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ログアウトブレイバーズ  作者: 阿古しのぶ
エピソード3
46/128

46.アマツカミ

 皮をむき乱切りした人参を耐熱容器に入れ、電子レンジで加熱する。そして玉ねぎを半月切りやいちょう切りにする。玉ねぎを切る時は換気扇を回して、その近くで切る事が涙を出さないポイントだ。続いてジャガイモは皮をむき乱切りにして、それも耐熱容器に入れ電子レンジで同じく加熱。

 その後、鍋に少量の油を敷き、調味料を炒めて香りがたった後に一口大に切った豚肉を加えて炒める。豚肉に火が通ったのを確認したら、そこに先ほど用意した玉ねぎを加えて色が変わるまで一緒に炒め、切った人参とジャガイモも加えて行く。


 そして水を入れ沸騰するまで加熱して、沸騰したらアクを取り火を弱火にする。そこから市販のカレールーを溶かして行くが、この際も2種類の異なるメーカーが出したルーを使う事が美味しくなるポイントだ。ルーが十分に溶けた所で、インスタントコーヒーを隠し味として適量加える。

 ここからは弱火のまま20分ほど煮込んでいく。


 キッチンでカレーを作る男、増田雄也(ますだゆうや)は生粋のアニメオタクである。


 学生時代からアニメの魅力に引き込まれ、毎日の様にアニメを見る日々を過ごし始め10年は経つ。それでもアニメのグッズに関してはさほど興味は無く、たまにゲームセンターのUFOキャッチャーで知ってるアニメのフィギュアが取れればラッキー程度の具合だ。それは社会人となり、情報提供会社勤務を経てフリーのウェブデザイナーとなった今でも変わらない。


 料理に一段落着いた所で雄也はIHコンロをセーフモードにして、エプロンを外し壁に掛けるとワンルームの部屋へと移動する。そこには壁一面に敷き詰める様に貼られたサイカポスターの数々。壁際に設置された棚には、様々な種類のサイカフィギュアが並べられ、その横に置かれたベッドはサイカのシーツと抱き枕。これは全て妹の増田千枝(ますだちえ)が買い集めた物だ。


 正にサイカ一色といった部屋で、ベッド横に設置されたパソコンデスクでは妹がピンク色のジャージ姿で、黄色のヘッドホンを付けてコントローラーを両手に芸能活動中だ。

 少し前までニートだった妹にとって、仕事が出来たというのは兄の雄也にとっても喜ばしい事である。


 そんな妹の後ろを通り、窓を開けてベランダに出る。外は大降りの雨、目の前は昼間はベランダの日当たりを遮っている隣マンションの壁。

 雄也は胸ポケットから煙草の箱を取り出すと、煙草を一本口に咥えて、ズボンのポケットからライターを手に持ち火を点けた。


 夜のマンションのベランダに、小さな赤い光が灯り、雄也の吸い込みに合わせて灯りが強くなる。

 そして雄也の口から吐かれる白い煙は、雨が降り続ける夜の闇へと消えていった。


 今朝、ワールドオブアドベンチャーでサイカから聞いた報告は、千枝には伝えていない。


 千枝が溺愛するサイカが大切な仲間を失い酷く落ち込んでいた事など、今を一番楽しんでいる千枝に話して良いものかと、消え行く煙を眺めながら考えた。

 先のネットワークショックが原因で、日本は変わってしまった。表面上はあまり変わっていない様に見えているのは、政府や情報機関、そしてサイカの頑張りのお陰である事も雄也は理解している。それはインターネットワークの中枢を担う者達や、公務員であれば誰もが気付いている事だろう。


 それでも日本は、前と変わらぬ日常が続いている。でもサイカが狭間で見たと言う親玉を倒さない限りは、必ず第二次ネットワークショックが起きる。

 束の間の平和がいつまで続いてくれるのか、雄也はそれだけが心配であった。


 煙草を吸い終わり、ベランダに置いてある灰皿にそれを入れると、雄也は窓を開けて中へと戻る。


 するとヘッドホンを耳から外して首に掛けた千枝が、椅子をくるりと回転させて雄也の方へ向いた。


「あー、お兄ちゃんまた煙草吸ってる。やめてよ、くっさいんだから」

「別にいいだろ。このぐらい」

「良くない! やめられないんなら、電子タバコにしてよ。規制厳しくなって、電子タバコ以外は外じゃ一切吸えない世の中になったのにさ」

「電子タバコは嫌いだ」

「百害あって一利なし。私のサイカグッズに臭い付けたら絶対許さないからね!」

「居候の身でよく言うよ、まったく」


 呆れた顔を見せてキッチンに戻ろうとする雄也は、自身が使うノートパソコンが置かれたテーブルの下にある2つの箱に目が行く。それはサイボーグ姿のサイカとオリガミのフィギュアだ。フィギュアが並べられてる棚に目をやると、同じフィギュアが並べられてるのが見える。


「おい千枝。なんで同じフィギュア買ってんだ」

「それは保存用! 勝手に触んないでよね!」

「ったく。千枝、もうすぐカレーできるから、一旦ゲームは終わりにしろよ」

「そっか、今日はカレーの日か」

「食べ終わったら、一緒にWOAで遊ぶか。今日の仕事は終わったんだろ?」

「いいけど、お兄ちゃん今日はアーマーギルティやるって言ってなかったっけ?」

「いつも遊んでる奴が、今日予定入っちまったんだとよ」

「そうなんだ」


 そこまで話して、雄也は煮込んでいるカレーの様子を見にキッチンへと戻って行った。


 雄也は皿にご飯を盛り、良い具合に煮込み終わったカレーをそこへかけて、カレーライスが完成。雄也の分は特盛にして、千枝の分はご飯少なめで大好きな福神漬けをたっぷりと乗せてやり、そしてそれをテーブルに運ぶ。


「やっぱお兄ちゃんのカレー美味しい」

 と、カレーライスを向かい側で食べる千枝に雄也は話しかけた。


「それで、最近どうなんだよ」

「どうって?」

「サイカの中の人とは連絡取ってるのか?」

「ん、まあ、ぼちぼち」


 そんな風に言いながら、なぜか顔を赤くする千枝。分かりやすいぐらいに恋愛下手な千枝は相変わらずで、琢磨に失礼な事言ってしまってるのではないかと心配そうな目線を向けつつ雄也はコップに注いだ麦茶を口に運ぶ。


「今度、デートする事になった」

「ぶふぅっ!」


 思いがけない事が千枝の口から出た為、雄也は口に含んでいた麦茶を吹き出してしまった。


「やだ、お兄ちゃん汚い」

「そりゃお前………そ、そうか、デートね。へぇ」

「でもでも、サイカも一緒だから! 2人っきりじゃないから!」

「サイカも一緒? ……なるほどね」


 サイカの事情を知っている雄也は、何となくそのデートというイベントが行われる理由が分かった気がした。


 去年仕事を辞めた千枝は、実家に帰るのを嫌がり、転がり込む様に兄である雄也のアパートまでやって来た。千枝にベッドとパソコンデスクを占領され、雄也はソファで眠る毎日。就職するつもりもないニートの引き籠りなのに、家事全般も雄也がやっている。

 挙句の果てには親愛なるサイカがアイドルデビューしたのを良い事に、販売されるグッズを全て買い漁っており、部屋はこの有様となった。

 それでも、雄也が千枝を甘やかす理由はただ1つ。


 雄也にとって妹の千枝は、世界一可愛いと思っているからだ。


 ✳︎


 ジパネール地方、首都ゼネティアにあるシノビセブンアジト。

 ヨーロッパを思わせる街並みであるこの居住エリアに、暖簾や提灯を入り口に設置して、屋根にはシャチホコ。そんな無理やり和風感を出したその3階建ての家は、アマツカミが多額のゲーム内マネーを使用して買ったマイハウスだ。

 入室は許可制にしており、主にシノビセブンのメンバーには自由に出入りが出来る権限を与えている。


 1階の部屋には畳を一面に敷き、床の間に掛け軸、天袋や違い棚、熊の彫刻なども置く事で和風感を高めている。

 そんな部屋にアマツカミとオリガミが揃ってログインすると、目の前には無防備な姿で畳に寝転がるサイカの姿があった。目を瞑っているので、寝ている様にも見える。


「げっ」

 と、まさかサイカがこの時間にいるとは思っていなかったアマツカミは、この場にオリガミを連れてきてしまった事に罪悪感を抱く。


「サイカーーーーーーーーー!!」


 案の定、オリガミはサイカに飛び付いた。もはや漫画レベルの勢いで両手を広げ、仰向けで目を瞑るサイカの胸に顔を埋めて行った。


「おわっ!?」


 突然抱きつかれた事に驚いて目を丸くするサイカ。


「サイカ久しぶりー! サイカエネルギーチャージさせてぇ!」


 慌てて起き上がろうとするサイカの胸に頬を擦り付け、オリガミは至福の時を迎えていた。


「こ、こらっ! オリガミ!」

「くそー。あたしもこっちの世界の人間だったら、サイカの温もりが感じられるはずなのにぃー」


 そろそろ止めに入ろうかとアマツカミが口を開こうとした時、先にサイカが言葉を出す。


「私は……温かいよ。オリガミ」


 そんな事を言って起き上がろうとする行為を止めて、諦めた様にオリガミを受け入れると、サイカはオリガミの頭を撫で始めた。


 サイカは温度を感じる。ゲームと呼ばれる世界だからと言って、他のプレイヤー達とは違い、火は熱いし、水は冷たいし、匂いや空気もサイカには感じ取れてしまう。

 抱き着いて来ているオリガミの体温も、サイカにとってはとても暖かかった。

 つい最近まで、このワールドオブアドベンチャーの世界で、この感覚を味わう事が出来るのが他にいないと言う事実をサイカは知らなかった。


 その知識を得ると同時に、この世界で何年も1人過ごしてきたワタアメも、同じ境遇にいたと考えると感慨深い物がある。


 オリガミの体温を感じながら、安らかな気持ちになっているサイカに横からアマツカミが話しかけた。


「こほん。それでサイカ、こんな時間にここにいるなんて珍しいな」

「うん。琢磨が……休みをくれたんだ」

「……なるほど。だからここで昼寝をしていた訳か。待てよ、ブレイバーにとってはこっちは夢の世界なんだろ?寝れるのか?」

「いや、寝てた訳じゃない。ただ、目を瞑って、頭を空っぽにしてた……」

「ほう」

「なんて言うか、こうしてると、心が落ち着くんだ。それに、この部屋の音楽、私は好きだ」


 サイカが言う音楽と言うのは、家の持ち主が設定できる室内BGMの事だ。持ち主であるアマツカミは、琴や三味線と言った和楽器音楽をBGMとして設定しており、サイカはそれを好きだと言う。


「サイカ……じゃなくて、琢磨は一緒じゃないのか?」

「うん。今日は特に出かける予定は無いって言ってたんだけど……今はいないみたい」


 とりあえず暫らくはこのままで良いかと、アマツカミはいつもの定位置へ座りつつ、畳の上で抱き合うバーチャルアイドルと妹を眺める事にした。

 そんなアマツカミの目の保養を邪魔するかの様に、新着メッセージの通知音が鳴る。

 アマツカミがメニューを開いてメッセージを確認すると、差出人はメイゲツと言う知らない名前だった。


「ん? 誰だ?」

 と、アマツカミがそのメッセージを開いて内容に目を通す。


 少し長文のメッセージを読むアマツカミに気付いたオリガミが、サイカを枕にしながら問いを投げた。


「ん、アマっちゃん、誰から?」


 メッセージを一通り読み終えたアマツカミは、ニヤッと笑みを浮かべながら答える。


「いや、知り合いからだ」

「ふーん」

「悪い。ちょっと俺は出かけてくる。サイカもゆっくり休んでてくれ」

「いってらー」


 アマツカミは立ち上がり、サイカとオリガミをその場に置いて玄関から出て行った。




 アマツカミが急に出て行ってしまって2人きりとなったサイカとオリガミは、畳の上で肩を並べてしばらく会話を楽しんだ。オリガミはシノビセブンとしての芸能活動であった事、サイカへ楽しそうに話す。


「―――そう言った時のそいつの顔、今思い出しても笑えるんよ」


 ファンタジースターと言うゲームで、生意気な男プレイヤーに出会ったと言う話で盛り上がる中、サイカは何か言いたげな表情をしている事にオリガミは気付く。


「ん、どしたん? 今日、なんか元気無くない?」

「あ、いや、その……なんだ」


 恥ずかしそうに頬を赤く染めるサイカを前に、オリガミが再び抱き付いた。


「もー! ほんと可愛いなー! すりすりー」

「オリガミは、あれからもう大丈夫なのか?」

「大丈夫って?」

「ほら、その、カレシ……と言う奴の事だ。それにモトカレだとか、色々とオリガミには敵が多いだろう」

「大丈夫! もう終わった事だし……最近は平和だよ。だって、あたしはサイカ一筋だもん! この愛は揺るがない!」

「……いいのか? 私は……オリガミが知ってるサイカは、琢磨が操作していたサイカだ。私では無い。言ってしまえば偽物だ」


 アヤノとの事を経験してしまったサイカは、ずっと変わらぬ愛情を見せてくれているオリガミに聞いてみたかった質問である。オリガミは琢磨が操るサイカが好きではないのかと思っていたサイカにとって、オリガミが返してきた言葉は意外な物だった。


「んー? でもさー、サイカはサイカでしょ? 元々が一緒なら、それって私が知ってるサイカだよ。琢磨さんもサイカ。サイカもサイカ。それでいいじゃん」

「それでも私は………」


 サイカは自分の両手を眺める。最近の自分に起きている変化、シュレンダー博士はバグレイバーという異形の存在。にわかには信じ難い事ではあるが、サイカにとっては無視できない変化だ。

 肌が黒くなると言うのは、ワタアメも似た様な姿になっているのを何度か見た事がある。

 思い耽るサイカを心配そうに見るオリガミ。




 そこへ先ほど出て行ったアマツカミが人を連れて戻ってきた。

 杖を持った青髪の少年キャラクター、名前はメイゲツ。職業は大魔導師で、レベルは120。


「紹介しよう。俺の知り合い、メイゲツくんだ」

 と、アマツカミが2人に紹介すると、メイゲツが一歩前に出てお辞儀する。


「初めまして。メイゲツと言います」


 礼儀正しく挨拶をしてくるメイゲツに、サイカとオリガミも軽くお辞儀で返した。

 そこへアマツカミが2人へ説明を加える。


「あれだ。メイゲツくんは、サイカのファンらしくてな。一緒に遊んでみたいって言うんで、連れてきた」

「ちょっとアマっちゃん! そういうのは無しにしようって話しなかったっけ!?」

 と、アマツカミの行動に怒ったのはオリガミだった。


 もともとWOA内ではそこそこの有名人ではあったものの、バーチャルアイドルとして活動を始め、その名を知らぬ者はいない程の知名度となってしまったサイカ。熱狂的なファンも多く、サイカ目当てでWOAを始めるプレイヤーも多い。


 だからこそ、サイカに悪い虫が付かないように、アマツカミやオリガミは守ってあげようと決めていたのだ。それをアマツカミはあっさりと、何処の誰とも分からないサイカのファンを連れて来てしまったのだから、オリガミが物申すのも筋が通っている。

 だがアマツカミは、これだけは許してくれといった様子で話を続けた。


「すまんな。これっきりにするからよ」

「ホントかなぁ」

「それにオリガミ。お前も気に入ると思うぞ。たぶんな」


 そんな事を言いながら、メイゲツの顔を見るアマツカミ。メイゲツは何処か気まずそうに、苦笑いを浮かべていた。

 挨拶の前に雲行きの怪しい雰囲気になってしまったが、オリガミが気を取り直して立ち上がり挨拶をした。


「あたしはオリガミ! サイカの妹分よ! 馴れ馴れしくしたら殺すから! サイカに下心見せても殺すから!」

 と、挨拶ついでにメイゲツに釘を刺すオリガミ。


 するとサイカが続いた。


「いつからオリガミは私の妹になったんだ。私はサイカだ。自己紹介の必要は無いかな?」

「はい。よく知ってますよ、バーチャルアイドルのサイカさん」

「今日は久しぶりの休み……というやつで、暇を持て余していたところだ」

「ずっと働きっぱなしですからね。今日くらいは休んでください」

「そう……だな」


 意外にも大人しい会話をする2人を見て、オリガミが口を開いた。


「サイカのファンって言うから、もっとこう、ワーワー騒いで抱きついたりするのかと思ったのに、拍子抜け」

「それはお前だろ」


 横からオリガミにツッコミを入れるアマツカミだった。




 しばらく4人は雑談を楽しんだところで、アマツカミの提案によりダンジョンに出発する事となった。

 メイゲツが首都ゼネティア周辺に出現したダンジョンのマッピング情報を持っており、そこへ向かう事となる。


 ラムズエルの廃屋敷と呼ばれるそのダンジョンは、首都ゼネティアから北西に23km程離れた場所にあるサンドライトと言う町の近くに出現した。

 4人は馬に乗り、1時間半と言う長い道のりを移動する事になる。まず目指すのはサンドライトの町。

 サイカ以外の3人は自動走行モードで馬を走らせ、森林に挟まれた山道を通り過ぎる。そんな時にオリガミが弱音を吐いた。


「ほんと、WOAってこの移動が面倒だよねぇ」


 するとメイゲツが、苦笑いしながら反応する。


「運営公認のシノビセブンらしからぬ発言だね。それがこのゲームの醍醐味じゃないかな」

「そりゃあさ、こうやって自動走行モードで移動してる間は手も空いて裏作業とかできるし、いいんだけどさ。なんか無駄だなぁと思っちゃう訳。わかんないかなぁ」


 ゲームに対しても愚痴を零すオリガミに対し、アマツカミが後ろから口を挟んだ。


「オリガミがWOA始めたばかりの頃は、この現実に近い泥臭さが良いみたいな事いってただろう。あの頃のお前はどこ行ったんだ」

「過去は過去。今は今。あの純粋だったオリガミちゃんはここにいないの。ねえサイカ、ゲームマスターさんに頼んで一気に転送してもらうとかどう?」

「無理だ」


 急に話を振られたサイカだったが、冷めた口調で即答した。


「ヒーマァー! ヒマヒマヒマヒマー!」


 暇を持て余し、馬の上で上半身を踊らせるオリガミだったが、

「うるさい」

 と、アマツカミに注意されて大人しくなった。




 そこから1時間、ようやくサンドライトの町に到着する。

 首都ゼネティアと比べてしまえば、規模はかなり小さい町ではあるが、それでもNPCキャラクターはしっかり配置されているし、何人かのプレイヤーの姿も見受けられる。


 ここからラムズエルの屋敷まではすぐ近くの位置なので、4人はそれぞれ倉庫NPCに話しかけて冒険の準備を進めた。

 ゼネティアを出発した時から準備が整っていたサイカは、オリガミとメイゲツが倉庫NPCとやり取りをしている姿を眺めていると、横で一緒に座っているアマツカミがサイカに話しかける。


「落ち込んでいる所、悪いな。遊びに付き合わせちまって」

「大丈夫」

「……それで、例の狭間とやらにもう一度行って親玉を倒す算段はついたのか?」


 サイカは首を横に振る。つまりまだ何も行動に移れてもいなければ、具体的な作戦もサイカには伝わっていないという事だ。アマツカミは続ける。


「サイカ、お前は狭間で何を見た?」

「真っ白な場所だ。ワタアメが管理者と呼ぶ存在と、魂の無いブレイバーの欠片。そして巨大なバグ……サマエル」

「こっちの世界と、そっちの世界の間にある空間。どちらにせよ、恐らくそこが決戦の場となるのだろうな。どうやって行くのかは知らんが」


 そんな会話をしていると、メイゲツがアイテム整理を終わらせて近づいてきた。


「お待たせ。とう……アマツカミさんとサイカさんは準備しなくて良いんですか?」

「とう?」

 と、何かを言い直したメイゲツの違和感に首を傾げるサイカ。その横で、アマツカミが口を開く。


「俺は大丈夫だ。サイカもだろ?」

「あ、ああ。私はそんなに装備を変える必要も無いから」


 サイカはそう言いながら自然と腰に下げたキクイチモンジを鞘の上から優しく撫でていた。




 ラムズエルの廃屋敷。

 そこはかつて富豪が住んでいた建物が使われないまま放置され、甲冑鎧の置物や立派な絵画が飾られたまま廃墟となった。そんな設定のダンジョンである。


 真昼間の気象設定だと言うのに、木々に囲まれ不気味な雰囲気を出しているその建物を前にして4人は馬から降りた。

 正面玄関、ドアノッカーの付いた木製の大きな扉の前までやってくると、オリガミが言う。


「このダンジョンってさ、確か結構レアなダンジョンだよね。マッピング情報、高かったんじゃないの?」


 するとマッピング情報を持っていたメイゲツが、

「貰い物だから」

 と苦笑いを浮かべていた。


 そんなメイゲツの言動に、やはり何処か違和感を感じるサイカは首を傾げる。

 屋敷の中に足を踏み入れると、中は薄暗かった。外からの日差しが窓から射しているものの、灯りの少なさが冷たい空気を作り出している。入口から一歩足を踏み入れれば、床が軋みを上げた。


「雰囲気あるね」


 メイゲツがそんな事を言った横で、オリガミがサイカの腕に掴まっていた。


「うう、あたしこういうの苦手。こ、怖くは無いけどね! 全然怖くない!」


 4人が足を進めると、モンスターの姿は何処にも見当たらないのが分かる。それどころか、他のプレイヤーの気配も無い。


「何もいないな」

 とサイカが言うと、メイゲツが杖を構えながら説明した。


「気を付けて。ここはそういうダンジョンだから」

「どういうことだ?」

「雑魚がワラワラと湧くと言うよりは、少数精鋭のモンスターが出る上級者向けダンジョンなんだよ」


 サイカに説明をしていると、メイゲツの横でアマツカミも小太刀を手に持ち大声を出した。


「来るぞっ!」


 すると何もいなかった廊下を進んでいた4人の前に、突如としてモンスターが出現。

 真っ黒な鎧に身を包み、同じく黒の剣、そして何よりも特徴的なのが額から伸びる2本の長い角。赤いオーラを纏い、さながら圧倒的な強者を思わせる騎士と言った風貌だ。


 名前はダークヴェイン、レベルは130。


「レベル130!? いきなりボスキャラ!?」


 オリガミは驚きながらサイカから離れ、手裏剣を手に持った。


 サイカのレベルは126、アマツカミが120、オリガミが111、そしてメイゲツが120と言ったメンバー構成。


 つまりこのダークヴェインというモンスターは、格上の相手となるのだ。

 サイカが鞘から抜いたキクイチモンジは、ダークヴェインに反応して刀身が橙色に輝いていた。その輝きに目を付けたのはアマツカミ。


「それが例の隠し効果ってやつか。どれ程か、拝見させて貰おう」

「わかった」

 と、サイカが真っ先に行動を開始する。


 ダークヴェインの黒い剣と、サイカの橙色の刀が激しく衝突して幾度と無く火花を散らせる。2人の剣戟は見事な物で、目にも止まらぬ斬り合いにより、互いのHPバーを徐々に削って行く。だがレベルが4つも高いダークヴェインの攻撃力の方がサイカを上回っている事から、サイカのHPの方が削れるのが早い。

 そして何よりも、ダークヴェインに斬られると痛みを感じるサイカは、ダークヴェインの刃に腹部を切り裂かれた事で反射的に後方へ飛び距離を取った。


 今の攻撃により、ダークヴェインのHPバーを半分まで削っている。

 援護する様にアマツカミのスキル≪忍法火炎陣≫とオリガミのスキル≪百華手裏剣≫がダークヴェインを狙うが、ダークヴェインのHPバーは僅かにしか削る事ができなかった。それでも2人の攻撃がダークヴェインのサイカへの追い打ちを防ぐ事に繋がり、その隙に大魔導師のメイゲツが回復魔法スキル≪ヒールライト≫でサイカのHPを全回復させる。


 ダークヴェインは攻撃スキル≪デッドエンドブレイカー≫を発動させ、自身を纏う赤いオーラを剣から放出させるかの様な範囲攻撃を仕掛けて来たので、サイカがそれを刀で斬る事で2つに割った。

 周辺のオブジェクトを激しく損傷させるに至ったその攻撃は、かなり強力なスキル攻撃であった事が窺える。

 サイカは空かさず前に前進、ダークヴェインの剣を避けながら飛躍して背後に回り込み、ダークヴェインもそれに反応して後ろを振り返りながら先ほど放ったばかりの≪デッドエンドブレイカー≫を放つ。だがそこにいたはずのサイカの姿は無く、ダークヴェインが次にサイカを視界に捉える頃には、サイカはダークヴェインの足元から刀を振り上げていた。


 真下から強烈な一刀を浴びたダークヴェインのHPバーは更に削られる事となるが、次のダークヴェインの攻撃がサイカを直撃。サイカは吹き飛ばされ、壁に叩き付けられた。すぐにダークヴェインの剣先が迫り、サイカは顔を傾けそれを避ける。ダークヴェインの剣が顔の横に突き刺さった。


「サイカ!」


 メイゲツの叫びを聞いて、サイカは素早く屈んでダークヴェインの視界外へ。それを見計らってメイゲツが攻撃魔法スキル≪ヘルフレア≫を発動して、真っ赤な炎の波がダークヴェインを襲う。

 炎に包まれたダークヴェインをサイカが背後から斬り、HPバーを一気に削り切った。


 ダークヴェインは消滅した。


「ふう」


 サイカは安堵の息を漏らしながら、キクイチモンジを納刀。そして手元にポーションを召喚するとそれを飲み干して、先ほどの一撃で削られたHPを回復させた。


「なにこれ! 経験値めっちゃ美味しいじゃん!」

 と、オリガミが喜ぶ声が聞こえる中、サイカは廊下の奥にいる影に目が行った。


 何か小さな物が、廊下の角から覗き込む様にサイカを見ている。

 HPバーが表示されていないので、モンスターでは無い様だが、頭に表示された名前を見るとパーラーフェアリーと表示されている。羽根の生えた青色の小さな妖精。


「ん? NPC?」


 サイカの言葉を聞き、他の3人もパーラーフェアリーの存在に気付いた様だ。だが複数の視線を感じたパーラーフェアリーは、廊下の奥へと慌てて逃げてしまった。

 するとメイゲツが解説をする。


「パーラーフェアリー。このダンジョンの名物NPCだね。僕も見るのは初めてだけど、あのNPCを捕まえると報酬が貰えるらしい」


 そう説明をしてくれたメイゲツに対して、オリガミが関心を示した。


「メイゲツは、なんか色々と詳しいんだね! 凄い! 見直したよ!」

「い、いや、それほどでは……」


 2人が会話する後ろで、なぜかアマツカミが笑いを堪えている。

 サイカはこのメイゲツという男キャラクターに、既視感の様な物を感じた。何処かで会った事がある気がする。そんなもどかしい気持ちをサイカは抱いたが、でも悪い感じはしなかった。


 メイゲツはサイカの視線を感じながらも、

「とにかく、あの妖精を捕まえてみよう」

 と3人に提案したので全員は同意したが、オリガミがメイゲツに質問を投げる。


「でも捕まえるったって、どうするの?」

「そりゃ走って追いかけるしかないよ」

「えーなにそれー! だるっ!」


 オリガミが面倒臭そうにしているので、サイカは妖精が逃げて行った方に身体を向けた。


「私が捕まえてこよう」


 突然そんな事を言い残して走り出すサイカを見て、

「サイカ! ちょっと待って!」

 とメイゲツが止めるが、サイカはもの凄い速度で走り出して奥へと見えなくなってしまった。その様子を見ていたアマツカミがメイゲツに問う。


「行ってしまったが、いいのか?」

「ダメだ。サイカはこのダンジョンの恐ろしさを理解していない」

「サイカなら何とかなるとは思うが……とにかく追いかけるぞ」


 アマツカミがそう言ったので、残された3人はサイカの後を追おうとする。

 だが先ほど倒したダークヴェインが再び現れ、3人の行く手を阻んできた。


「ねぇ、どちらかと言うと、あたし達の方がマズくない?」


 そう言いながら咄嗟に手裏剣を構えるが、レベル130というレベル差のあるダークヴェインにサイカ無しで勝てるビジョンが思い浮かばないオリガミであった。


 このラムズエルの廃屋敷というダンジョンは、このダークヴェインを倒しながらパーラーフェアリーを捜索しなければいけないという高難易度ダンジョンなのである。


 そんな事も知らないサイカは、パーラーフェアリーを追いかけて広い屋敷の中を駆け回っていた。途中、ダークヴェインが何度か立ちはだかったが、サイカは無視して突き進む。分かれ道や階段等では、遠くに僅かに見えたパーラーフェアリーの小さな羽根から零れる青い光を頼りに迷わず足を進めた。


 2階へと上がった所で、再びダークヴェインが出現して襲い掛かってきたが、その剣を避けながら顔を蹴飛ばす。怯んだ隙に横を通り過ぎて走るサイカは、遥か先にある部屋の中にパーラーフェアリーが入って行くのを目視で確認した。

 迷う事なくその部屋に狙いを定め、勢いよく扉を蹴破って中に入ると、そこには部屋の隅で怯えた様子を見せる青い妖精の姿があった。


 刀を片手に持ったまま、ゆっくりとパーラーフェアリーに向かって歩みを進めるサイカ。

 まるで殺人鬼に追い詰められた子供の様に、涙目で震えている妖精の目線がサイカに向けられているのではなく、サイカの後ろに向けられている。それに気付いたサイカは、ハッと振り返ると剣を振り上げるダークヴェインの姿があった。


 その剣を避ける事は間に合わず、サイカはダークヴェインの攻撃を受けるが、咄嗟にスキル≪空蝉≫の効果でそれを無効化。幻影が斬られている内に、サイカはパーラーフェアリーを腕に抱え走り出した。

 部屋の入口にもう1体いたダークヴェインに飛び蹴りをしながら部屋を出ると、来た道を戻る様に走る。


 階段を下りた所で、今度は3体のダークヴェインが道を塞いで来た為、思わず足を止めるサイカ。後を追って階段を下りて来たダークヴェイン2体にも追いつかれ、1人で5体のレベル130モンスターに囲まれる形となってしまった。

 それでも何とかこのパーラーフェアリーを3人の元に連れてってあげたいサイカは、スキル≪分身の術≫を使って4人になると、3人のサイカがダークヴェインと戦い始めた。更に3人のサイカはスキル≪乱星剣舞≫を発動して、周囲の5体のダークヴェインに刀の乱舞を行う。


 サイカとダークヴェインが入り乱れるその場を、妖精を抱えたサイカが1人抜け出て走るが、更にもう1体のダークヴェインが目の前に出現して剣を振り上げた。


「ちっ!」


 舌打ちをしながら、サイカはスキル≪一閃≫で妖精を抱えたまま橙色に輝くキクイチモンジでダークヴェインを一刀両断。一撃でダークヴェイン1体を消滅させた。


 だが連続して強力なスキルを発動した事による疲労感により、目眩と吐き気に襲われたサイカは足の力が抜けて床に片膝を着けた。


 ブレイバーがスキルを使った時の代償は、HPバーの下にあるMPバーとは別に、疲労感として現れる。それは強力なスキルであればあるほど大きくなり、最後には気を失ってしまう。前にゲームマスター達の力を借りて、MPゲージを無制限にしてもらったり、ステータスやレベルを最大値に設定して貰った事もあったが、このスキルを使った時の疲労感も、痛覚や五感といった物には何も変化が無かった。


 スキルを使い果たしたサイカは、しばらく立ち上がる事もままならない状況に陥りながらも、大事そうにパーラーフェアリーを抱えていた。だがその力も緩んでしまい、妖精は空かさずサイカの腕から這い出る。

 パーラーフェアリーは逃げるのではなく、回復魔法を必死にサイカに掛け始めた。

 そんな暖かな回復魔法の力に包まれながら、サイカは朦朧とする意識の中で自分の手が再び黒く染まっている事に気が付く。


 サイカは思わず刀を床に落とし、両手の平を凝視した。


 真っ黒な手。


 爪も鋭く尖っていて、まるで怪物の様な手だ。

 自身の変化を再び目前として、サイカは手が震える。


 それと同時にサイカのぼんやりとしていた視界が段々と鮮明になってゆき、隣で回復魔法を唱えるパーラーフェアリーが怯えた顔でサイカの後方に目線を向けているのが見えた。

 サイカが振り返ると同時に振り下されるダークヴェインの剣を、サイカは咄嗟に片腕を盾にして防いだ。


 パリーンとガラスが割れるような音がしたと思えば、サイカの目の前でダークヴェインの黒い剣が粉々に砕け散る。それはまるで、バグがプレイヤーやオブジェクトを攻撃した時に見られる破損の症状そのものだった。


「サイカ!」


 何処からかサイカを呼ぶ声が聞こえ、メイゲツのスキル≪ヘルフレア≫で目の前のダークヴェインが炎に包まれる。

 今度はアマツカミのスキル≪忍法影交換≫により、サイカとアマツカミの位置が交換され、サイカの目の前がダークヴェインではなくメイゲツの背中となった。


 サイカがいた位置にアマツカミが小太刀を持って立つと、スキル≪震撃斬≫でダークヴェインに麻痺を付与。痺れて動けなくなっているダークヴェインに、オリガミが放った5つの≪念手裏剣≫が纏わりつく。


 突然の出来事に戸惑っているパーラーフェアリーを見たアマツカミは、

「こいつだな」

 と乱暴にそれを掴み、ついでに下に落ちているキクイチモンジを拾いながら、スキル≪忍法土壁≫で壁を作りダークヴェインとの道を塞いだ。


 アマツカミの土壁によって一旦その場が安全となった所で、メイゲツが振り返りサイカを見る。


「サイカ、その姿……」

 と、腕と眼球が黒く、瞳孔が赤く光っているサイカに少し驚いた表情を浮かべるメイゲツ。


 そこへアマツカミが走りながら声を掛けてきた。


「話は後だ! 無暗に動いてモンスターが湧きすぎた。一旦屋敷を出よう!」


 アマツカミにオリガミも続き、メイゲツはサイカの腕を引っ張りながら走る。



 何とか入ってきた正面玄関から飛び出す様に外へ出た4人は、しばらく周囲にモンスターがいない事を確認する。ダークヴェインが屋敷の中から追いかけてきていないか、オリガミが見張っていたが、特にそんな事は無い様だった。

 周辺が安全である事を確認した後、各自武器を納める。


 その頃にはサイカもすっかり元の姿に戻っており、先ほどの異様な姿では無く、いつものサイカがそこにいた。

 オリガミがそんなサイカに駆け寄る。


「サイカ! 大丈夫!? 怪我は無い!?」

 と、サイカの身体を隅々まで触って確認するオリガミを余所に、メイゲツが近づいて話しかけた。


「サイカ、勝手な事をして。何でもそうやって1人で抱えようとしないでくれ」

「……すまない」

「それよりも、やはりと言うかなんと言うか、もしかして、痛覚があるんだね? それにさっきの姿、朱里が言っていたバグレイバーと言うのはアレの事か」


 突然、前からサイカの事をよく知っているかの様な口振りで話すメイゲツに対して、サイカはきょとんとした表情になった。


「えっと、貴方は……」


 戸惑うサイカを前に、アマツカミが前に出てパーラーフェアリーを腕に抱えたまま事情説明を始める。


「悪いな。サプライズのつもりだったんだが……このメイゲツは、琢磨だ」

「えっ」


 驚いたのはサイカだけでなく、オリガミもだった。

 思わず目の前に立つ青髪の少年キャラクターを2人は見る。


「どうも、琢磨です」


「「えええええええええええええっ!?」」

 と、驚くサイカとオリガミ。


 サイカと遊んでみたいと言う琢磨の希望により、この日の為に運営会社であるスペースゲームズ社が特別に用意したキャラクター。それがメイゲツだった。レベル差や装備差があると不便だろうという事で、レベルや装備まで最初からそこそこな上級キャラクターを用意してくれた。職業や容姿については、完全にゲームマスター19号の趣味である。ちなみに今回のダンジョンも、この日の為に特別に出現して貰ったと言う経緯もあった。

 その事をサイカとオリガミに説明するメイゲツ。


 いきなりのカミングアウトを受け、言葉を失うサイカとオリガミ。


 決定的な証拠を見せてあげようと思ったメイゲツは、隣の席にあるパソコンのカメラやマイクをオンにして自身の姿をサイカの視界に映した。


(サイカ。これで信じて貰えるかな?)


 このタイミングで琢磨の声と映像が現れると言う事は、紛れも無くこの目の前にいるメイゲツと言うキャラクターは琢磨と言う証拠である。

 その確信を得たサイカは、思わずメイゲツに駆け寄って抱き着いた。


 目の前のこのメイゲツと言う少年は琢磨。

 そう思っただけで、サイカの気持ちが溢れる様に零れだし、抱き着いてしまった。


 だがその時、サイカはとある衝撃的な事実に気が付き、嬉しそうな表情を一変させる事となる。

挿絵(By みてみん)

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