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晴れた日の彼女を思い出すということ

作者: 野花 朝
掲載日:2019/02/27


「飛んでいる鳥ってなんだか悪い十字架みたいだね」

そう言ったのは誰だったっけ。

学生生活も終わろうとしている3月の、晴れた日。

お城の公園のベンチに座って、僕は一人で空を見上げていた。

僕はこう答えたはずだ。渡り鳥はどうやって目的地までの正しい道がわかるんだろう――。

ふふっと笑って彼女が答える。悪戯っぽく、邪気がない笑顔がフラッシュバックする。


「正しい道なんてないよ。一本道じゃないんだよ、きっと」


そうだ、あれはまだ大学に入学したての頃だった。


「私たちの目の前にあるのはいつも十字路だから」


講義で隣に座った女の子と連絡先を交換して、デートをしたんだ。


「間違えると地獄が待ってる、悪い十字架みたいな十字路?」


4月の晴れて気持ちのいい日曜日だった。

僕らは親元を離れ、はじめての一人暮らしに浮かれていた。

彼女はまた、ふふっと笑ってこう言った。

「そうだよ、どっちに進んでも間違えてるかもしれない、悪い十字路」

「どっちに進んでももの凄い幸福が待ってるかもしれない」

楽観的な方が気が楽だ。

「――くんは、天の邪鬼だねえ」と彼女が真顔で言う。

どっちが、と僕は思ったけど、口にしない。

彼女と大学の外で会ったのは、その時きりだった。


「社会」は彼女が言うように、どちらに進んでも間違えている迷い道なんだろうか。

右に進んでも左に進んでも変わらない景色。元の木阿弥。

そんなルーチンワークの毎日を想像すると気が滅入る。

「だけどさ、どっちに進んでも間違ってるなら、いっそ来た道を戻ればいい」

と僕は彼女に言う。

「戻れば少なくとも、幸福な日があったことを思い出せる。君とお城の公園で話した、晴れた日みたいな」


天の邪鬼だねえ、と彼女が笑う。


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