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元ヒロイン?だった現モブ男です!  作者: 狗神狼
第1章 出会いと準備
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昼食

ファンタジーを書くのって難しい! でも頑張ります!


それではどうぞ!

 教えてもらっている側として、師匠の食事を用意するのは弟子である自分の役割だろうという思いから、「早く支度をせねば」と視線をアマーレンに戻す。


「それじゃあ、昼食の準備をしに行ってくる。アレン、魚は食べれる?」

「ああ、大丈夫だ」


 確認がとれたところで森へ入ろうと背を向けると、後ろから「ちょっと待て、どこへ行くんだ?」という困惑した声がかけられた。


「え? どこへって、川」

「なんで川?」

「なんでって、川へ行かないと魚が獲れないじゃないか」

「……今から獲るのか?」

「そうだよ」


 何か問題があっただろうかと首を傾げると、アマーレンは顔に手を当てて小さく溜息をついた。


「釣りに何時間もかけていたら、魔法を練習する時間がなくなるぞ……」


 その言葉で彼が何をそんなに心配しているのかが漸くわかった。


(確かに、魔法を使えない人間が魚を獲ろうと思うと、方法は限られてくるもんなぁ)


 しかし、そんなこと僕には関係ない。


「大丈夫。釣るわけじゃないから」

「は?」


 いたって真面目に答える僕に対して、アマーレンが怪訝そうな顔を向けてくる。


「僕が使うのはコレ」


 そう言って、僕はこの世界に来て最初に作った銛を彼に見せた。


「それで、何をするんだ?」

「魚を刺して捕まえるんだよ」


 それ以外の何に使うんだとアマーレンの顔を見れば、彼は驚いた様子で銛に目を向けていた。


(そういえば、この世界での漁といえば釣りか網で使える人間ならば魔法と、銛を使った漁はなかったんだったか……)


 銛の使い方は日本で父の知り合いとサバイバルキャンプへ行った時に教えてもらったモノだった気がする。

 「やっちゃったかな~」なんて思いつつも、言ってしまったモノは仕方がない。

 口で説明するよりも見せた方が早いだろうと、アマーレンを連れて川へ向かった。

 この森に流れる川はそれなり広く、また中心辺りは僕の身長(165センチ)を少し超える程の深さがある。流れも穏やかで潜るには申し分ない川なのだ。

 アマーレンを岸部の大きめの石に座らせ、その横で上の服を脱ぐ。軽く準備運動を済ませてから得物を片手に川へ入った。

 中ではかなりの数の魚が泳いでいる。普通に泳ぎ回っているのもいが、近づけばすぐに逃げられてしまい捕まえるのが難しい。岩陰などを覗き込み獲物を吟味する。狙いを定め、一気に銛を打ち込めば1匹の魚が鱗を突き抜けて刺さった。


(よしッ)


 捕まえた魚は岸部へ投げて、また潜ること数回。8匹程獲ったところでアマーレンのもとへ戻った。


「魚とは、魔法を使わずともこんな簡単に捕まえられる生き物だっただろうか?」


 そんなことを呟きつつ、僕の獲った魚を見下ろしているアマーレン。確かに、川に入ってからここまでの所要時間は約40分。しかし、これは僕が銛漁にある程度慣れていたかれであって、初めての人ならばまずは水中の底まで潜ることや息を長くもたせることだけで手一杯だろう。

 そんなことを心の中で思いつつも、いちいち説明するのが面倒くさいという気持ちから「焼くから、アレンは火をお願い」とだけ伝えて調理に取り掛かった。

 森の中から薪用と調理用の枝を拾い、アマーレンが魔法で火を熾している間に魚の下処理を済ませ、枝に刺して火に焼べる。


「さっき、魚に枝を刺して回していたが、アレは何をやっていたんだ?」

「ああ、アレ? アレは魚の内蔵を取ってたんだよ」


 アマーレンが聞いてきたのは枝を2本使った内蔵取りのことだろう。日本に居た頃は割り箸を使ってやっていたのだが、ここではそんな物があるわけもなく、手頃な枝を見つけて代用したのだ。

 方法は簡単。まずは1本の枝を口からエラの上へ差し込み、そこから外へは出さずエラを抑える様にして尻尾の方へ向かって抵抗を感じるところまで刺していく。もう1本の枝で反対側も同様に刺し、最後に2本まとめて持ち捻りながらゆっくりと抜いていけば終了だ。

 食べている最中に内蔵をいちいち避けるのが面倒くさく、いつもこの方法を取っていたので、今回もそうしたのだが、この世界では一般的な方法ではなかったようだ。


(あ~、またやらかした)


 「さて、どうやって誤魔化そうか」と思考を巡らせつつチラリと彼の反応を伺う。

 アマーレンはお決まりのポーズをとって考え込んでおり、こちらを向く様子は今のところない。

 お互いに無言の状況が少しの間続く。アマーレンが思考の波から浮き上がってきた頃、彼が考え込んでいる間にこちらの考えもある程度まとまり「いつでも来い」と内心で臨戦態勢をとる。

 しかし、彼は僕をチラッと見ただけで何かを聞いてくることはなく、無言で焼けた魚へ手を伸ばした。

 食事中もアマーレンの様子を見るが、彼は黙々と魚を頬張るだけでその表情から内心を読み取ることができない。

 では、食事後だろうかと気を張っていたが、そんなこともなく午前中にした練習を20回程繰り返し、僕の魔力が切れたところで今日の修行を終えた。


お読みいただきありがとうございました。

よろしければ感想、指摘等をくださると幸いです。

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