握手
私も凛ちゃんの隣にしゃがみ込んだ。
よかった、今日スカートじゃなくて。
空は綺麗な青い空。
芝生の上を小さい子がヨチヨチお散歩している。
子どもを呼ぶ母親の楽しそうな声がだけが辺りには響いていた。
「私さ、本当に今まで適当に書いてきたんだ。」
「そんなこと……。」
「いや、本当に。でも、ななちゃんと会って…、っていうか、ななちゃんに読んでもらえるならもっとちゃんと書こうって思った。」
凛ちゃん……。
「私、ななちゃんと一緒に本を作りたい。だから……一週間待ってほしい。」
凛ちゃんは真っ直ぐ私を向いた。
「一週間なら……全然問題ないと思う。」
なんていうか…
プロポーズなんてされたことないんだけど、
きっとこんな気持ちなんじゃないかな。
ドキドキして、
嬉しくて
恥ずかしくて
少し不安で。
でも私達なら大丈夫って信じたい。
「凛ちゃん、ありがとう。
私、五月先生が凛ちゃんで本当によかった。」
凛ちゃんははにかんで下を向いた。
私もそれにつられる。
「えっと…、じゃあ来週の同じ時間にまたプリンスホテルのロビーでいいかな。」
私は鞄から手帳を取り出し、ボールペンをノックした。
「うん、私今どことも契約してないから。」
「そっか、よかった。」
「あ、でも金曜日は毎週バイト入れてるんだ。」
「バイト⁈なんの⁈」
「普通にパソコン入力の…。まぁ書けなくなった時の保険みたいな。」
「そうなんだぁ…。」
そんなこと本田さんから聞いていない。
私だから教えてくれるのかな。
「ななちゃんはこの後会社戻るの?」
「うん、仕事がいろいろたまってて。」
「そっか……。大変だよね。」
「いや!もう全っ然!調べ物とか何でもするから、連絡して!」
私の大袈裟な言い様に凛ちゃんは笑った。
「ありがとう。」
仕事だからではなく、
凛ちゃんだから力になりたいの。
おかしいかな、こんな気持ち。
凛ちゃんが右手を差し出した。
それに答えて私も右手をそっと差し出す。
私達は見つめ合って笑った。
私、きっと人生の終わりに今日のこの時を思い出す。
「じゃ、行こうか。」
凛ちゃんは立ち上がった。
「こっから一番近い駅まで10分くらいかな、タクシー拾う?」
「ううん、それなら歩ける。」
「うん。」
駅までの道、私は凛ちゃんの顔を一度も見れなかった。
行きと同じように、私は同級生の今の近況をずっと話して、
凛ちゃんは一つ一つに反応して、
駅に着くまでに私達は何回、懐かしいねって言ったかな。
「じゃあ私、山手線だから。」
「うん、じゃあまた来週。あ、それまでに何かあったらいつでも駆けつけるから!本当にいつでも連絡して!」
「うん、ありがとう。」
「ううん、じゃあまた…。」
「あ!そうだ!」
「?」
「悪いけどさ、会社の人には内緒にしといてくれない?」
「え?」
「あのー…、同級生ってこと。まぁいつかはバレるかもしれないけど。でもバレたら絶対外される気がするんだよね。」
「あ!そっか!うん、そうする!」
考えていなかった。
だって今でも半信半疑。
会社という現実と、凛ちゃんという夢がどうして繋がっているんだろう。
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