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花ときどき雨  作者: 三日月 夕
8/26

メール


社に戻ったら、本田さんと引き継ぎを行なった。


担当が代わると決まった時は大騒ぎだったが、今では坦々としている。


受け入れたというか、吹っ切れたというか……。


もしかしたら私の知らないところで告白して振られたのかも?


なんて考えても、編集長に言わせれば深読みし過ぎなんだよなぁ。



二人に何があったか(何もなかったのか)知らないままだし……、正直気になって仕方ない。




「では引き継ぎは大体以上です。……大丈夫ですか?」


「はい、多分……大丈夫だと思います」



本田さんがクシャっと笑った。


「大丈夫ですかねぇ。本当なら変わりたくないんですけど」


「そうですよね、本田さんが担当で次々とヒットしたんですもんね」


「それは私の力じゃなくて五月先生の力ですけど。……ただ、やっぱり五月先生とお仕事するのは本当に楽しかったから……」



本田さんの顔は完全に失恋した乙女だ。


これが恋じゃないなら何だと言うのだ。




「分からないことがあればいつでも聞いて下さい」


「ありがとうございます」



本田さんは年下だが新卒入社だから中途の私には先輩だ。


恋のスイッチが入っていた時はあんなにベタベタしてきたのに、今じゃすっかり落ち着いている。



大人なんだか子供なんだか……。


自分にはないフレッシュさが少し羨ましいとさえ思う。







私は午後に3回、五月先生に電話した。


が、全てコール音だけで通じることはなかった。



7時過ぎに一通メールを送ることにした。


着信履歴だけ残すのは困らせてしまうかな、と少し思い、簡単な挨拶と出来れば新作についての打ち合わせを行いたい、と簡単に述べた。



それだけなのに、日本語がやたら気になり、メールを作成するのに30分もかかってしまった。


一気にクタクタになった。

もう早いところ帰ろう。

早くシャワーを浴びたい。


残ったメールを全力で捌く。



すると10分も経たずに五月先生から返信が来た。



なんだ、電話でれるじゃん!

メールはするんかい!




開封だけして、返信は週明けにしよう。


カチッとクリックする。





最後の一文にほんの少し胸が跳ねた。






小川香様



ご連絡ありがとうございます。電話に出れず、失礼致しました。

引き継ぎの旨、畏まりました。今後ともよろしくお願いします。

新作の打ち合わせはいつでも大丈夫です。




P.S.小川さんは女の人ですか?








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