一週間
家に帰ると、1日の疲れがどっときた。
帰り道でも、家に着いてからも何も考えられなかった。
一つ考え出したら止まらなくなりそうで。
私にはもうキャパオーバーだ。
いつもは30分かかるシャワーが10分で終わった。
布団に入ると、目をつぶった途端に眠りに落ちた。
そしてそのまま何も夢は見なかった。
……朝日が眩しい。
気付けば枕元で毎朝うるさく鳴いていた鳥はいつの間にかいなくなっている。
駅までの道も、電車の中も何も考えられず、音楽を聴くこともなく、眠ることもなく過ぎた。
……私、ちゃんと生きれているのかな。
いい夢のようで
悪い夢のようで
でもやっぱりこれが現実で。
「おはようございます…。」
「おぅ!おはよう!元気ないじゃん。」
内田さんが笑う。
「そんなことないですよ……。」
「まぁ、昨日の笹山さんはすごかったからね。無理ないよな〜。」
「はぁ…。」
内田さんは辺りを見渡して確認してから言った。
「笹山さんさ、ずっと抱えていた内藤先生の打ち切り決定しちゃったらしくて。八つ当たり入ってんだよ。」
「えっ?!そうなんですか?!」
ひどい!
本当に八つ当たりだ!
「昨日は小川さんが帰ってくる前からずっとピリピリしててさ。ああいう人だからね。」
「そうだったんですか…。」
肩の力が抜けた。
「五月先生でしょ?あの人は才能あるから大丈夫、大丈夫!」
「本当、そうですよね……。」
遠くに出勤してきた笹山さんを見つけ、内田さんは小さな声で言った。
「俺でよければいつでも相談乗るから。」
「ありがとうございます。」
笹山さんに
「昨日はすみませんでした。」
と一言謝りに行くと、
「あぁ…。」
とだけ言われ、それ以上はもう何も言われなかった。
パソコンをつけると、やっぱり凛ちゃんからメールはきていない。
私はまた、抱えている仕事を一つ一つこなしていき、慌ただしく時間が過ぎる。
1日に何度もメールボックスを開いてみても、凛ちゃんからのメールは何日経ってもこなかった。
火曜日、私は凛ちゃんにメールした。
「ご調子はいかがでしょうか。何かありましたらお力になりますので、何でもおっしゃって下さい。」云々。
あくまでも仕事上の簡単なメール。
「ご連絡ありがとうございます。お約束の日には新作のプロットをお持ちしますので、ご確認お願いします。」云々。
うーむ。
大丈夫かなぁ…。
こうして一週間は足早に過ぎた。