プロローグ
「あれの狙いは俺だ。危ないから皆は逃げてくれ!」
ある日の夕刻。いかにも騎士らしい甲冑を着込んだ少年ーーーヤマトは興味本位で集まってきている群衆に対して声を張り上げていた。
群衆の視線はある1点に集約されている。そこにあるのは昔ながらの街の雰囲気をぶち壊しながら走ってくる鉄の塊ーーーこの世界には存在しないはずのトラックだ。
「あれが転生トラック....」
そうこぼすのは、頭には2本の白い犬耳が生え、首には奴隷を意味する首輪をつけた少女リア。
ヤマトから事前に転生トラックについて説明を受けていたリアであるが、土埃を巻き上げながら迫ってくる未知の恐怖に体の震えは止まることを知らない。
「大丈夫。リアは後ろであたし達に指示を出してくれればそれでいいからさ。」
震えるリアの小さな体を後ろからルナが優しく包み込む。やがて、震えが収まったのを確認すると黒猫の耳を生やした少女ルナは鋭い目つきでトラックを見据えた。
「群衆は全く減らないばかりか、増えてきているがどうする。ここでやるか?」
「下手に動き回ったほうが被害が増えそうだからな。ここで迎え撃つ。」
大きく深呼吸をしてから、ヤマトはこの世界に来てからの愛用武器である一本の両手剣を鞘から引き抜く。
それに続いてルナは動きやすいように破かれた黒いドレスの中から二本の短刀を取り出す。戦闘に参加しないリアは一歩離れた場所へと下がった。
「いくぞ!」
「おう!」 「はいっ!」
二人の元気の良い返事を皮切りに、転生トラックとの二度目の戦闘が始まった。