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花ときどき雨  作者: 三日月 夕
9/26

返信

予想外の追伸にドギマギする。



…いや、返信は月曜日朝一でいーや。


うん、今日はもう帰ろう。



「お先失礼しまーす。」


逃げるように会社を後にした。



電車では爆睡して、


最寄駅の改札を降りたら月が雲間からはっきり見えた。



右半分だから上弦の月。



「うーん!」


思い切り伸びをした。


なんだか今日はいい一日だった気分だ。


朝から散々で、仕事もいつも以上にこなしたが、最後にたった一通のメールを開いただけで気分がこうも変わるなんて。



「人を救うのは最後には人なのよ。」


おばあちゃんの口癖だ。



大袈裟かもしれないけど、五月先生が私に少しでも興味を示してくれてるということが、なんだか可愛いようなくすぐったいような気分。



いや、警戒しているのかもしれないけど。





新しい出会いが私をまた新しい世界に一歩連れて行ってくれる。



人気の無い夜道を、iPodから流れる音楽に合わせて小さな声で歌いながら帰った。


鞄を回しながら陽気に歌なんか歌ってる私は、はたから見たら酔っ払いだ。




私を月灯りが照らす。




私はまだまだ頑張れる。









月曜日、朝一で五月先生にメールを返した。


電話してもいいのだが、きっと出ない気がする。


そしてなによりP.S.を返したかった。



なんて返すか、週末はこの事で頭がいっぱいだった。



Q 小川さんは女の人ですか?




A1 私は女です。

(シンプルだけど笑いのないクールな印象だ)



A2 ヒント:香は“かおり”と読みます。さてどっちでしょう?

(これはイラっとさせてしまうかも。)



A3 しいていえば私の染色体はXXです。

(少し砕けてみたが完全にすべっている。)




一晩考えたが、職場でもしばらく悩んでしまった。




結局、本文では打ち合わせは金曜日の午後を提案し、追伸は



P.S.そうです、私は女の人です。



とした。



なるべくシンプルに、かつ冷たい印象にならないよう散々考えた末、変なおじさんみたいになってしまった。



いやいや、メールだから読み方で意識しなければ変なおじさんにならない……はず。




そもそもP.S.自体がおじさんっぽいのだが、編集長は五月先生のこと若いって言っていたし…。


お会いする前にあれこれ詮索したくなく、前任の本田さんにも人柄等は何も聞いていない。





午後は急遽先輩から頼まれて取材に出ていた。



会社に戻ると6時を過ぎていてお腹もなっている。


急いでメールの受信箱を確認。



五月先生からは3時過ぎに返信がきていた。



カチッとクリックする。



ドキドキ





小川様



ご連絡ありがとうございます。

申し訳ございませんが今週の金曜日は予定がありますので、来週の木曜日はいかがでしょうか。







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