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大学一年生の頃のくそダサい私へ

私はあのとき、笑顔が素敵なあなたが「きれいな髪の毛でいいな」と悲しそうな顔をするのも、「きれいな肌でいいな」と副作用のある頬をさするのも、どうにも耐えられなくて自分の髪も顔も服もめちゃくちゃにしないとやってられなかった。間違ってると分かっててもそうしないと気が済まなかった。抗がん剤は美しさを奪い、癌は肌の色を変え、体型まで変わっていった。生きるか死ぬかで闘ってる人を支えるのに、自分が思いのままに女性らしく着飾ることは邪魔に思えて仕方なかった。

変なメガネをかけて、美容室にもあんまり行かないで、いつもすっぴんで、中学生が着るような安い服を着て。どんなにしっちゃかめっちゃかにしても、あなたと同じにはならなかったけど。


「かわいくない」私は、「ダサいことに気づいていなさそうな」私は、世間から辛いことに気づいてもらえなかった。後から外見をある程度整えることが、心配してもらえるパスコードみたいなものなんだとじわじわ実感した。


すごく、確かに、人を寄せ付けないルックスだった。今となっては恥ずかしくて同じ格好で外を歩けない。本当に。

だし、あまり救いの手を差し伸べる気にもならない。汚くて、ダサいから。


だからこそ、話を聞いて、中身をみて、救ってくれた本当の友だちは偉大だ。ずっと大切にしたい。


私が今思うのは、私もあの頃の私を抱きしめてやれるような器になろうということだ。私はそうならなきゃダメだ。

服や化粧品を見ても、本当はかわいいのに「興味ない」と、そう呟いて自分に嘘をついて生きる辛さを知っているから。買い物するたびに「私ばかりごめんなさい」と、生きることに醜さを感じる辛さを知っているから。辛くて苦しいのに、見かけのせいで人に疎まれて、余計辛かったね。その人たちを恨んでしまう自分が憎くて仕方なかったよね。その人たちが間違ってないことも分かってたんだよね。


自分が間違っていたとは思う。そんなこと、誰も望んでなかった。でも優しい優しいあの頃の私は、どうしても目の前に苦しんでいる人がいるのに自分だけ楽しむのが許せなかったんだよね。よく頑張った。結局誰も、わざと汚くしていることには気づかなかったね。どんなに屈辱的な想いをしても、気づかないふりして笑って過ごして、帰って一人で泣いていたよね。よく頑張った。今の私が抱き締めてあげるよ。

今の私は綺麗だよ。髪も染めて切って、メイクもたまに研究して、服だって買いたいと思うし、買えるようになった。初めて眼鏡を変えた日は大犯罪を犯したような気にもなったけど笑。今は罪悪感もない。…あんまりね。

生きていいんだよ。あなたの人生を生きても。楽しんでもいいんだよ。元気で若くて美しいこの時代は、後からどんなに望んだって返ってこないんだから。今まで我慢した分、あの人ができなかった分まで、存分に着飾りなさい。おしゃれを楽しんで、恋でもして、勉強もバイトもほどほどにして、本当にやりたいことを見つけなさい。この世の誰にも綺麗なあなたを責める権利はないから。きっとあの人だって、「きれいになったね」って喜んでるはずだから。安心して幸せになってよね。

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