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あたい賢者になるっ!  作者: 今野 春
一章 あたいひよっこ賢者!
8/22

七話 あたい、感謝する!

「ほー! すごいのお! それ、どうやっとるんじゃい」

「私たちには、精霊の力の流れを感じれまして、それに干渉して発動しているのです」

「なるほどのう! わしも賢者になりたかったの!」

「じっちゃんはもう十分強いからいいよ」


 半ば呆れ顔のジャンがルトンさんにそう言った。すると、ルトンさんが少年のような眼差しでジャンに言った。


「何言っとるんじゃ! お主にはわからんのか! ロマンというものが!」

「いや! わかるよ! わかるけど・・・・・・そ、そんな熱い目線しないでよ!」


 なんだかほのぼのとした雰囲気に、あたいは口元が緩んでしまう。ちらりと隣のお師匠様を見ても、どこか楽しそうだった。


 そして、お師匠様がルトンさんにいろんな話をして、あたいとジャンも一緒に隣でその話をしばらく聞いていた。

 そして、いつの間にか夕方に。


「ーー長く喋りましたね。そろそろ私たちはこの辺で帰らせていただきます」


 そうお師匠様が立ち上がるので、あたいも続いて立ち上がった。


「そうですかい。老獪に楽しい小話をどうも。ほら! ジャンよ! 立て!」

「はい!」


 そして、ジャンとルトンさんがびしっと背筋をただし、手を体の横につけてーー


「本日は! 我が孫ジャンを助け、楽しい話をしていただき!」


 二人は大きく息を吸う。


「「ありがとうございました!」」


 今日一番の声量で、感謝を述べた。

 最初から最後まで元気で楽しい人達だな。と、あたいは思う。思えば、人間と関わるのも、これで七回目ぐらいだ。


「私たちの方こそ、楽しいひと時をありがとうございました」

「お師匠様、そうじゃないでしょ!」


 あたいは、お師匠様を肘で突いて笑う。そして、お師匠様にもわかるように大きく息を吸うと、少し微笑んで、お師匠様も息を吸った。


「本日は! 私たちを家に招いていただき」


「「ありがとうございました!」」


 ジャンたちにも負けない声量で、頭を下げて、誠心誠意感謝を述べる。

 そして顔を上げると、満面の笑みのルトンさんと目が合った。


「元気でええのお。修行、頑張りなさい」

「ーーっ!」


 その言葉に、あたいは今まで感じたことの無いものを感じた。それはーー


「はい!」


 応援なんて、初めてされたから。

 それを見て、お師匠様がどこか嬉しそうだった。お師匠様、今日は一段と明るい。

 今日は、いろんな意味で忘れられない日だ。

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