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上中下の上

 その商業施設は一階と二階の中央通路を日常の往来に開放している。深夜遅くから日の出ころまでは閉鎖するが、終電のあとしばらくまでは誰でも歩けるのである。

 私が通るころには誰もいないので、いつも遊びとも訓練ともつかぬことをする。

 ドアを開けて向こう側に辿り着くまでに、タイルのつなぎ目を両足に挟むところに立ち、目を瞑って十歩歩いて確認し、目を瞑って二十歩歩いて確認し、目を瞑って真っ直ぐ歩けるように両足の力加減を等分にするのだ。

 子供の頃「怪奇現象もの」の本を読んで、手に利き手があるように足にも利き足があり、利き足の方に力が込められる、なので雪山で目標にする物が見えない場合、まっすぐ歩いているつもりでも大きく円を描いて変な方向に進んでいることがあると書かれていた。

 ただの知識として長いこと覚えていただけだったが、この通路を歩くようになってから、目を瞑って歩いても誰にも衝突しないし十歩二十歩なら壁にぶつかることもないだろうと気がついたのだ。

 ドアをくぐって目を瞑り、足に込める力に集中する。

 十歩歩いて自分の位置を確認し、またつなぎ目に戻って目を瞑り、と繰り返していると、目を開けると通路が真っ暗になっていた。




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