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多美子とおじさん  作者: みゆき
9/10

コインランドリーとコンビニ

仕事から戻ってきた和夫は、多美子とびしょ濡れのセーラー服を乾かしにコインランドリーに向かいます。帰りに外食してコンビニに寄って帰ります。嫌らしい目で見ない、優しい和夫を多美子は好きになっていきます。

 多美子は、朝食のコンビニ弁当を食べ、午前中をぼんやり過ごした。部屋の片隅に体育座りで座っていた。窓から見える青空は、昨日の雨が嘘のように晴れている。少し、お腹が痛い。頭痛もしてくる。生理が近いのかもしれない。家の中は外の暑さの影響を受けて、暑くなってきている。多美子はエアコンをつけなかった。部屋の中に居られるだけで十分だった。お昼にはお湯を沸かしてカップラーメンを食べた。部屋には昨日まで着ていたセーラー服がびしょ濡れのまま、タオルの上に置いてある。あれはもうゴミと多美子は思った。夕方になってお腹が空いたが、朝とお昼に食べたので、全然苦にならない空腹だった。叔父さんが帰ってきたら、涼しい部屋で過ごしてもらおうとエアコンを入れた。多美子が体育すわりで座っている場所から見える空は、夕焼け色から夜空に変わる。部屋の照明を点けた。真っ暗だったら叔父さんが心配するだろう。多美子はうとうとしてしまった。多美子は夢を見た。叔父さんの布団で、叔父さんと一緒に眠っている夢。多美子は小さな子供だった。

 ガチャガチャという音で目が覚めた。

「ただいま」

 和夫の声が聞こえる。

「多美ちゃん、大丈夫?」

「うとうとしていただけ」

「これから、セーラー服を洗濯にコインランドリーに行こう。待っている間に外食をしよう。帰りにはコンビニに寄って何か買ってこよう」

「セーラー服、要らない。ゴミにだして」

「何言っているんだい。多美ちゃんはこれから学校に行くんだよ」

「私、もうどこにもいかない」

「しばらくはここにいていいよ。ここから学校に通えばいいよ」

「しばらくじゃなくて、ずっと。そうじゃないと学校行かない」

 多美子は拗ねた口ぶりでいってみた。

「わかったよ。ずっとここにいていい。だから学校だけは行こう」

「わかった」

「その格好じゃ、外に行けないから、叔父さんのジャージをきてね。叔父さんの匂いがするから嫌だろうけど」

「そんなことない」

 和夫はグレーのジャージ上下をクローゼットから出して多美子に渡した。

「私ね。今晩か明日には生理になりそう。叔父さんの下着汚しちゃう。しばらくは裸でおトイレにいるね」

「帰りには、生理用品をコンビニで買ってこよう。そうすれば問題ない」

「恥ずかしくない?大丈夫?」

「大丈夫だよ」

 多美子はジャージ上下を受け取って、男物のシャツとトランクスの上からジャージを着た。和夫はネクタイを解いてワイシャツとスラックスを脱いで、多美子と同じようなグレーのジャージに着替えた。

「おそろいだね」

 多美子がそういうと和夫は少し笑い、スーパーのビニール袋にびっしょり湿ったままの多美子のセーラー服とブラジャーとショーツを入れた。

「ブラジャーはこのまま洗っていい?」

「ワイヤーが入っているけれど大丈夫だと思うよ」

「ダメになっちゃったら買ってあげるから」

 和夫はお財布の入ったカバンとビニール袋を持って、玄関でスニーカーを履いた。

「ちょっと大きいけど、僕のスニーカーを履いて。ローファーも乾かさないと駄目だね。これも持って行こう。ビニール袋を探して入れて」

 多美子はキッチンでビニール袋を見つけて、ローファーをビニール袋に入れ、叔父さんのブカブカのスニーカーを履いた。二人が外に出ると、叔父さんが照明を消して鍵を閉めた。ガチャっと音がする。さあ行こう、と叔父さんが無意識に多美子の手を握った。

「あっ。ごめん。むやみに女の子の手を握るものじゃないよね」

 和夫が困ったような表情で多美子を見ている。

「この方がいい。ぜんぜん嫌じゃない。手をつなごう」

 和夫は多美子の手を少し強く握って歩き出した。


 コインランドリーは歩いて10分ぐらいのところにある。洗濯機に全てを入れて、コインを投入した。靴の乾燥機にローファーを入れて、コインを投入した。1時間ぐらいかかりそうだ。

「近くの、レストランで夕飯を食べてしまおう」

 和夫と多美子は近くのファミレスに入った。同じハンバーグ定食とドリンクバーを注文した。

「こういうお食事って久しぶり。ずっと食べていなかったから。また食べられるなんて夢みたい」

「僕は女の人と二人で食事をするなんてほとんど初めてだよ。ずっと一人だったからね」

「これからはずっと二人だよ」

 多美子が和夫に微笑む。

 ドリンクバーは二人でメロンソーダを飲んだ。ハンバーグ定食が来ると、多美子は腹を空かした狼のようにがつがつと夢中で食べた。和夫はそれを楽しそうに眺めながら定食を食べた。


 コインランドリーに戻ると、セーラー服もブラジャーもショーツもローファーも乾いていた。多美子はローファーを履き、和夫のスニーカーを別のビニール袋に入た。その後、二人はコンビニに向かった。


「生理用品は、使っていたものを買っていいよ」

「特にどれでもいいんだ。こだわりはないから」

 多美子は目の前にあったナプキンを和夫の買い物かごに放り込んだ。

「おりものライナーってあるけど、これは違うのか?」

「それはおりもの用。女は生理以外におりものがあるの。でも、それはいい」

「遠慮するな。必要なものは買わないと」

 和夫はおりものラーナーを手に取りどれがいいと聞いてきた。多美子は和夫が最初に手に取ったものをカゴにいれた。

「女の子の買い物させてごめんね」

「僕は気にしないよ。変質者じゃないけれど。それからショーツを買わないといけないよね。1枚しかないから」

 うん、多美子は頷くと二人でショーツを探し、2枚カゴに入れた。

「今度の土曜日にはちゃんとしたものを買いに行こう。洋服や下着類全部」

 和夫が多美子の顔を見ていった。二人はその後、ジュースやお菓子類を買ってアパートに戻った。部屋はエアコンで涼しくなっていた。


「叔父さん、生理用品はどうしたらいいかな?普通にゴミ袋に捨てたら嫌だよね」

「ティッシュに包んで入れておけば、大丈夫だよ。女性と一つの部屋で暮らすなんて初めての経験でいろいろわからないから、気がついたことがあったら何でもいってくれ」

「わかった」

 と多美子は小声で返事をした。和夫は買ってきたナプキンとライナーをどんとテーブルの上に置く。

「それはトイレに置いておいて」

「トイレはトイレットペーパーとティッシュペーパーで置き場所がないんだよ」

「叔父さんがいいなら、それでいい」

 多美子は恥ずかしそうに小声で言った。乾いた洗濯物の中からブラジャーとショーツを取り出した。綺麗に乾いている。ナプキンの袋を破いて一つ取り出した。

「トイレ、使わせてもらうね」

 そう言って、多美子はトイレに向かった。多美子は、叔父さんが見たくないものは見せないけれど、見ても構わないというのなら、裸でも堂々としていようと思った。これからずっと二人で暮らしてくのだから。トイレから戻ってきた多美子は和夫の隣に膝を抱えて座って小声で言ってみた。

「生理が近くてお腹が痛い」

「さすってあげようか?」

 うん、そう言って和夫の手を握って、ジャージの下のお腹の上に置いた。暖かい。生理なんてちっともいいものではないけれど、叔父さんがさすってくれるなら生理もいいかなと多美子は思った。

読んでいただいてありがとうございます。ご意見ご感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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