昔々
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むか~し、むかし。
あるところに、1人の女の子がいました。
女の子は、特別美人ではなく、特別可愛くもなく、特別痩せているわけでもなく、特別純粋というわけではないが、かといって、特別醜いわけでもなく、特別太っているわけでもなく、特別凶悪でもなく、特別性悪でもない、何処にでもいるごく普通の子でしたが、村の大人たちは女の子を『特別な子』と言い、彼女が人目につかぬよう深い深い森の奥に閉じ込めてしまいました。
ある日、女の子は2人の子どもと出会いました。1人は白い男の子で、もう1人は黒い男の子です。
男の子たちは、見目の良い服を着ており、一目で何処かのお金持ちの子息であるとわかる格好をしていたのですが、森の奥深くで1人暮らしている女の子にそんなことを教えてくれる人がいるはずもなく、初めて自分以外の子どもを見た女の子は飛び上がって喜びました。
「ねえ、私とお友達になってくれない?」
出会い頭にそう言った女の子に、最初は警戒をしていた男の子たちでしたが、女の子と接していくうちに、女の子と一緒にいることが楽しくなり、3人はすぐに仲良くなりました。
それ以来、男の子たちは毎日のように女の子のもとへ会いに来るようになり、女の子にとっても2人と過ごす時間はかけがえのないモノとなりました。
しかし、そんな楽しい日々は長く続きませんでした。
男の子たちの家族だという者が男の子たちのことを迎えにきたからです。
女の子は、もう男の子たちとは会えないのだろうと悲しくなり泣き出してしました。
そんな女の子を見た男の子たちは言いました。
「僕たちと一緒に来てよ」
女の子は、男の子たちの言葉に心から喜びました。
しかし、男の子たちについていった先で女の子に待っていたのは、楽しいことばかりではありませんでした。
男の子たちと一緒にいる女の子の姿を見た者が言います。
「彼らとあなたでは釣り合わない」、「あなたの存在は、彼らの為にならない」と。
女の子はそう言われる度、とても悲しい気持ちになりましたが、そんな時はいつも男の子たちが「大丈夫」と、「僕たちには君が必要だよ」と慰め傍にいてくれたので、女の子は男の子たちと共にいるためだと周りの言葉は気にしないことにしました。
しかし、やはり幸せとは長続きしないもので、女の子にとって辛くも楽しい日々は終わりを告げてしまったのです。
女の子が男の子たちの傍ですくすくと育ち、1人の女性へとなった頃。
女の子は、男の子たちの自分を見る目が少しずつ変わってきていることに気がつきました。
「どうしたんだろう?」
疑問に思った女の子は、理由を男の子たちに聞きました2人は答えてくれません。
「気のせいだったのかもしれない」
そう思うようになった頃のこと、白い男の子が女の子へプリムローズの花をプレゼントしました。
「これ、君にあげる」
「わぁ、可愛い! ありがとう」
女の子は嬉しくて、その花を部屋の一番見える場所へ飾りました。
黒い男の子が、花を見てニコニコ笑う女の子に言います。
「花なんて、すぐに枯れてしまう。そんな物より、こっちの方がいいだろう」
女の子は、黒い男の子から1冊の本を貰いました。嬉しく思った女の子は、毎日その本を読みました。
一生懸命本を読む女の子に、今度は白い男の子が言います。
「本もいいけれど、それよりも一緒にお菓子を食べようよ」
白い男の子は女の子をオヤツに誘いました。女の子は甘いお菓子に目を輝かせ、白い男の子に笑顔で感謝を言いました。
そのことに、黒い男の子が対抗し……。と、最初は些細だったモノが、次第に勉学や剣術、将来の地位にまでいたり、それは、いつしか周りをも巻き込んだ争いになるまで大きくなりました。
女の子は、そんな男の子をみて嘆きました。
「どうして、昔のように仲良く暮らせないのだろう。私はただ、彼らと3人でいつまでも仲良く幸せな時間を過ごしていたかっただけなのに……」
もう、昔のようには戻れないのだろうと、悲しみのあまり日に日に塞ぎ込んでいく女の子に、競うことに夢中な男の子たちは気づきません。
男の子たちの争いに耐えられなくなった女の子は、男の子たちに手紙を書きました。
~2人仲良く、幸せになってください~
その言葉を残し、女の子は男の子たちの前から消えてしまいました。
最期に、女の子は思います。
ああ、これで2人はまた仲良く暮らしてくれるよね。
おしまい。
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