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あたい賢者になるっ!  作者: 今野 春
一章 あたいひよっこ賢者!
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五話 少年 ジャン

「・・・・・・助けてくれて、ありがとう」


 ふてくされながら少年が感謝を述べる。

 少年は、綺麗な深紅の髪の少年だった。あたいよりもちょっとだけ高い身長に、整っているけどどこか攻撃的な顔。

 そんな少年に、あたいは声をかける。


「あたいヒヨ! で、こっちはレーザお師匠様! あんたの名前は?」

「俺はジャンだ。・・・・・・確認するけど、あんたら良い魔法使いなのか?」


 良い魔法使いと聞いて、やはりお師匠様が嫌そうな顔をする。


「その良い魔法使いとやらは、賢者と言うのだがな」

「へー。賢者って言うのか・・・・・・」


 魔法使い・・・・・・?


「ねえねえ、お師匠様。賢者と魔法使いって何が違」

「ヒヨ」


 冷酷な声音で名前を呼ばれ、あたいはそれが聞いちゃいけないことだってわかった。


「・・・・・・なんでもないです」

「すまない」


 なんでお師匠様が謝ったのかはわからなかったけど、魔法使いってなんだろう・・・・・・。今度調べてみよう。


「なあなあ、賢者様」


 と、突然ジャンが、明るい顔で思い出したようにお師匠様のことを呼んだ。


「よかったら、俺のじいちゃんの家に来ないか?」

「・・・・・・君は魔法使いが嫌いなのではなかったか?」


 お師匠様の言葉に、ジャンが苦い顔をして説明する。


「魔法使いが嫌いって言ってたのはとっちゃんさ。じいちゃんからは賢者様のお話を聞いたことがあってさ、きっと喜ぶよ」


 へえ、賢者のことを知ってる人もいるんだ。


「というか、なんで魔法使いは嫌われてるの?」


 あたいは気になってお師匠様に尋ねた。でも、“魔法使い”っていうワードがいけないことに気づいて口を塞いだけど、その問にお師匠様は優しく答えてくれた。


「魔法使いはな。人間を傷つける魔法を使うから嫌われてるんだ。賢者は、人を助けることが生業だからな」

「へー。そういうことね! ありがとう!」


 また一つ賢くなったわ!

 それで、あたいの質問に答えたお師匠様がジャンの方を向いた。


「そうだな。じゃあお邪魔してもいいか?」

「ああ! 助けて貰ったのにお茶の一つも出せないのは恩知らずだからな! ついてきてくれ!」


 そう笑うジャンの後ろを、ゆったりとあたいたちは歩き出した。

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