37.狭間
ブレイバー研究所跡。
かつてマザーバグがいたとされる大きな地下広間は、天井に開いた吹き抜けから零れる光で埃が輝き、中央の土台に座って休むケークンを照らしていた。
「ここに……ゼノビアさんいたんだよなぁ……」
と呟きながら王国直属の精鋭ブレイバー隊に所属していた時、お世話になったゼノビア隊長の事を思い出すケークン。
ラグナレクオンラインと言う夢世界出身だったゼノビアは、美しい銀髪で立派な鎧に身を包み、剣と槍を使い分けて戦う戦士だった。そして魔法障壁や氷を操る魔法に長け、どんな攻撃も瞬時に障壁と氷で防ぐと言う戦法が得意だった彼女は、どんな戦でも負け無しだったと言われている。
ケークンがお世話になったのは、この世界に召喚されてほんの数か月と短い期間であったが、それでもあの面倒見の良さはシッコクやミーティアより遥かに上だった。マザーバグ討伐戦にもし参加していたら、無残な姿となったゼノビアを見る事になっていたと思うと、正直不参加で良かったとまでケークンは思う。
「あいつら遅いな……」
とケークンが呟くのは、一時間近くソフィア王女とリリムが戻ってくるのを待っているからだ。
その間にもケークンが持っていた皮袋の中に入れた資料を確認はしてみたものの、これと言ってブレイバーの実験に纏わる資料は無かった。
ケークンが殴り壊して現れた隠し通路を進んだ先には、研究資料の保管庫の様な場所だった。
火を点けられそうな松明が壁にいくつかある為、リリムが火の魔法で一つ残らず灯して行く。すると本棚が並べられたまるで図書室の様な部屋である事が分かり、研究資料が綺麗に並べられている。
ソフィアとリリムはそれぞれ適当に資料を手に取って読む。
「これは……」
とリリムが開いた記録書は、人工的なバグ生成実験の結果が記された最重要機密書類だった。
著者の名はスウェン。他の書物にも手を出し表紙を確認すると、そのほとんどにスウェンと言う名前が記されていた。
その書物のほぼ全てが目を疑いたくなる様な実験結果が載っており、リリムは思わず冷や汗が出てしまう程に驚愕した後、ソフィアが心配になってそちらに顔を向ける。
しかしソフィアはリリムよりも冷静で、ただひたすらに書物のタイトルを確認して、目的の物で無ければすぐに戻し、そして次の書類へと手を伸ばしている。ソフィアの目的は、ワタアメ関連の書物だ。
黙々と探し物をするソフィアにリリムが話しかける。
「ソフィア様、これはいったい……こんな事が本当にここで行われていたのでしょうか……」
そう言うリリムの手には、数百人にも及ぶ生きたブレイバー解剖実験の結果が記された書物。
「ブレイバーは兵器、戦争の道具と言うのが人類の認識でした。彼らの生態を調べる為に、多くのブレイバーが被験体になったと聞いた事があります」
「では、ワタアメもその中の一人と?」
「私はそう見ています。お父様が気に掛ける程、重要な実験だったのではないかと……」
小一時間、数百冊と並ぶ実験結果資料を眺め探し物をする二人。
リリムは次の書物に手を伸ばすと、今度は結晶化したブレイバーに様々な薬物を投与すると言う実験結果、次に取った書物はバグを密室に閉じ込めての観察結果だった。
「ほとんどがブレイバー関連ですが、バグの実験も兼ねていたようですね」
「その様ですね……あった」
ソフィアが目的の書物を見つけた様で、リリムが手に持った本を戻しソフィアの元に近寄り覗き込む。
【異世界への空間移動実験結果】
被験体:ブラックライス、キャシー、ワタアメ
著者:スウェン
ブレイバー召喚魔法陣を逆に描く事で、ホープストーン内部へ侵入が可能となる。ただし、ホープストーンの大きさに応じて耐久度が有る事が解っている為、今回の実験には人間よりも大きなホープストーンを用意した上で行う。ホープストーンの先にあると仮定されている異世界への移動を試みる。
目的は異世界へ空間移動の可否を調べ、帰還の可能性も含め記録する。
【一回目】
被験者:ブラックライス(ニブルヘイムオンライン出身のブレイバー)
実験結果:失敗
記録:夢を失い、結晶化を発症させたブレイバーを被験体とする。ホープストーンの大きさが足らず許容範囲を超えていた為か、侵入の段階でホープストーンが割れてしまった。被験体、肉体の半分を損傷。ブレイバーでありながら肉体の自己回復が見込めず、衰弱した後、三日後に消滅。
【二回目】
被験者:キャシー(人間)
実験結果:失敗
記録:一回目の結果を踏まえ、更に大きなホープストーンで実験を行う。ブレイバーの場合は拒絶反応が起きている可能性がある為、今回は有志の人間による実験。ホープストーンの中へ侵入する事に成功。その後、未帰還となり、ホープストーンは一週間後に破裂。異世界への移動成功については確認できず。
【三回目】
被験者:ワタアメ(ワールドオブアドベンチャー出身のブレイバー)
実験結果:失敗
記録:ホープストーンを更に巨大な物に変更。今度は志願者のブレイバーを被験体とした。前回同様、侵入には成功するも、未帰還となる。三度目の失敗を受け、実験に立ち会ったグンター王により本実験の中止命令が下った。
追記:後のマザーバグ実験において、ゼノビアの協力によりキャシー及びワタアメ両名の救出に成功。結果としてこちらの世界と異世界との間に、亜空間の存在がある事が語られた。以後、狭間と呼称する。そこで管理を行う存在があるとの事だった。又、両名はその狭間で数百年単位で彷徨うと言う時間経過を体感しており、時間軸の相違が見られる。その影響でワタアメは性格が変貌、キャシーに至っては容姿が変わり記憶障害が起きていた。証言から確かに異世界へ通ずる場所であったとの事だが、帰還方法に関して対策を練る必要が有る。今後は両名の経過を見守る。
ソフィアはその資料を真剣に読み進め、
「空間移動……狭間……性格が変貌……記憶障害……これが、お父様が隠していた実験なのね」
そう呟くと、横からリリムも口を出す。
「この、マザーバグ実験と言うのも気になりますね」
「何処かにその資料もあるのでしょうか」
二人は次なる書物を漁る事にする。
狭間へ迷い込んだ二人を救出したと言うマザーバグ実験。
それがいったいどんな経緯で行われ、どんな結果に終わったのか……
だが、マザーバグ実験の資料だけは、見つける事は出来なかった。
その過程で本棚に置かれた一つの写真立てを見つける事となる。それは、面倒臭そうにしている黒髪ボサボサ頭で白衣を着た男の腕に、黒髪の女性が幸せそうに腕を組んで微笑んでいる写真だった。
広間で待ちくたびれたケークンは、かつてマザーバグがいた場所でもある中央土台の上で、イメージトレーニングをしていた。敵がそこにいると仮定して、拳を突き、蹴りを入れ、その空気を切り裂く感覚を味わいながら鍛錬をする。
ケークンにとってこう言った事は日常的にやっていて、他にも逆立ちで腕立て伏せをやったり、懸垂をやったり等もする。一般的にはそんなトレーニングをしてもしなくても、ブレイバーの身体能力に大きな変化は無いと言われているが、ケークンは精神を鍛えると言う面において、この行為は重要だと考えていた。
良い感じに身体が温まり、汗を流してきた所で、隠し通路からソフィアとリリムが出てきた。
「遅いぞ」
と言いながら、最後の回し蹴りをして、二人の方を向く。
「お待たせしました」
そう言うソフィアの手は一冊の本を大事そうに抱えていた。
「それは?」
「異世界への移動法が記された研究資料です」
「異世界って……まさか夢世界?」
「それについては不明ですが、狭間と呼ばれる場所の様です」
「狭間……」
ソフィアとケークンがそんな話をしている横で、リリムは炎を宿した剣を隠し通路に向けて構えていた。
「ソフィア様、本当によろしいのですね?」
「はい」
念の為にソフィアの決断を再度確認したリリムだったが、その力強い返事を聞き、夢世界スキル《紅蓮剣》を発動。リリムが振り下した剣から、まるで火炎放射器の様に勢いの強い炎が放出され、それは通路の先にある部屋にまで到達する。
すると炎は書物に引火、やがて激しい火災が発生する事となり、それらを焼き払った。
その光景を見たケークンは、
「おいおい」
と訳が分からないと言った困惑の表情を見せたのでソフィアが説明する。
「忌々しい書物です。念の為、この施設もロウセンに破壊して貰います」
奥で燃え盛る炎の光明に向かって、真剣な眼差しでそう言うソフィアに、ケークンは問う。
「それで、お目当ての物は手に入れたって事は、王都へ戻るのかい?」
「いえ、ミラジスタへ向かいます」
突然、ミラジスタと言う言葉がソフィアから出た為、ケークンは少し驚く。
「ミラジスタへ? でもあそこは今……」
「分かっています。ですが、そこに重要な情報を持った人物がいるかもしれません」
と言うと、ソフィアは手に持った本に挟んでいた写真を1枚取り出し、ケークンに見せる。それは先ほど写真立てに入っていた男女の写真だ。
「これは?」
「恐らくこの左に映っている男性が、異世界転移、そしてマザーバグ実験の関係者です。名はスウェン。背景から、この写真が撮られたのはミラジスタの採掘地区なので、ここに行けば何か分かるかもしれません」
ケークンはソフィアが差し出す写真を受け取り、改めて確認する。確かに以前、精鋭ブレイバー隊に所属していた時に、任務でミラジスタに出向き、この景色は見た事がある。
だが今のミラジスタはテロリストによる事件が発生しており、平和では無い。王女を連れて行くなど危険極まりない行為ではないかとケークンは考えつつ、リリムに話を振る。
「リリムはそれでいいのか?」
するとリリムは剣に宿る炎を鎮火させた後、腰の鞘に納めつつ、ニヤッと笑った。
「姫様の我儘に付き合うのも務め……だろ?」
ここに来た時にケークンが言った台詞をそのまま言われ、これは一杯食わされたと、ケークンは笑みを浮かべた。
「違いねぇ」
その後、三人はブレイバー研究所跡を後にする。
外で待機していたロウセンと合流すると、怖がって乗ろうとしないケークンをリリムが引っ張りながら再びコックピットへ乗り込んだ。
すぐにソフィアが指示を出し、ロウセンは手に持つビームライフルを研究所跡の建物に放つ。三発のビームにより、ほとんど跡形も無くその建物は吹き飛び崩壊した。呪われた廃墟だとしても、建物が無残に崩れるその光景は、何処か虚しい。
「では行きましょう。お願いします。ロウセン」
とソフィアが言うとロウセンはブースターを吹かせ、ケークンが悲鳴を上げる中、再び空へと飛んだ。
ミラジスタ、中央区の大聖堂前に設置された臨時作戦司令室。
昨日の敗戦により、撤退を余儀無くされた臨時テロ鎮圧部隊は壊滅的な被害を受けていた。
六十人いたブレイバーは半数以上が消滅して二十七人にまで減ってしまい、サイカもキャシーに連れ去られてしまうという事態に陥っている。
ただし敵も敵でかなりの戦力を削る事は出来たと見ており、ミラジスタの町中を徘徊していたバグの数も相当減っている。
今後どうするかといった話の中で、アーガス兵長は諦め切れず町に残っているブレイバーへ緊急収集を掛けつつも、次なる作戦を考えていた。
そんな中、ルーナ村の時に続いて再び足手まといとなってしまったエムは椅子に座って俯き落ち込んでいるので、マーベルが横に座って頭を撫でていた。
その横でクロードはかなり頭に血が上っており、険しい顔でアサルトライフルの手入れをしていた。
「あいつ許さねぇ! サイカをあんなにしやがって! 絶対に俺が殺す」
共に過ごして来たマーベルやエムにとって、こんなに冷静さを欠き、苛立ちを露わにするクロードは初めて見た。
クロードの言うあんなにと言うのは、キャシーがサイカにした事を言っている。
それはあの戦いでエムが人質になり、降参したサイカの首を跳ねたのである。無残にもサイカの顔は地面を転がり、それを見たクロードは激怒した。
ブレイバーはコアが傷つかなければ、腕が飛ぼうが、身体が半分になろうが、顔が飛ぼうが消滅する事は無い。だが首を跳ねられると言う光景は普通の人間やブレイバーであれば、この上無く残酷で不快なのである。
今にも一人走り出しそうなクロードに、マーベルは何か言葉を掛けようと口を開いたが、クロードが怒る理由も分かる反面、掛ける言葉が思いつかず口を閉じてしまった。
すると事情を知らないアーガスがクロードに問う。
「あの時、いったい何があった。テロリストが一人のブレイバーが連れ去るなんて事が有り得るのか?」
「俺にも分からねーよ。身体が目的と言っていた」
「身体?」
「ああ、サイカは少し特別なブレイバーだ。それが関係してるのかもしれない」
「ふむ……だとすれば、しばらく安全だろう」
そんな事を言うアーガスに、クロードは町の地図が広げられたテーブルを両手で叩いた。
「ふざけるな! あんな訳のわからねぇ奴らにな! 一人の女が連れてかれて安全だと!? あいつは簡単にブレイバーのコアを抜きやがる! そんな奴らが安全だと!?」
そう言って唇を震わせるクロードを、マーベルが止める。
「やめなクロード」
「マーベル! お前も見ただろう! あいつは!」
「分かってる。でもあの銀髪の女の強さを見たでしょう。私たちがほとんど遊ばれてる様な強さだった。それにアーガスさんが言っていた様に、バグを操る能力を持っている。下手に動けないでしょう?」
アーガスも口を出した。
「その通りだ。正直、作戦を二度も失敗するなど、私にとっても屈辱を極めている。これ程まで手強い集団が相手では、もはやテロではなく……戦争だ。現在、王都とその他各地より、兵士及びブレイバーの補強を進めている。三度目の制圧作戦は必ず成功させる所存だ。その為には時間も必要である事を分かってくれ」
確かにアーガスが言う様に、他の村や町から続々と王国兵士が派遣されこのミラジスタに集まって来ている。そして数こそ多くは無いものの、ブレイバーも疎らにミラジスタへやって来ているのも、町の様子を見ていれば分かる事だ。
クロードが拳を強く握り締め、歯を食いしばっている所で、再び臨時作戦司令室のテントにやって来た少女がいた。
「あらあら、まだこんな所でお話合いしてるの? 貴方達も暇なのね」
大鎌に赤ずきんの少女、ルビーだ。
作戦に失敗した彼らを嘲笑うかの様に、ルビーはテントの中に足を踏み入れてきた。
すぐにクロードが嫌悪に満ちた表情でルビーに話しかける。
「ここは遊びに来る所じゃねえよ。協力する気もねえガキが出てくんな」
その言葉を聞いたルビーは、鎌の刃を一瞬でクロードの首元まで持って行き寸止めした。
だがクロードは眉一つ動かさずルビーに力強い眼差しを向けハンドガンの銃口をルビーの頭に向けているので、ルビーもそれを睨み返す事で二人の間に見えない火花が散る。
「こんな時に仲間割れなんてやめな!」
と強い口調で怒るのはマーベル。その横で相変わらず俯いたままのエム。
「ごめんなさい……僕のせいで……サイカが……」
「大丈夫。サイカなら大丈夫だから」
一方では陰湿な雰囲気、一方では一触即発な雰囲気、周りのブレイバーや兵士の士気もかなり下がっていて、アーガスは顎鬚を触りながら悩む。
「どうしたものか……」
そしてルビーが鎌を引き、
「ま、この町も危ないみたいだし、私は次の所に行くわよ。いつまでも貴方達の戦争ごっこに巻き込まれてる訳にもいかないから。そうね、隣国のオーアニルに行ってみようかしら」
と言い放つので、クロードもハンドガンを懐に戻しながら、
「はっ。こんな状況になっても戦おうとしないお前は仲間でも何でもねぇよ。勝手に何処へでも行っちまえ」
「ふんっ」
ルビーは一刻も早くその場から去ろうと、クロードに背中を向け、テントを出ようとした。
その時……
ルビーの視界に、天使が映る。
そこに立つ女性。肩や腰に赤い甲冑を着けながらも、肌の露出が多い服装と、下着の様な胸部の布と膨らみ、そして何よりも目立つのは両手に装着した金色に輝く鉤爪。
ナポンである。
「よっ!」
と笑顔で右手を上げてルビーに挨拶をする。
「えっ……」
足を止め、目を丸くして驚くルビーの表情は、状況を理解するにつれて少しずつ緩んでいく。
その目は潤み、まるで今にも泣きそうな子供の顔になったと思うと、ルビーはナポンに向かって走り出していた。
「ナポンー! ナポンー! 会いたかったよー!」
そんな事を言いながら鎌を投げ捨て、飛びつく様にナポンへ抱きつくルビーをナポンはそっと抱き返す。
「おうおう、なんだいルビー。元気そうじゃないか」
「寂しかったんだからぁ……ナポン……会いたかったぁ……」
「あたいも会いたかったよルビー」
ナポンに会いたかったと言われたのが嬉しくて、ルビーはナポンの胸元で声を出して泣きはじめたので、ナポンは強く抱きしめ、そして頭に手を優しく乗せた。
何が起きたのかとテントの中から続々と出て来ていたブレイバー達の中で、最初にその一部始終を見ていたクロードが横に立つマーベルに聞く。
「あの赤ずきん誰だ?」
「さあ……」
先ほどまでの威勢の良さが一変して、さながら母親の胸元で泣きじゃくる娘になったルビーであった。
周囲の目線など気にせず、ナポンの温もりを堪能するルビーは、ふと疑問が浮かび、ナポンに顔を向ける。
「でも、どうしてここに?」
「ああ、そうそう」
思い出したかの様に、ナポンはルビーを抱きしめながら周囲に目を配る。やがてテントの前にいるクロードを見つけ問いを投げた。
「えっと、クロードだっけ? なあ、今回の事件の指揮官はいるかい?」
「いるにはいるが……」
クロードがどうするべきか悩むや否や、テントの中から会話を聞いていたアーガスが出てくる。
するとナポンがアーガスの姿を確認するなり、笑顔で話しかけた。
「やっぱり、アーガスのおっちゃんかー」
「むっ。ナポンか」
「久しぶりだなー。あの子は元気してるかい?」
「ああ、元気だが……それより、なぜナポンがここにいる」
顔見知りの様に会話を進める二人に、ルビーが不思議そうな顔をして、
「知り合いなの?」
とナポンに聞いた。
「ああ、昔ちょっと世話になった事があんだよ」
そんな風に笑顔でルビーに答えると、ルビーから手を放しながらアーガスに身体を向けアーガスの質問にも答える。
「ルーナ村に避難してきた人たちとブレイバーから話は聞いたよ。やばい奴らが相手なんだって?」
「その通りだが……まさか……」
「力貸すよ」
と、ナポンがルビーの肩を持ってアーガスの方向に向けさせ、後ろから手をまわす。
「あと、こいつも」
一瞬、ナポンが何を言ったのか理解が追いつかないルビーであったが、すぐに状況を理解して困惑の表情を浮かべる事となった。
「えっ?……ええええええええ!?」
そんな慌てふためくルビーにナポンが、
「ダメかい?」
と耳元で聞くと、
「ダメじゃ……無い……けど……」
そう言いながら恥ずかしそうに顔を赤らめ俯くルビーであった。
そんな姿を見て、クロードは改めてマーベルに問う。
「あの赤ずきん誰だ?」
「さあ……」
冗談を言う二人を余所に、アーガスはナポンに話を続けた。
「ふむ。お主が手伝ってくれると言うのは有り難い事だ。是非宜しく頼みたい」
「どーんとあたいに任せとけよ、アーガスのおっさん。それで、そのテロリストとやらはどんな感じなんだい? 採掘地区を占拠してると聞いたけど、この町の様子を見る限り、只事じゃないよね」
「その通りだ。多くのブレイバーが犠牲となり、昨日の作戦では、一人のブレイバーが連れ去られた」
「ブレイバーが連れ去られた? なぜだい?」
クロードが口を挟む。
「連れ去られたのはサイカだ。あいつ等、サイカの特別な身体を使って、何かを企んでやがるんだ」
「あの子が? 特別な身体って……」
サイカが特別なブレイバーである事を知らないナポンが首を傾げると、そこへ新たな人影が現れた。
「その話、私にも詳しく聞かせて下さい」
急に声がしたので、一同が皆そちらに目を向ける。そこには美しい白の毛並みと銀色の馬鎧を装着した愛馬に乗り、赤と青の双剣ツインエッジを背負った金髪の女剣士、ミーティアの姿があった。
王都シヴァイでは、ミラジスタで二度の作戦失敗を受け、王国兵士達が慌ただしく出発準備を進めていた。それはアーガス兵士長より緊急の増援要請があったからである。
グンター王からミラジスタへ向かう様に指令が出され、歩兵が集められ、一個大隊四個中隊が出撃準備に入る。又、ブレイバーも王都内にいた優秀なブレイバーが数百人と集められ、相手がどんな戦力であろうと力でねじ伏せる構えである。
そんな中、廃墟となっている教会跡に、グンター王が数人の護衛を引き連れてやって来ていた。
既に魔法陣は発動され、大きなホープストーンが宙に浮き、空中で光輝きながらゆっくりと回転している。ホープストーンの真上では、梁の上にワタアメが立っていた。
何をするのかと思えば、持っていた短剣で自分の右手首を少し深めに切り、やがて赤い血液がボタボタと流れ落ちる。そんな右手を正面へ突きだし、自らの血液をホープストーンに落とし始めた。
ホープストーンに落ちたワタアメの血は、まるスポンジに吸収されるかの様にホープストーンの中へと消えて行く。赤い血が吸収される旅、その輝きが青から赤へと変化して行くのも分かる。
「おおっ!」
思わず声を上げてしまったグンター王にとって、本来青く光る石が赤色に光るなど、その光景は初めて見るものであった。
そして継続的に血液を落とし続けるワタアメにグンター王は話しかける。
「聞いていた予定より少し早いな。ワタアメよ」
「予期せぬ事が起きた」
「なに? 夢世界でか?」
「ああ。大きな歪みじゃ。見過ごせばこの世界にも悪影響を及ぼす」
そんな事を言いながら、悲壮感漂う表情を見せるワタアメを見て、グンター王はしばらく黙った後、1つの質問を投げる。
「帰らぬつもりか?」
するとワタアメは笑みで応え、
「これ位でいいじゃろう」
と手首の傷口を瞬時に再生させて塞ぎ血を落とすのを止める。そして、梁の上から飛び降り、グンター王の前に音も無く着地した。
「アリーヤ共和国からの避難船に、わっちの知り合いが乗っておる。その内、王都まで来るじゃろう。後の事はそやつに任せる」
「ほう」
「それと、シッコクとお姫様の動向にも注意しておくことじゃ」
「……ソフィアの事か?」
「わっちがちょいと火を点けてやったじゃじゃ馬娘が吉と出るか凶と出るか……じゃな」
「気にしておこう」
しばらく沈黙が走った後、ワタアメはグンター王へ背中を向け、赤く光り輝くホープストーンを正面にする。
「世話になったグンター王。さらばじゃ」
そしてワタアメは走り出し、地面を蹴って飛躍すると、そのまま勢い良くホープストーンの中へとその身を投げ入れた。
✳︎
一瞬途絶えたワタアメの意識が戻ると、足場など無い真っ白な世界に浮かんでいた。
後ろを見ると、そこにはあちらの世界と繋がっている筈の大きな穴が一つ。そこには微かではあるが、心配そうにこちらを見ているグンター王が見える。
ワタアメはそれを確認するや否や、周りをキョロキョロと見渡し、
「いるのはわかっとる!出てこい!」
と叫んだ。
しばらくして、黒い靄の様な何かが現れ、ワタアメの周りをくるりと回ったあと、やがて人の形を成し、一人の女性が現れた。
腰まである黒髪ロングヘアを漂わせ、水色のパジャマ姿で、ワタアメに微笑みかける女性。
それはワタアメの創造主、沖嶋葵の姿であった。
「来てくれたんだね」
嬉しそうにそんな事を言うので、ワタアメは睨みながら返した。
「その姿で、その声で、わっちの前に出てくるなど良い度胸じゃな管理者よ」
「おやおや、まだ私の事をそんな風に呼ぶのかい?」
「名前が無いのは不便じゃからな。それより、サイカを異端者にした事、わっちは永遠に恨むぞ」
「ふふっ。次はアヤノにしたのかい?」
「黙れ。わっちが何しようと勝手じゃ……それよりも、奴の元へわっちを連れて行け」
「やはり助けに来たんだね。放っておけばいいものを……」
「放っておくじゃと? お主、いったいどっちの味方なんじゃ?」
「誰の味方でも無い。ただ、混沌を好むだけさ。分かったよ。連れて行こう、創造の吹き溜まりへ」
そんな事を葵の姿で言う管理者は、両手を突き出すと、黒い靄がワタアメを包み込む。
黒い霧が晴れ、ワタアメの視界が戻ると、そこは真っ白な世界から一転して、禍々しい紫色の何かが渦巻く空間へと転移していた。
そこには無数の物体が、まるで塵や埃の様に宙を漂っていた。
漂う物体に目を向ければ、それは老若男女、機械や妖精、様々な姿をした魂無き生物。服を着ていたり着ていなかったり、身体が半分無かったり、頭部だけだったり、創造されたパーツがただ宙に浮き漂っているのだ。
これは全て魂が宿る前のブレイバーである。
先ほどの真っ白な空間も含め、ここを狭間とワタアメは呼んでいる。
世界と世界の間に位置するもう一つの世界だ。
ワタアメがやって来るのは今回で二度目であるが、前はこんなにも禍々しい雰囲気は無く、真っ白な空間で魂無きブレイバーの欠片が疎らに漂っているのみであった。
だが、今回は違う。紫色の渦が呑み込んでいるかの様に、漂うブレイバーの欠片が中心に集まっていて、密度が高くなっているのも分かる。
その中心には、全長四百メートルはある巨大な物体。真っ黒なドレスを身に纏った女性のような姿を成してはいるが、顔の部分は靄がかってハッキリとした形は無く、眼球の黒い巨大で真っ赤な瞳が二つ。巨大な腕が二本。スカートに当たる部分からは気持ち悪いほどに無数の手が生え、それぞれがまるで蛇の様に蠢き、ブレイバーの欠片らしき物を握り締めている。脚は確認できない。
周辺には何体いるか分からない程のバグが群れを成して蔓延っていて、先日ワールドオブアドベンチャーで見た翼の生えたガーゴイル形のバグがも確認できる。
その光景を見てワタアメは、
「しばらく見ぬ内に、随分と大きくなったな」
と言葉を発し、その黒い物体の眼球がギョロっと動きワタアメを捉えた。
「ゾハブイ……ゾハブイ……ナサヌウテチ……ナサ……」
何処からともなくカタコトな台詞が聞こえてきたが、何を言ってるのか理解不能だ
すると、ワタアメの横に葵の姿をした管理者が再び現れ、ワタアメに説明を入れた。
「ゼノビアがいなくなった影響も大きいけど、魂無き創造物が集まり過ぎた。こいつはもう止められないさ」
「愚かな人間が生んでしまった怪物……よもやこんなに早く成長するとは思わなんだ」
そんな会話をしていると、その怪物はワタアメを捕まえようと無数の手を伸ばした。
ワタアメは空間を自在に移動して、その襲い来る手を避ける。時には漂うブレイバーの欠片を盾にして、踏み台にもして、予測不能な動きでトリッキーに動き回り回避して行った。
「お主が盗んだ物を返して貰いに来たぞ! サマエル!」
この怪物には名前は無いが、ワタアメは人間達が名付けたサマエルの名を使った。
動きを止めず、手を避けながらサマエル本体に近づき、あるはずの何かを目視で探す。
何千、何万本と蠢く無数の手が掴んでいる物に注目して、その中にある彩乃の魂を探した。
ワタアメの見立てでは、彩乃の魂は明るい緑みの青。弱々しいが時より力強い光を放ってくれる、沖嶋葵と似た魂。
見分けて見せる。
嗅ぎ分けて見せる。
ワタアメは眼球を黒く染め、更に全身をもサマエルと同じ色に染め上げることで、空中を移動する速度を増した。
そんなワタアメの固い意志と行動に反発する様に、今度は手だけではなくバグの群れがワタアメに向かって来るので、背負った弓を手に取り、高速の矢を解き放ち連射して迎え撃つ。
矢の雨も抜けてきたバグを短剣で切り裂き、次いで四方から迫る手を急降下で回避。
たった一人で悪意の神を相手にするワタアメの戦いは、しばらく続き、それを遠くから見物する葵の姿をした管理者は呟く。
「なんで、そこまで頑張るのか、私には理解ができないよ」
そんな言葉も届かぬワタアメは、必死に弓矢と短剣でバグと手を迎撃しながら、拳銃から放たれた弾丸の如く高速で移動を続ける。
そしてサマエルの腰の当たりにある一本の腕が、青く光る何かを掴んでいるのを発見する。
「見えた!」
ワタアメは速度を上げ、真っ直ぐそこへ向かうが、それを防ごうと小さなバグの群れが壁を作った。
だが、ワタアメは手に持った弓を投げ捨て、黒い右手を自身の顔よりも大きく変化させると、その鋭い爪でバグによる壁を切り裂き、強引に押し通って見せた。
次にワタアメの前に現れたのは、無数の触手を纏うマザーバグと、八本腕のイグディノムバグ。
イグディノムバグによる八本の腕からの光線を避け、避けきれない光線は右手で弾き、続いて伸びてきたマザーバグの触手を短剣で斬る。
そのままジグザグに移動して触手と、サマエルの手を避けつつ、二体のレベル五のバグを無視して横を素通り。
他には数種類のレベル五バグがワタアメに迫ってきているのが見える中、ワタアメは目的地へとうとう辿り着いた。
光る魂をしっかりと握りしめているサマエルの一本の手を、短剣で斬り消滅させると、魂が解き放たれる。
ワタアメはそれを右手で掴み、それが間違いなく彩乃の魂である事を確認しつつも、その場から逃げる為にすぐに反転。
だが振り返ったそこには、十種類以上にも及ぶレベル五級のバグがワタアメの活路を塞いでいた。
✳︎
(やっちゃえサイカ!)
「これでも、くらええええええ!!!」
サイカが両手に掲げたノリムネを振り下した所で、サイカの意識は途切れた。
段々とぼんやりとした視界が目の前に広がって行く。
そんな中、サイカの耳に話し声が聞こえた。
「……――ならば、わしが行こう」
この声、何処かで聞いた事がある……
「二度と帰って来れないかもしれない。それでも行くか?」
この声は知らないな……
「ああ。元よりこの世に未練など無い」
誰だ……
サイカのぼやけた視界が少しずつ鮮明になっていくと、目の前に赤く光る巨大なホープストーンが見えた。
その前には、シュレンダー博士と黒髪の男が何かを話している。
「うっ……ここは……」
意識は覚醒したが、身体が重く思う様に動けない。
サイカが目覚めた事にシュレンダー博士が気が付き、近寄ってきた。
「目覚めた様だな」
「博士……ここは……私はいったい……」
「やはり頭を斬り落とされた事による記憶障害が起きているのか……わしの事が分かると言う事は、重度と言う程でもないか……」
冷静に分析するシュレンダー博士の後ろで、ボサボサ頭のスウェンが口を開く。
「寝てる間に随分と見た目が変わったな。なんだその格好は」
そんな事を言われて、サイカは改めて平らな岩の上で仰向けに寝ている自分の身体を確認するとプロジェクトサイカスーツを身に纏った自身の姿があった。視界と息苦しさからも、しっかりフルフェイスパーツが装着されている。
「そうか……あのままこっちに来てしまったのか……」
夢世界で回線が切断された時点での装備となっていた。
「サイカ、なぜここにいるか分かるか?」
シュレンダー博士にそう問われるも、サイカは重たい身体を何とか起こしながら、どうしてこんな状況になっているのか考える。思い出そうとしても、頭が酷く痛むだけであった。
「分からない……ここは、何処だ」
「お前はキャシーに連れ去られて来たのだ」
「キャシー? 誰だ?」
「黒ドレスの銀髪女だ。そこまで言われても分からないか?」
「確かに……そんな奴と……そうだ! エム!」
エムが危険だったと言う事だけが頭を過ぎり、慌てて立ち上がるサイカだったが、全身が鉛の様に重たかった為、すぐに片膝をついた。
「なんだ……これ……」
するとスウェンが隣で解説する。
「その装備、お前の身の丈に合っていない装備なんだろう。こっちでは通用しないんだよ。何らかのバランス調整ってやつだな」
確かにプロジェクトサイカスーツは、言わば夢世界でのチート級装備。運営側の操作により、最大強化されている代物だ。その分の重さが、サイカの自由を奪っている。
シュレンダー博士が続いてサイカに話す。
「安心しろ。キャシーがお前さんの仲間は無事だと言っていた。心配するな」
「……博士、こんな所で何を……この赤いホープストーンはいったい……」
見れば、召喚儀式の時に使う魔法陣を逆にした魔法陣が発動しており、今まで見た事も無い程巨大なホープストーンが宙に浮き、真っ赤な光を放っている。
「これか?これは、お前さんの血を使わせてもらった」
「私の……血?」
「かなりの量を取ったのでな、貧血でしばらくは動けないだろう」
「いったい何の為に?」
その質問を受け、シュレンダー博士はスウェンに視線を向ける。スウェンはサイカに自己紹介をしつつ、代わりに説明した。
「俺はスウェン。ハッキリ言わせて貰うとな……お前が探しているログアウトブレイバーズの元メンバーだ」
「なにっ!」
と、サイカは再度立ち上がろうと身体を動かすが、やはりプロジェクトサイカスーツが重すぎて立てなかった。腰のノリムネも手に取るが、それも重さにより地面に吸い込まれる様に落下した。
そんな哀れな姿を見ながら、スウェンは話を続ける。
「まあ落ち着けよ。実はな、ログアウトブレイバーズはもう解散してバラバラになっちまってる。リーダーであるワタアメは、アリーヤ共和国に旅立ち、最近帰って来て王都シヴァイにいると聞いている」
「やはり……ワタアメ……」
「なんだ、ワタアメを知ってるのか? そうか、あいつも確かワールドオブアドベンチャー出身だったな。まあそれはどうでもいい。お前もマザーバグにやられた時、真っ白な世界を見ただろ?」
「確かに……見た……あそこを知ってるのか?」
「俺たちは狭間と呼んでいる」
「狭間?」
「二つの世界に挟まれた場所。俺たちはそこを越える事を目指してる」
「そんな事が可能なのか?」
「理論上は可能だ。それに、今まで不足していた世界が繋がっている異端ブレイバーの血も使用した。失敗は有り得ない」
「まさか……でも! それが出来るとして、何をするつもりなんだ!」
叫ぶ様にスウェンに問うサイカだったが、それを邪魔する者が一人、その場に駆け込んできた。
火縄銃を持った一人の男が、息を切らしてこの部屋に駆け込んでくる。
「どうした」
とスウェン。
「スウェンさん! 大変です! ブレイバーが来ました!」
「早いな。数は?」
「三人です!」
「三人? それだけか? 防衛の奴らは何をしてる」
「それが……ほとんど全滅です。こちら側のブレイバーも残っていません」
「なに?」
まだここまでの道を防衛しているのは相当な数の味方とバグがいたはずで、更にブレイバーもまだ七人程抱えていたはずが、全滅と言う言葉に耳を疑うスウェン。
「今、姉さんが出て対処に当たってますが、押され気味です。ここまで奴らが来るのも時間の問題かと……」
「キャシーもだと?」
予想外の展開に、スウェンは思わずシュレンダー博士を見ると、シュレンダー博士は黙って頷いた。
その頃、採掘地区の入口では、アーガス率いるブレイバー隊が唖然とした様子で目の前の現状を見ていた。
この三度目となる鎮圧作戦は、戦術などあった物じゃない。ナポン、ルビー、ミーティアの三人が先陣を切って突撃してあっと言う間に殲滅して見せたのだ。
ルビーの眼の力による幻覚で、火縄銃を持った人間達やブレイバーはあっと言う間に無力化。それをナポンとミーティアが目にも止まらぬ速度で火縄銃を斬って武力解除をされた。
出てくるバグの群れも、三人の相手にならず、虫けらを蹴散らす様に消滅させて行った。
個々が一騎当千の力を持ち、それこそ全盛期のアーガスや、英雄ゼノビア、シッコクと言った有名ブレイバーにも匹敵する程の強さを目の当たりにしたのだ。
あれだけ苦労したテロの鎮圧を、あっと言う間に解決に導かんとするその様を見て、クロードがすっかり怒りも忘れた顔で口を開いた。
「俺は夢でも見てるのか……」
するとマーベルが、
「あの子らが味方側で良かったわね」
と安堵の表情を浮かべていた。
その横で、至る所で未だに幻覚に苦しみ武器も壊されたテロリスト達を王国兵士が着々と取り押さえて行くのを見ていたアーガスは、改めてその場に集まるブレイバー達に指示を出す。
「行くぞ」
クロード、マーベル、エムも含めた計四十人ほどのブレイバーを連れ、アーガスは三人のブレイバーが切り開いた敵無き道を進んだ。




