高校入学式という運命の出会い
今年の桜は遅咲きで、入学式だというのに未だ八分咲きだ。
今日は翔海高等学校の入学式。
せっかくの晴れ舞台が満開でないのが大変悔やまれる…とまでは思わないが、それにしても寒い。
ほんとに四月なのだろうか?
などとぼんやり考えているうちに入学式会場である文化会館の最寄り駅に着く。
入学式といえば高校の体育館で行われるものだと思い込んでいたが、わざわざ文化会館のホールを貸し切って行うらしい。
なんでも、卒業生の親がこの地方のお偉いさんらしく、毎年文化会館を入学式の会場として高校に貸すよう手配しているらしい。
さすがは私立といったところか。
「ってやば、あと十分か」
まだ余裕はあるが、入学式の日に遅れて悪く目立つような真似はしたくない。
そうして駅の東出口を出ると、多くの人が待ち合わせをしている。
午前中は中学の入学式が行われていたので、今から昼ご飯でも食べに行くのだろう。
その中を一人で歩いていると、ふと目が合った女の子がいた。
同じ制服でリボンの色は赤だから同じ新入生なわけだが、どうやらこの子も誰かと待ち合わせをしているようで、相手と電話をしていた。
普通に美人だし、可愛い。
「えぇ初日から遅刻するの!?…あぁ駅間違えちゃったのか。まあでも式が始まるまではまだ時間あるし間に合うんじゃない?…うん、わかった、先に行ってるね。じゃね」
と言うと彼女は西出口へと向かい出した。
式の会場は東口なのに気づいていないのだろうか。
「あの、君!会場反対側だよ!!」
すると彼女は振り返り
「えっ…?」
と言ったまま漫画のように口を開けてポカンとしている。
「翔海の入学式だよね?会場は東口だよ?」
「あっそっか、わ、私方向音痴だからさぁ、ははは…」
彼女の頬がみるみる赤くなっていく。
「そ、そうだよね、このあたりややこしいよね。えっと…一緒に会場まで行く?」
「い、いやっ、大丈夫!そこで友達と待ち合わせてるからっ!!じゃ、じゃあね!!ありがとう!!!ほんっとにありがとうううう!!!」
と言って彼女は走り去ってしまった。
…せっかく可愛い子と一緒に入学式に向かって華やかな高校デビューができると思ったが、どうやら神様はそこまで優しくないらしい。
だが、この時の俺はまだ、これからの高校生活にあの子が深く関わってくることなど知るわけがなかった。
この度は作品を読んでいただきありがとうございます。
少ない語彙力と発想力で書きました。
できれば続きも書いていきたいなと思うので、良ければ読んでみてください。