞いたような表情をした。


「今の私には、御主人様の能力を調べる能力は無いでちゅ……そうだ!△#■※□○●(ねぇ、おチビちゃん!あんたにゃら、御主人様の能力を知ることができるんじゃにゃいの)?」


「●△□○■▲◎(えっ?鑑定のこと?リュートを鑑定すれば良いの?)」


ルリがお皿を手に持ち、そこに付いたアイスクリームを舐めようとしながら、ジェシカに返事を返した。


「そうか、その手があったきゃ!」


真似してお皿を舐めようとするジェシカとルリの手にしたお皿を、慌ててリュートが取り上げると、すごく残念そうな表情を返しながらジェシカが答えた。


「そこのチビが鑑定使えるから、御主人ちゃまが知りたいなら、頼んであげるよ。」


「えっ?マジ?それじゃあ、さっそくお願いしようかな。ご褒美はお昼のデザートにデラックスフルーツパフェを出してあげるということで良いかな?」


「御主人ちゃま、もう少しおまけをしてくらさい。」


「じゃあ、デラックスジャンボフルーツパフェにしてあげるよ!」


「よっしゃあ!△#■※□○●(チビ!あんたが鑑定したら、お昼に特製パフェを作ってくれるようにお願いしたよ。ちゃちゃっと鑑定宜しくです!)」


「◎▲△◆◆★○■□(チビ、チビしつこい!このガキんちょ!私にはルリって名前があるの!でも、特製パフェを獲得したのは立派よ。それには感謝しかないわ!じゃ、さっそくやるわね!」


そう言って、ルリはリュートの前に立ち、額に右手の人差し指と中指を当て、自分の額に左手の人差し指と中指を当てた。


「◎▲◆★□(精密鑑定)!」

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