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あたい賢者になるっ!  作者: 今野 春
一章 あたいひよっこ賢者!
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四話 あたい、引いたわ!

「君、大丈夫かい?」

「あ、うん」


 お師匠様が、倒れていた少年に駆け寄って傷がないか調べる。すると・・・・・・。


「ーーいっ!」

「これは・・・・・・」


 そこには、必死に隠していたらしいが、少年の右腕が紫色に変色しているのが見えた。


「ヒヨ。私の鞄から注射針と青緑色の薬。それと手袋を出してくれ」

「はい!」

「《ドジっ娘属性》は発動しなくていいぞ」

「・・・・・・はい」


 なんか、あたい信頼されてない感が否めないわ。でも、否定はできないし・・・・・・。

 なんてことを考えながら、あたいは言われた通りの物を出す。


「お師匠様!」

「ああ、ありがとう。じゃあーー」


 お師匠様が注射針を手に取って、少年に告げる。


「少し痛いがーー」

「やめろ!」


 少年が、治療しようとしたお師匠様を突き飛ばした。


「なっ、あんた」

「とっちゃんが言ってた! ()()使()()は邪悪だって!」


 その言葉に、お師匠様がピクリと眉を動かした。


「・・・・・・なんでかな?」

「だって! なんか、なんか・・・・・・昔、悪いことをしたって」

「ああ、あれか。・・・・・・私には関係が無いな」

「うわっ!?」


 少年が、見えない力で押さえつけられて、地面に大の字で寝転ぶ。


「少年。そのまま毒で死ぬか、右腕を切り落とすか、治療して右腕を治すか、どれがいい?」

「ひっーー」

「三秒だ」

「な、なおし、治してください!」

「ほぅ・・・・・・」


 そして、お師匠様が今までに見たことの無い表情で言った。


「言葉が足りないなぁ。私の良心を傷つけておいて」

「わあぁ! ごめんなさい! すいませんでした! 謝るので助けてください」


 先程までの態度が一変。少年が涙目で喚き出す。


「お、お師匠様・・・・・・」

「冗談だ。ほら、大人しくしておけ」


 そして、治療が何事もなかったかのように始まった。少年に痛覚遮断の魔法をかけて、毒を抜いて、解毒の魔法をかけて、傷を癒して終わり。

 でも、何事もなかったかのように淡々とやってたけど・・・・・・。


「お、お師匠様」


 治療の終わって、安堵のためか眠ってしまった少年に羽織をかけて、どこか満足気なお師匠様に言うわ。


「流石にあれはあたい引いたわ・・・・・・」

「そ、そうか・・・・・・」


 これだけは言わなきゃって思ったの。

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