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第1話 プロローグ・モノローグ


 この惑星の数多(あまた)の生き物の一つが、死を理解して、死者を想い、その先の世界を願った時、私は生まれた。


 言葉にならないほど、ひどく素朴で、だけど純な信仰が私を生んだ。


 生まれたばかりなのに、私は、私を信ずる者達によってあるし、そんな彼らを(まも)らねばならない、と本能で理解していた。


 そして私よりもさらに上位の母なる創造神様から、そのために必要な知識を与えられていた。


 しかし、力は最低限しか与えられなかった。


 惑星を守護する女神はその惑星の生き物の信仰心を力とする。


 それは私が自分で獲得しなければならないものだ。


 だから私はまず最初の信仰者を護ることにした。


 この惑星で初めて愛する者の死を(いた)んだ男を。


 今の私が授けることのできる恩寵(おんちょう)はそれほど多くない。


 それを全てこの男に注ぎ込んだ。


 「知恵」と「体力」のパラメータが他の個体の二倍弱に上がる。


 これは賭けだ。


 この男が信仰を持ったまま群れの長となり、それを彼の種族に広げてくれれば、私は存在し続けることができるし、他の個体が信仰を持つ前に彼が死ねば、私は消えてしまう。


 誰にも涙を流してもらえることもなく。


 今、彼が死んで私が消えても、惑星の神自体はいずれ別の誰かの信仰によって生まれるだろうが、それは私ではないのだ。


 幸い、彼は部族の長となり、その中で死者が出た時には部族の個体が皆、祈りを捧げるようになっていった。


 私の力が、少し上がった。


 私は新たに「天啓」の能力を()た。


 これであの男に色々と教えてやることができる。


 様々な道具、薬草、安全な土地なんかを。


 ……なんで素直に聞き入れないのよ…… !


 頭がおかしくなってなんかないってば !


 「知恵」を上げ過ぎない方が良かったかしら ?


 とにかく言う通りにしなさい。


 えい !


 そう、それでいいの。


 ……転がってる石をぶつけて脅かしたけど、本当は女神が直接下界に物理的な力を働かせたらダメなのよね。


 まあこれくらいは見逃してもらえるでしょ。


 神の声を聞く男の言うことが全て正しければ、私への信仰はまた増えるはずよ。


 ……狙い通りね。


 私って女神の中でも才能がある方なんじゃないかしら ?


 次に得られる力は…… ?


 「気象操作」と……「英霊獲得」か……。


 ここは「気象操作」で決まりね。


 私の「天啓」で原始的な農耕を始めたし、天気をコントロールしてあげれば……なんであんた死にそうになってんのよ…… ?


 寿命はまだあるのに……言い付けを守らずに集落の外に出た部族の子どもを獣から守って大怪我を負うなんて、なに考えてんのよ。


 みんな泣いてるじゃない……。


 ……………。


 ……ここは神域よ。


 今までの神への功績によってあなたを「英霊」として迎えるわ。


 え ? 姿が違いすぎるけど、本当に自分達の神かって ?


 仕方がないでしょ。


 惑星の神は母なる創造神様の似姿(にすがた)と決まってるんだから。


 何 ? 自分の愛した女の方が美人ですって ?


 ……やっぱり「気象操作」を選べば良かったかしら。



 ──────



 あれから数千年が経って、人口は惑星を(あふ)れるほどに増えたけど……信仰心はどんどん減っていく。


 これは仕方のないこと。


 彼らは自分達の力だけで生きていけるようになったのだ。


 もはや神の恩寵など必要としていない。


 一時は数百人もいた「英霊」もまた一人となっていた。


 信仰の力が足りなくなったり、魂に損傷を受けて維持できなくなった「英霊」は魂を任意の惑星の生物へと生まれ変わらせることができる。


 大抵の「英霊」は自ら生まれ育った私の惑星へ戻ることを望んだ。


 で ? あんたはなんで、ここから遠く離れた惑星を希望してんの ?


 そんなに私の惑星が嫌なわけ ?


 あんたは最初に「英霊」になってずっとこの惑星を護ってきたのに……。


 え ? その星の知的生命体は私の姿に似てるし……ここよりも安全だから私も神をやめてその星に生まれ変わって……もう一度会おうって……何バカなこと言ってんのよ……この非常時に…… !


 ……もう時間がないみたいね。


 とりあえずあんたはそこに転生させてあげる。


 どうせだから笑顔の素敵なモテまくりの人間になるように設定しといてあげるわ。


 あんた全然、笑わないんだもの。


 なに ? ずっと笑ってたって ?


 あんたの顔の表情なんて全然わかんないのよ。


 ……設定完了、いえ、やっぱりあんたが女にモテるのはなんかイヤだから「女難」の呪いも付加して……これでよし。


 生まれ変わってきなさい。


 泣くんじゃないわよ。男でしょ。……私も……最後まで戦って……この惑星の神としての義務を果たして……気が向いたらそこに行くかもしれないから……。


 ……行っちゃったか。


 泣いてるの見られなかったでしょうね……。


 さて、戦わないと……


 すでに信仰心を失ったこの惑星の生き物のために……



 ────────



 ……意外に持ちこたえるものね。


 災厄が起こると信仰心が増えることは今までにもあったけど、苦しい時の神頼みって本当だわ。


 でも……もうダメ。


 ……あいつはもう生まれてるかしら ?


 あいつには色々教えてやったから……今度は先に生まれたあいつに色々教わるのも面白いかもしれないわね。


 まあ……出会えれば…………だけ…………ど……


 私も……生まれ変わって……みようかな……地球とかいう惑星に……







閲覧、ありがとうございました !


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