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花ときどき雨  作者: 三日月 夕
20/26

連絡


凛ちゃんの香りがした。


「……うん。」



もうこの胸の高鳴りは止められない。





凛ちゃんは踵を返し、足早に去って行った。




席に戻ると、笹山さんは明らかに戸惑った表情をしている。


「なんだ?なんだ?どうした?」


「あ、……傘をお忘れだったので……。」


「ん?そうだったか?」


「はい…。」


「はーあっ!じゃ俺らも行くか。」





帰り道、笹山さんはずっと凛ちゃんの悪口を言っていた。


いや、悪口じゃなくて笹山さんなりの評価なのかもしれない。


でも私は凛ちゃんが悪く言われているのがたまらなく不快だった。



「五月先生もいよいよスランプかぁ。」


スランプじゃないし。作風変えたいって話だし。


「五月先生には「滝」は書けないよ。なにしろ経験が足りない。俺には分かる。」


もう5冊も出版してるし。経験は豊富だし。


「もうネタが尽きちゃったんだろうなぁ。デビュー前に温めてたネタがさ。多いんだよね、そういう人。」


…………。




凛ちゃんはちゃんとしたのを書きたいって言っていた。


今まで適当に書いてきたから、って。


私と一緒に作る本だから、って。





……私のせい?



私のせいで凛ちゃんが苦しんでいるの?




私、力になりたいって思っているだけで、何にも出来ていない。



私が凛ちゃんに出来ることってなんだろう?





私は、凛ちゃんからの連絡をただただ待つしかなかった。



翌日の金曜日、凛ちゃんからの連絡はなかった。


そういえば金曜日はバイトって言ってたっけ。


土日を挟んで、週が明けてしまうと月火水の次がもう打ち合わせの木曜日になってしまう。


一週間て早い。



土日の休日の過ごし方は最近すっかり決まっている。


土曜日は昼過ぎに歯医者の予約を入れていて、その後はブラブラ書店巡り。


本を買ったら、喫茶店で読書。


そして家に帰って続きを読む。



日曜日は家でゴロゴロ過ごすか、たまに友達と会ったりしている。



今週もお決まり通り、歯医者の後に近所の書店を回って新しく文庫本を3冊買った。


夜には久しぶりに山ちゃんと飲む約束がある。


まだ時間があるから、お気に入りの喫茶店でしばらく読書をしていると携帯が鳴った。



凛ちゃんだ。


慌てて電話に出る。



「も、もしもし。」


「あー、ななちゃん?」


「凛ちゃん!今どこ?」


「え?……山下公園……。」


「今行く!待ってて!」


「え?ちょ…」



急いで電話を切ると、足が走り出していた。






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