表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あたい賢者になるっ!  作者: 今野 春
一章 あたいひよっこ賢者!
9/22

八話 レーザお師匠様

ここで一章が区切りとなります。

「・・・・・・いい人達だったな」


 お師匠様が、家への帰路の途中でそう呟く。


「そうですね! あたい、ジャンとお友達になりたいです!」

「そうか・・・・・・」


 お師匠様が立ち止まってあたいの目を見て言った。


「いいかい、あの人たちはいい人だったけど、あまり人間と関わるんじゃないぞ」


 人間と・・・・・・関わっちゃだめ?


「どういうこと?」

「人間というものは、未知のものに敏感なんだ。だから、畏怖して、私たちが標的にされることだってある」


 ・・・・・・怖がられる? 標的? 狙われるってこと?


「なんで? あたいたち、何もしてないじゃん」

「何もしてないように見えるのが一番怖いんだよ」


 それだけ言って、お師匠様がスタスタと歩き始める。でも、あたいの頭の中は疑問でいっぱい。


「お師匠様、それは、人間に薬をあげるとかも?」


 お師匠様は、疫病や厄災、作物の病気の話を聞くと、薬を作ってたのを覚えてる。

 お師匠様はその足を止めずに答えた。


「・・・・・・私たちが生きていくのに、人間の力は必要だ。いくら賢者でも、野菜の栽培は苦手だからな」


 そういえば、この前お師匠様の畑が全滅してた・・・・・・。お師匠様も完璧じゃないのね。

 と、あたいの頭の中でまた疑問が。


「それは、“魔法使い”とも関係があるの?」


 その一言に、お師匠様が若干足の速度を緩める。が、それもつかの間、また早足になる。


「・・・・・・その話は、あまりしたくないな」

「・・・・・・ごめんなさい」


 やっぱり、魔法使いの話は嫌なんだ。

「じゃあ」とあたいはまた口を開く。

 どうしても、聞きたかったから。


「じゃあ、なんで今日はジャンの家に行ったの?」


 ピタリ、とお師匠様の歩みが止まり、あたいは思いっきりお師匠様にぶつかる。

 そして、またいらないことを言ったかとお師匠様の顔を見るとーー


「・・・・・・なんでだろうな」


 少し、微笑んでいた。


「ーーそういえば、ヒヨ。ちゃんとビッグモスキートの針、持ってきたか?」


 そう話題を逸らすお師匠様の思惑に気づかないまま、あたいは「はい!」と返事をして、鞄の中からその針を取り出す。


「どうですか! ちゃんと持ってきてます! あたいはスキルに勝った!」


 そうドヤ顔で宣言し、お師匠様に針を見せつけると・・・・・・。


「残念だったな。それは巨大蜂の針だ。一体どこで入れ違えたんだ?」

「え? ええ〜?!」


 嘘・・・・・・。今回はちゃんと言われた通りにできたと思ったのに・・・・・・。

 そうしょんぼりするあたいのどこが面白かったのか、お師匠様が笑う。


「はっはっは! 全く! また明日も森に入らなければな!」


 お師匠様のゴツゴツとした指が、あたいの髪をくしゃくしゃと撫でる。

 何か言ってやろうかとあたいはお師匠様の顔を見てーー


「お前を弟子にとってよかった」


 その表情に、そんな考えは吹き飛んでしまった。


「ーーヒヨ」

「はい!」

「賢者になりたいか?」

「なりたいです!」

「なぜだ?」


 ・・・・・・なぜ?

 あたいは、初めての質問に首をおおいに傾げて考える。


「・・・・・・お師匠様みたいに」

「ん?」

「お師匠様みたいに、かっこよくなりたいから!」


 そのあたいの答えに、お師匠様が驚いた顔をする。

 そして、あたいは真っ赤な夕暮れの空に向けて叫ぶ。


「あたい・・・・・・賢者になるっ!」

最後までお読みいただきありがとうございました。次回からの二章もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ