七話 あたい、感謝する!
「ほー! すごいのお! それ、どうやっとるんじゃい」
「私たちには、精霊の力の流れを感じれまして、それに干渉して発動しているのです」
「なるほどのう! わしも賢者になりたかったの!」
「じっちゃんはもう十分強いからいいよ」
半ば呆れ顔のジャンがルトンさんにそう言った。すると、ルトンさんが少年のような眼差しでジャンに言った。
「何言っとるんじゃ! お主にはわからんのか! ロマンというものが!」
「いや! わかるよ! わかるけど・・・・・・そ、そんな熱い目線しないでよ!」
なんだかほのぼのとした雰囲気に、あたいは口元が緩んでしまう。ちらりと隣のお師匠様を見ても、どこか楽しそうだった。
そして、お師匠様がルトンさんにいろんな話をして、あたいとジャンも一緒に隣でその話をしばらく聞いていた。
そして、いつの間にか夕方に。
「ーー長く喋りましたね。そろそろ私たちはこの辺で帰らせていただきます」
そうお師匠様が立ち上がるので、あたいも続いて立ち上がった。
「そうですかい。老獪に楽しい小話をどうも。ほら! ジャンよ! 立て!」
「はい!」
そして、ジャンとルトンさんがびしっと背筋をただし、手を体の横につけてーー
「本日は! 我が孫ジャンを助け、楽しい話をしていただき!」
二人は大きく息を吸う。
「「ありがとうございました!」」
今日一番の声量で、感謝を述べた。
最初から最後まで元気で楽しい人達だな。と、あたいは思う。思えば、人間と関わるのも、これで七回目ぐらいだ。
「私たちの方こそ、楽しいひと時をありがとうございました」
「お師匠様、そうじゃないでしょ!」
あたいは、お師匠様を肘で突いて笑う。そして、お師匠様にもわかるように大きく息を吸うと、少し微笑んで、お師匠様も息を吸った。
「本日は! 私たちを家に招いていただき」
「「ありがとうございました!」」
ジャンたちにも負けない声量で、頭を下げて、誠心誠意感謝を述べる。
そして顔を上げると、満面の笑みのルトンさんと目が合った。
「元気でええのお。修行、頑張りなさい」
「ーーっ!」
その言葉に、あたいは今まで感じたことの無いものを感じた。それはーー
「はい!」
応援なんて、初めてされたから。
それを見て、お師匠様がどこか嬉しそうだった。お師匠様、今日は一段と明るい。
今日は、いろんな意味で忘れられない日だ。




