四話 あたい、引いたわ!
「君、大丈夫かい?」
「あ、うん」
お師匠様が、倒れていた少年に駆け寄って傷がないか調べる。すると・・・・・・。
「ーーいっ!」
「これは・・・・・・」
そこには、必死に隠していたらしいが、少年の右腕が紫色に変色しているのが見えた。
「ヒヨ。私の鞄から注射針と青緑色の薬。それと手袋を出してくれ」
「はい!」
「《ドジっ娘属性》は発動しなくていいぞ」
「・・・・・・はい」
なんか、あたい信頼されてない感が否めないわ。でも、否定はできないし・・・・・・。
なんてことを考えながら、あたいは言われた通りの物を出す。
「お師匠様!」
「ああ、ありがとう。じゃあーー」
お師匠様が注射針を手に取って、少年に告げる。
「少し痛いがーー」
「やめろ!」
少年が、治療しようとしたお師匠様を突き飛ばした。
「なっ、あんた」
「とっちゃんが言ってた! 魔法使いは邪悪だって!」
その言葉に、お師匠様がピクリと眉を動かした。
「・・・・・・なんでかな?」
「だって! なんか、なんか・・・・・・昔、悪いことをしたって」
「ああ、あれか。・・・・・・私には関係が無いな」
「うわっ!?」
少年が、見えない力で押さえつけられて、地面に大の字で寝転ぶ。
「少年。そのまま毒で死ぬか、右腕を切り落とすか、治療して右腕を治すか、どれがいい?」
「ひっーー」
「三秒だ」
「な、なおし、治してください!」
「ほぅ・・・・・・」
そして、お師匠様が今までに見たことの無い表情で言った。
「言葉が足りないなぁ。私の良心を傷つけておいて」
「わあぁ! ごめんなさい! すいませんでした! 謝るので助けてください」
先程までの態度が一変。少年が涙目で喚き出す。
「お、お師匠様・・・・・・」
「冗談だ。ほら、大人しくしておけ」
そして、治療が何事もなかったかのように始まった。少年に痛覚遮断の魔法をかけて、毒を抜いて、解毒の魔法をかけて、傷を癒して終わり。
でも、何事もなかったかのように淡々とやってたけど・・・・・・。
「お、お師匠様」
治療の終わって、安堵のためか眠ってしまった少年に羽織をかけて、どこか満足気なお師匠様に言うわ。
「流石にあれはあたい引いたわ・・・・・・」
「そ、そうか・・・・・・」
これだけは言わなきゃって思ったの。




