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花ときどき雨  作者: 三日月 夕
25/26

「マイ ホーム ワールド」


里菜は中学二年生。

学校である日を境に友達から無視される。家では母親は弟の中学受験勉強に必死。

学校でも家でも自分の居場所がないと感じる。

そんな時、田舎に住んでいた祖父が亡くなった。祖父とは幼い時以来会っていない。幼い時はよく遊んでもらった覚えはあるが、記憶があやふやで顔もハッキリ思い出せない。

お葬式、祖父の棺を前にしても実感が持てない。

お葬式の合間に、祖父と遊んだ庭を見ていると、蔵で何かが光ったような気がして見に行く。蔵の奥、古い仕掛け時計の中に里菜へと書かれた紙がついているカギを見つける。

それは魔法使いの祖父が、里菜のために用意していたサプライズプレゼントだった。祖父と過ごした時間を鮮明に思い出す。祖父は魔法と言って不思議なことを沢山見せてくれた。

仕掛け時計にカギを通す。カギの通じる先は、里菜のための、里菜だけの世界。里菜が大好きなものでいっぱいで、誰もが里菜を愛していた。

空には満天の星とオーロラ、真っ白なお城とペガサス、オルゴールのなる巨大な樹。虹の橋に星空のブランコ。お気に入りの音楽がずっと流れ、陽気に踊るフェネックの群れ。

案内人は里菜が小学生の時に飼っていたゴールデンハムスターのプテラノドン。プテラはもうこの世にはいない。だからか背中には小さな羽根が生えている。

大好きなもの達に囲まれて、里菜はやっと自分の居場所を見つけた、と感じた。

しかし、祖父が亡くなったことで、世界が歪み出してしまった。少しずつ崩れていく里菜の世界。

現実世界では、いなくなった里菜のため、家族と幼馴染達が里菜の世界にやってくる。

里菜は壊れていく世界を必死に守ろうとするが、世界の端っこに弟が引っかかってしまう。弟を守るため、里菜は世界を自ら壊すことを選ぶ。

プテラ

「里菜、自分は誰からも愛されていないなんて言わないで。私、里菜と出会えて幸せだった。里菜に沢山愛してもらって、私は里菜が大好き。ずっとずっとそばにいるよ。」

おじいちゃん

「里菜、忘れないで。この世界はいつもここにある。君は一人じゃない。分かるね?さぁ、お行き。」

現実に戻った里菜は元気よく学校へ行く。



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