恋のチカラ
自分でも驚く程涙が溢れた。
鮮明に思い出した。
「私、凛ちゃんにこんなに惹かれていたんだなぁ」
泣きながらパフェを頬張る。
胸がいっぱいで苦しい。
本を読んだり、映画を観たりして泣くことはあっても自分が涙するなんて……
まして10年も前の……。
きっと今日は沢山飲んだせい、うん。
山ちゃんが優しく肩をさすってくれる。
「あんたもね、編集者だから分かってると思うけど、言葉には力がある。
ただ思ってるだけと、実際声に出すのとじゃ全然違うのよね。
その凛ちゃんて人も、心のどっかであんたのことを想ってくれてたらいいわね」
……凛ちゃんが私のことを?
そんなふうに考えたこともなかった。
「どうだろう……
それはないんじゃないかな。
高校生の私は目立たないどこにでもいる生徒だったから。
どっちかと言うと忘れててほしいかも」
泣きながらでも笑みがこぼれる。
高校生の頃の自分。
いつも顔の何処かにニキビがあって、自分に自信がなくて人前で話すのが苦手で、試験は大体平均点。
もし凛ちゃんの夢に高校生の私が出てるなんてことがあったら嬉しいどころか恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
夢に出てくる凛ちゃんはいつだってかっこよくて輝いているのに。
「うん、でもそうだね。
凛ちゃんもどこかで頑張ってるんだって思うと、私も頑張ろうって思えるんだ」
「恋のチカラね」
山ちゃんがウットリして溜息をつく。
カシャン
カシャン
私達はパフェを食べ続けた。
私はその間涙と鼻水が止まらなくて笑えてきた。
山ちゃんはそれ以上は聞かなかった。
まだまだ想い出はあった気がするんだけど、私自身結構忘れちゃっている。
でも泣いたらスッキリしたんだ。
きっと山ちゃんは私が忘れられない恋の話をふった時から、私が抱えているものを吹っ切らそうとしてくれていたのかも。
結局、私達はパフェを残してしまった。
私は半分を過ぎたところでギブアップしたんだけど、山ちゃんは文句を言いながらも食べ続け、4分の1くらいを残すこととなった。
私が泣きながら謝まるものだから、女将さんは笑いながら言った。
「今度は大食漢な男の人捕まえておいで」
家に着いたのは12時を過ぎていて、結局アメトーークは見逃した。
その晩、私はまた凛ちゃんの夢を見た。