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花ときどき雨  作者: 三日月 夕
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昔の恋


「忘れられない人?」



山ちゃんは自分の本の話をピタリとやめた。



「そうねぇ……」



手元のカルアミルクのグラスを両手で大事そうに包み、目を細めた。



「私、いろんな男と付き合ってきたわ。


まぁあんたよりモテるし。ふふふ



でもやっぱり初めて抱かれた人……



ハタチの時、同じ寮の先輩だったんだけどね、


はぁ〜。



かっこよかったぁ〜。


学生の時の先輩って、年なんかちょっとしか違わないのにすっごく大人に感じるのよね、


あれ不思議よね〜。



……今でもね、ふとした時に思い出すわ。



街で似た人を見かけた時


昔住んでた街を通る時


春の風の匂いを嗅いだ時


冬の夜空を見上げた時



ふふ、気づけばしょっちゅう浸ってるのかも。



あ〜、甘酸っぱい私の青春♡」




山ちゃんはカルアミルクを一口飲んだ。



お酒が弱いからいつもカルアミルクをお代わりしている。



「……私ね、高校を卒業してからずっと夢に出てくる人がいるの。


特別仲の良かった友達でもない、ただのクラスメイト。


もう10年も経っているのに不思議だよね……」




「熱燗お待たせ致しました」



待ってました!



「高校卒業って……


あんた中学高校女子校だったんでしょ?


女の子の同級生が忘れられないって言うの?」



「そうだよ……


忘れられないの。


その人のこと」



「まぁたまに昔の同級生の事をふと思い出したりすることはあるわよね……。


でもずっと夢に見るんでしょう?


それって恋心じゃなくて?」



「ううん、そういうんじゃないんだけど……。


なんでだろうね、


今まで付き合った元カレ達よりずっとずっと思い出す」



「好きだったのねぇ……」



「……好きだったのかなぁ。


すごくすごく魅力的だった」



その後に出会ったどんな人よりずっとずっと。




山ちゃんが私のお猪口に日本酒を注いでくれる。


私は一気にそれを飲み干した。



「変じゃない?


だって女の子なのに……」




「どうして? 素敵なことじゃない。


相手が女だろうが、男だろうが、人として魅力を感じるなんて。


それに10年経っても夢に見るなんて……


余程好きじゃなきゃ無理よ」



「そっかぁ……。


私、好きだったのかぁ……。


おかしいよね、夢の中のその子は今でも高校生のままなんだよ」




「そういうものよ、昔の恋って。


記憶の中の先輩は永遠に汚れないし


永遠に年をとらない。


私はどんどん老けていくのにね。



きっと私の大好きだった先輩も今頃は社会の荒波に揉まれ、


加齢臭のする薄らハゲのオヤジになっているかもしれない」




山ちゃんは笑ってまた日本酒を注いでくれた。




「それで?


どんな人だったの?」






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