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花ときどき雨  作者: 三日月 夕
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新しい朝


懐かしい人が夢にでた。


チョケキチョケキチョケキチョケキー。


騒がしい鳥の声で目を覚ます。


「なんだ、まだ7時前か……」


まだ寝れる……。


今見た夢の続きが見たい……。


ゴソゴソと布団に潜る。





ジリリリリリリー。携帯のアラームが鳴り響く。


「うーん……」


結局夢の続きは見れなかった。


いつもなら夢なんて見ても起きたら忘れてしまうのに、今日は二度寝したけど覚えている。





爽やかな4月の朝。


一人暮らしをしているアパートから最寄駅までは徒歩20分。


こんな気持ちのいい日なら徒歩20分は全然苦ではない。



iPodから流れてくる曲はみんな私のお気に入り。


社会人かれこれ5年目。


今の会社はこの春で2年目。



私は今年で28になる。


でも夢の中の彼女はこの10年、ずっと高校生のままだ。




「おはようございます!」


朝はとにかく弱いけど、朝の挨拶だけはしっかり笑顔でするのがモットー。



「小川さーん!

おはようございまーす♡」


「本田さん、おはようございます。

どうしました?嬉しそうですね」


編集者として働いていて一番困ったのが、同僚の女性社員が面倒な奴だという事。


目を合わせず、興味がなさそうにしてもこの本田愛子はお構いなしだ。



「聞いてくださいよ〜!

小川さんに聞いて欲しくて昨日からもうずっとウズウズしてたんです!♡」


「あぁ、そうなんですか、よかったですね〜」


作り笑顔と棒読み。


私の本田さんへの対応は入社以来日に日に雑になっていった。


本田さんは、そんな私に変わることなく積極的に話しかけてくる。


若さってコワイ。



……二つしか違わないけど。


「ちょっとまだ何も話してないじゃないですかぁ〜!小川さんってばもぉ〜!♡」


「で?五月先生がどうかしました?」


本田愛子は自分が担当している五月先生にハマっている。


……というより恋していると言ったほうがいいかもしれない。


彼女の機嫌の10割を五月先生が占めている。



「な・ん・と!!

今度取材旅行が入るかもしれないんです〜!♡!♡!♡」


「あぁ……そう……」


「あ! 何ですか! そのリアクションはー!

小川さんはまだ担当持ってないからって嫉妬しないで下さいよぉ?」


「…………」


はぁ……。


この小さな出版社の小さな編集部で、数少ない女性社員の中、本田さんは一番年が近い。


だからことあるごとに話しかけてくる。


誠に残念なことにデスクも近い。



「はい! 会議始めるぞー!」


助かった……。

会議なかったら上司に怒られるまで五月先生の話をされていたに違いない。




まさかこの会議で五月先生の担当が本田さんから私に変更になるなんてこの時1㎜も思っていなかった。



「私に辞めろと言うんですか!!

五月先生を見つけたのは私ですよ!?

五月先生は私じゃなきゃ書けません!!!」


本田さんは涙でアイメイクがぐちゃぐちゃになってもお構い無しに編集長に猛抗議している。


……恋ってコワイ。


その後、編集長がどうやって本田さんを説得したか分からないが30分程でデスクに戻ってきた。


小さな編集部だからみんなが見ている。


視線の先は本田さんだけでなく、私にも多く突き刺さる。


確かに編集者としていつかは自分の担当を持つのが夢だった。


でもまさか本田さんの五月先生じゃなくても……。


貧乏クジだ……。


こんな日は飲むに限る。


うん。



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