五話 少年 ジャン
「・・・・・・助けてくれて、ありがとう」
ふてくされながら少年が感謝を述べる。
少年は、綺麗な深紅の髪の少年だった。あたいよりもちょっとだけ高い身長に、整っているけどどこか攻撃的な顔。
そんな少年に、あたいは声をかける。
「あたいヒヨ! で、こっちはレーザお師匠様! あんたの名前は?」
「俺はジャンだ。・・・・・・確認するけど、あんたら良い魔法使いなのか?」
良い魔法使いと聞いて、やはりお師匠様が嫌そうな顔をする。
「その良い魔法使いとやらは、賢者と言うのだがな」
「へー。賢者って言うのか・・・・・・」
魔法使い・・・・・・?
「ねえねえ、お師匠様。賢者と魔法使いって何が違」
「ヒヨ」
冷酷な声音で名前を呼ばれ、あたいはそれが聞いちゃいけないことだってわかった。
「・・・・・・なんでもないです」
「すまない」
なんでお師匠様が謝ったのかはわからなかったけど、魔法使いってなんだろう・・・・・・。今度調べてみよう。
「なあなあ、賢者様」
と、突然ジャンが、明るい顔で思い出したようにお師匠様のことを呼んだ。
「よかったら、俺のじいちゃんの家に来ないか?」
「・・・・・・君は魔法使いが嫌いなのではなかったか?」
お師匠様の言葉に、ジャンが苦い顔をして説明する。
「魔法使いが嫌いって言ってたのはとっちゃんさ。じいちゃんからは賢者様のお話を聞いたことがあってさ、きっと喜ぶよ」
へえ、賢者のことを知ってる人もいるんだ。
「というか、なんで魔法使いは嫌われてるの?」
あたいは気になってお師匠様に尋ねた。でも、“魔法使い”っていうワードがいけないことに気づいて口を塞いだけど、その問にお師匠様は優しく答えてくれた。
「魔法使いはな。人間を傷つける魔法を使うから嫌われてるんだ。賢者は、人を助けることが生業だからな」
「へー。そういうことね! ありがとう!」
また一つ賢くなったわ!
それで、あたいの質問に答えたお師匠様がジャンの方を向いた。
「そうだな。じゃあお邪魔してもいいか?」
「ああ! 助けて貰ったのにお茶の一つも出せないのは恩知らずだからな! ついてきてくれ!」
そう笑うジャンの後ろを、ゆったりとあたいたちは歩き出した。




