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リュートが、ルリを食堂のテーブルへと案内し、椅子に座らせてあげると、彼女は物珍しさなのか、視線が落ち着かず、周囲をキョロキョロと観察していた。病気で寝ていたわけではないから、普通の食事でも大丈夫なのかなと考えて、まずはお砂糖と牛乳たっぷりの温めのミルクティーをお手製のカップで出してあげると、のどが渇いていたのか一気に飲み干して、ホニャラーと蕩けるような幸せそうな笑顔を見せた。


先程作っていたお粥は、冷めてしまったこともあり、肉と卵とうどんを更に加えて温め直し、白と黒が美味しく頂いていた。


美味しそうに食べる二匹を見て、少しだけでも食べさせてくれないかなとルリが思っていたのは、リュートには筒抜けだった。


今度は少し温かめの少し甘味を抑えたミルクティがルリの前に置かれ、それと一緒に平皿の上にフワフワとオムレツと軟らかめに仕上げたベーコンを温めたものに、コロッと仕上げた人参と彩りを考えたカリフラワーが添えられて、両サイドにリュートが趣味で作った竹製のフォークとナイフが並べられた。


ベーコンと野菜には、目の粗い塩とコショウが振りかけられ、オムレツには、ルリが見たこともないような赤いソースがかかっていた。


更に出されたパンを使った料理に、ルリの目は釘付けになった。


食パンに何かを塗ってあるのか全体的に黄色い表面に変わっており、それを大量のバターて焼いてあるのだが、そこからミルクやらハチミツやらいろいろな甘味の匂いが立ち込めており、一つにはフワフワとした真っ白な泡状のものが載せてあり、もう一つにはたっぷりなイチゴジャムが載せられていた。それでも十分に甘いはずなのに、更に上から茶褐色の透き通ったシロップがかけてあった。パンの部分は四角い切れ目が入れてあり、クリームやシロップは余すところなくパン全体に行き渡っていた。


どうして、彼から甘い優しい匂いがするのか判った瞬間だった。


「▲&■○★☆§&♪(さぁ召し上がれ♪)」


これだけの甘味をこれでもかと使った料理が美味しくないはずがないと、ナイフとフォークでクリームの載ったパンの一部を口にすると、そのクリームもとてもフワフワで溶けるような感触で、おまけにスゴく甘かった。ルリの意識が一瞬で崩壊するような美味しさだった。


それからは、もう夢中で食べた、そして、食べ終わってから、もう一つの平皿には全く手をつけていなかったことに気づいてしまった。


「あっ?ごめんなさい。」


ルリがそうリュートに謝ると、リュートはニコニコ笑いながら、テーブルの上にある別のナイフをソッと取り、私のお皿の上の焼き焦げ一つないオムレツにソッと触れると、それはパカリと割れるように開き、中から緑色のお豆や小さく切った人参、小さなお肉が流れるように溢れてきた。


「わぁ~っ!スゴい!」


赤いソースと絡まるように広がったものを、彼に渡されたスプーンで食べると、それはもうトロトロで、口の中にジワーッと美味しさが広がっていった。私は再び夢中になり、そのお皿も綺麗に食べ終わると、


「■▲◎◆☆□○△●▲■?(だいぶ食べたけど、デザートはいかがですか?)」


とリュートに尋ねられ、意味は全く判らなかったけど、私は首を縦にブンブンと振った。


そして彼が取り出したのは、少し長めのやや小型の平皿に盛り付けられた皮を綺麗に剥いたフルーツと、真ん中に半球状に盛り上げられた白いやや固めのクリーム、お皿人体を彩る透き通ったプルプルの宝石のように輝く小さな塊だった。


「うわぁ~っ!」


食べるのが勿体なくなるようなカラフルな色彩のおそらくはデザートに見とれてしまった。お城にいる時にシェフが作ってくれたケーキや果物などとは全く異なる感覚のお皿の上に、私の目は釘付けになって固まってしまったが、彼に促されて、手渡された小さなスプーンで白い半球状のクリームを少し掬い、それを口に入れた。


驚きが口の中に広がっていく、まるで氷を食べたような冷たさが口に入ってくると、それは直ぐに溶けて、甘さと柔らかさが素敵な香りを伴って口の中に広がった。


「おわぁぁ!」


ルリは、今どこにいるのかが判らなかった。知ってる者が誰もおらず、言葉の全く通じない人間が一人だけ存在する世界に、私は迷い込んでしまったんじゃないか?実は、あの崖から落ちた時に自分はもう既に死んでいて、ここは死後の世界なんじゃないか?美味しくて満面の笑みを浮かべて手を動かし続けながら、そんな事を考えていた。これが死後の世界なら、私は死んでも良かったかもしれない。そんなことまで考えていた。


最後に全く予想もつかない透明なプルプルした小さなスライムみたいなものを、ルリはおそるおそる口に入れた。


仰天した。それは色毎に異なるフルーツの果汁を飛び込めていた。弾ける毎に異なるフルーツの爽やかさが口の中に広がった。


「○◎□▼▲◆★!(それはフルーツジェリーというんですよ!)」


リュートの声も聞こえぬほどに、夢中でスプーンを口に運び、気づくとお皿は空になっていた。


「あっ!」


残念そうな私の声に、リュートは笑いながら、


「%〒§▼■□○●△■○□★◆☆&♭§@▼(今日は、少し食べすぎてしまいましたからね。楽しみは次の食事に残して置きましょうね)」


優しく返事を返してくれた。ルリには全く意味の判らない言葉だったけど、不思議と内容は理解できて、首を大きく縦に振って頷いた。

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