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元ヒロイン?だった現モブ男です!  作者: 狗神狼
序章 終わりと始まり
3/15

『私』と僕

この世界についての簡単な紹介のようなものです。細かいところは追々追加していくので今回は大雑把にですが「こんな感じかな~」と思いつつ書きました。

また、後程変更する可能性がありますので、その時はご連絡させていただきます。

 さて、このままシリアスな雰囲気が続くと思ったら大間違い! そんな重苦しい空気は、僕がここで粉砕するとしよう。

 僕は回道輝(かいどうてる)という名前の、ちょっとサバイバルが得意な何処にでもいる普通の男子高校生だったんだが、ひょんなことからうっかり死んでしまい、何をどうしてそうなったのかサッパリわからないが、前世の自分と御対面を果たしてしまったのである。

 てか、死んだ理由が仲の良かったクラスメイトの彼女が僕とクラスメイトの仲にあらぬ疑惑を持った末、勝手に嫉妬して恋敵認定した相手を学校の階段から突き落とすという、何ともトチ狂ったことをしてくれやがったためって……。理由が、僕に対してあまりにも失礼じゃないか? 僕はゲイじゃないし、クラスメイトもゲイじゃなかったはずだ……、たぶん。彼女がいる時点でゲイではないだろう! ……バイの可能性はあるけど。しかし、これだけは断言できる。僕はゲイじゃないし、むろんバイでもない。ストレートだ。俗に言うノンケだ。そこのところを間違わないでほしい、……もう遅いけどね。

 失礼、話がそれた。

 まあ、どうして相手が自分の前世だとわかったのかというと、机に置かれていた絵本、アレを見たからである。中には彼女が覚えている人生の最初の記憶(始まり)から死ぬ(終わり)までが大変わかりやすく描かれていた。それと、今でも「それでいいのか」と言いたくはなるが、確信した最大の理由は直感だ。目があった瞬間「あ、この人僕だ」って思ったんだよ。顔は確かに似ているけど、向こうは女だし髪とか目の色彩が僕よりも薄かったから、その後すぐ自分の直感に対して内心盛大にツッコんだんだけどね。でも、絵本を読み、更にソレが強まったことで否定するのを諦めたんだ……。

 内容としては、前世の名前がイルミーナ・モンドだったこと、平凡を絵に描いた様な何処にでもいる普通の少女のはずが周りの人からは『特別』だと言われていた(その理由はサッパリだったが)こと、ドラクーラルという国の王都から少々離れたところにある名前は無いが、近所の集落民からは「古き神の知識が眠る森」と呼ばれている大きな森の奥で小さい頃から一人暮らしをしていたこと、ド偉い身分の男子(双子)と友達になったことなどだった。

 むろん、人生の最期まで描かれていたのだから、『私』がどうして死んだのかも知っている。いや、この場合は思い出したと言った方がいいのか。で、その後はなんやかんや(説明が面倒くさい)の末、生前に未練タラタラな『私』のお願いで、『私』の死後二人が幸せになったのを見届ける(状況によっては幸せになるお手伝いをする)ことになり、前世で生きていた世界へカムバック! を果たしたのは良いんだけどさ……。


「うわぁ……」


 今現在、僕は始まりの場所ともいえる前世で子どもの頃に住んでいた森家を前に、呆然としているしだいである。


「いや、実際には死んだのは二回目だから、ここは前前世の家といった方がいいのか?」


 まあ、そんなことはどうでもいいかと、逃避を図ろうとする頭へ現状を受け入れさせるために、僕は目の前の家へと意識を向けた。


「これ……、人住めるの?」


 庭を背の高い雑草がところ狭しと生い茂り、家の壁部分を蔦が這い回っている。それだけでも一種のホラーハウスが出来上がっていて入るのを戸惑わせるのに、終いには床か窓をぶち抜いてしまっているのかこれでもかと大きな巨木の一部が屋根を突き破り、青く瑞々しい笠が家を覆う様に広がっているではないか。

 多少はボロくなっているだろうと思っていたが、これは酷い。


「雨漏りの修理、大変そうだなぁ」


 再度逃げ出そうとする思考を、頭をフルことで引き戻す。行きたくはないが、そうもいかないと、恐る恐るドアノブへ手を伸ばす。

 ギギィと嫌な音をたてて扉が開いた。中は、外面から予想する程は汚れていなかったが、埃と枯れ葉が大量にあるのでやっぱり荒れているといえるだろう。あの巨木は、家の壁から屋根にかけて通っており、その太い幹で大きめのリビングだった場所が部屋の丁度真ん中で二つに分けられてしまっていた。幸い、木は部屋の左斜め上半分を遮っている程度なので、そこまで問題にする程ではない。


「まあ、長いこと放置していたわけだしな、うん。仕方ない、仕方ない」


 最悪、寝る所さえ確保できればいいんだ。僕は安息の地を手に入れるためと、疲れた体に鞭打って掃除へと取り掛かった。

 記憶を頼りに見つけた箒(ボロッちくはなっていたが、使えないこともなかった)を手に、積もりに積もった埃と木の葉を一箇所へ集める。寝室へ行くと、長い間使われていなかったベッドは小さなキノコがいくつも生え、シーツには虫の喰った痕があった。


「うへぇ、こりゃもう使えないな。こっちのタオルは……、使えないこともないか」


 時間もあまりかけていられないので、今晩の寝床にする場所だけ片付ける。


「こんなもんかな」


 できあがったのは、集めた木の葉に寝室で見つけたタオルを被せただけの簡易ベッド。

 キノコ畑と化したマットレスと虫喰いシーツは、暖をとる為の燃料となった。だって、それ以外の使い道が思い浮かばなかったのだ。仕方ないだろう。燃やしている物が大きいせいで、火もかなり大きくなってしまったが問題ない。

 取り敢えず、これで寝床と火は確保できた。ならば、次は食事だろう。

 幸い、この森は食べ物に欠かさない。肉が欲しければ狩りをすればいいし、それが無理なら木の実や山菜を摂ればいい。近くには川があるので水の心配もない。


「今考えたら、ここって生きていくのに最高の環境じゃん」


 自給自足は大変だが、全てにおいて無料なのだ。学生の頃は両親から与えられる月々のお小遣いを必死にやりくりして過ごしていたが、ここではそんな必要もない。

 誰かに教えてもらったわけでもないのに、何故か昔からサバイバルは得意だった。現代日本で、そんなモノ何処で役立てるんだってくらいにサバイバル能力が高かったのだ。

 しかし、長い間謎だったソレの答えがやっとわかった気がする。


「こんな森で、子どもの間だけだったとはいえ、生活してたら、そらぁ得意になっても仕方ないよなぁ」


 でも、それが魂に染み込む程の熟年具合だったとは……、これ如何に。『私』の転生後である僕にまで受け継がれているとは、正直ビックリだ。

 そんな、どうでもいいことをダラダラと考えつつも、手は着実に食料を確保していく。

 今日の晩御飯は焼き魚と木苺だ。魚は、手頃な棒に尖った石を紐で括りつけるだけの簡易な銛を作成して川で獲り、木苺は森の其処ら中でなっているのですぐに手に入った。

 魚を火で焼きながら、明日からのことを考える。

 まず、こちらの生活に馴れるため、ここで数日生活をするのは決定だろう。『私』の記憶があるから問題ないとは思うが、かといって油断は禁物だ。多少のことはド田舎から出てきた(嘘は言ってない。森から出たら田舎町だ)世間知らずである程度は通せなくもないだろうが、様子見は必要だろう。

 あと、この家の修理がしたい。僕ではないが、小さい頃の『私』がお世話になった家なのだ。それくらいはしてやりたいと思う。

 それが終わったら、町へ出て王都に向かおう。確か、数日に一度、王都行きの馬車が出ていたはずだ。今は金がないが、それはこれから森で獲った薬草や毛皮を売ることでつくれる。

 最初にいった通り、ここは自給自足が常識の地だ。金を使うなんて、自衛用のナイフと調理用の包丁を買う時くらいだろう。

 記憶の中から、この世界のお金についてと、王都まで行くのに必要な金額を掘り起こす。

 この世界のお金は、日本とは違い紙幣を使わない。全てが金、白金、銀、銅、青銅の5種類でやり取りされている。使い分け方は意外と簡単。

 青銅貨1枚で1円、銅貨1枚で10円、銀貨1枚で100円、白金貨1枚で千円、金貨1枚で1万円だ。

 なお、この知識は世間のことを全く知らなかった『私』に、一緒に暮らすなら必要なことだと男の子たちが教えてくれたモノである。

 物価は日本にいた頃とそう変わらなかったはずだが、今はどうだろう。多少は違っているかもしれない。

 交通費については、日本よりも高いのは確かだ。日本で新幹線を使った場合、博多から東京へ行くのに2万と少しかかるのに対して、この世界ではその3倍かかる。まあ、この世界で使われる、多くの交通手段は馬車だ。機械の新幹線とは違い、生き物である馬の体調維持費が含まれているのだろう。仕方がない。

 ここから王都までの正確な距離はわからないが、不眠不休で歩いて10日、馬車を使ったらその半分の6日程で着いたはずだ。その場合、かかる金額は金貨6枚。

 時間はかかるけれど、歩くことができないでもないという微妙な距離。しかし、ただでさえ家の修理とお金稼ぎに時間がかかるんだ。時間短縮のために、少しくらい贅沢をしてもいいだろう。

 今後の予定がだいたい決まったところで食事をすませ、今日はもう休むことにする。思考が落ちていく瞬間、この世界のある特徴が頭をよぎる。


「ああ、そういえば、この世界って魔法があったんだったなぁ」


 まあ、そのことについては明日考えよう。僕は、襲い来る睡魔に意識をゆだねた。



お読みいただきありがとうございました。

感想・指摘などいただけましたら幸いです。

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