表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/169

第90話 侵入方法を考える

いつもと違いミケちゃんとポチ君の二人がリアカーを引き、俺はその荷台に乗る。

風を切って走る車上、背後を眺めれば遠くでまだ岩の落ちてくる音が聞こえてくる。

あの巨大グールが壁を乗り越えてくるんじゃないかと冷や冷やしたが、その気配は無い。

今頃になっておでこがじんじん……と痛み出した。

ガレキの破片が掠った部分だ。

触ってみると指先を血が濡らし、少し切れてしまったようだ。


「おにいさん、大丈夫にゃー?」

ミケちゃんがリアカーを引きながら、顔を振り向かせる。


「大丈夫だよ。すぐにアーティファクトを使うから」

バックパックの中から回復用のアーティファクト、ブラッドルビーを取り出し。

スパークトルマリンと取り替え、オンにする。

すぐに痛みが治まり、30秒ほどで血は止まった。

まだ触ると染みるがそのうち塞がりそうだ。

痛みも無くなったし。


「そろそろ代わるよ」


「ダメにゃ。ケガ人はおとなしくしてるにゃ」

「そうだよー。ところで何処に向かえばいいの?」

今はとにかく逃げるために大通りを走っているところだ。

ここまで逃げれば、大丈夫だろう。


「ありがとう。とりあえずクーンの所に戻ろうか」


「わかったにゃー」




いつものビルの裏手にリアカーを停め、いつもの様に屋上から入っていく。

本日2回目のエレベーターシャフト滑りをして、地下シェルターへ。


「ただいまにゃー!」

インターフォンにミケちゃんが大声で呼びかける。

すぐにドアがキィィ……と音を立てながら開いた。


「おや、皆様。お早いお帰りですね?

どうぞ、中へ」


「ああ、お邪魔するよ」

「おじゃまするにゃー」

「おじゃましまーす」

さっきも来た応接室に案内されソファーへ。




「……大変だったにゃー!」

ミケちゃんが手を大きく振りながら、さっきの出来事をクーンに説明していく。

巨大グールの話が出るたびに、クーンのカメラアイが瞬きをするようにシャッターを開け閉めする。


「それはまた……、とんでもない化け物が今の世界には居るのですね」


「そうにゃ! あんなのが居るなんて聞いてなかったにゃ」


「確かにギルドでもグールがたくさん居るとは聞いてたけど、アレは聞いてないな」

後で聞いてみるか。


「それにしても困りましたね。そうなると銀行への侵入は無理ということでしょうか?」


「う!……」


「にゃー……、おにいさん。どうするにゃー」

「リーダー……」

二人が俺の服を引っぱってくる。

さて、どうしよう……?


今までに聞いた話をまとめてみるか。

ギルドで聞いた話だと、一番奥である最深部まではまだ誰も到達していない。

でも、その手前までは探索も進んでるんだよな?

多分、壁の中の事だと思うんだが。

そう言えば……前にロックさんが都市遺跡の中心部まで入り込んで、お宝を持って帰ったとか言ってたか。

宿を始める資金をそこで稼いだとか。

何か……入り方があるのか?


「一度、戻ろう」


「ん? 帰るにゃー?」


「うん。ロックさんが昔、都市遺跡の奥の方まで入ったことがあるそうだから話を聞いてみよう」


「そう言えば、そんなこと言ってたにゃ」

「あ、スロット売ったときだねー」


「うん。だからロックさんから中への侵入ルートの情報を手に入れてから、また考えてみようと思う」


「わかったにゃ」


「それでは私は引き続きココで情報収集に当たりますね」


「ん? クーンはあちきたちと一緒に来ないにゃ?

あちきたちの宿、快適にゃよ?」


「ええ、興味があり心苦しいのですが、ココでないとネットが使えませんから」


「すまない。全てが終わったら一緒に行こう」


「はい、その時をお待ちしております」

クーンに別れを告げ、ビルを出る。


二人をリアカーに乗せ、街へ帰る前に一稼ぎだ。

ロックさんはスロット台をあと4台欲しいと言ってたからな。

都市遺跡の入り口に近いビルへと向かう。

ビルの裏手にリアカーを停め、ロープを登って屋上へ。

よく出入りするビルには出入り用のロープを屋上に置いたままにしてあるが、さっきの壁の騒ぎで予備が無くなってしまったな。

また買わなくては。

屋上の出入り口から階段を下りて、29階へ。

ここにスロットがたくさん置いてある。

音を立てないように慎重に辺りを探るが、前に最上階付近のグールを掃討してから、あまり日が経ってないのもあってグールたちは居ないようだ。


「それじゃ俺はスロットを運ぶよ」


「あちきたちはどうするにゃ?」


「なんか良さそうなのがあったら運んでおいて」


「わかったにゃ。あちき、ソファー欲しいにゃー」

ミケちゃんが胸の前で手を合わせて思いふけっている。

クーンの所のソファー座り心地が良かったからなぁ。


「あ、それなら下の階で見たよー」

そう言って、ポチ君が階段へととてとて歩いていく。


「お! 良いにゃ。それ、貰うにゃー」

ミケちゃんも追いかけていった。

その後ろ姿を微笑ましく眺める。


「さて、やるか」

スロットは前に来た時と同様の状態で置いてある。

一台ずつせっせと屋上に運ぶ。

4台運び終えたときに二人がソファーを頭上に掲げるように運んできた。


「そっちはもう終わりにゃー?」


「うん、後はコレを降ろすだけ」


「それじゃ、お先するにゃー」

そう言ってミケちゃんがソファーをぽいっと屋上から投げ捨てる。

すかさず、宙を舞うソファーへと飛び乗り、アーティファクト暴走!

重さを吸われたソファーとミケちゃんがふわりと落ちていく。


「じゃ、僕はコレ持ってくねー」

ポチ君がスロット2台を紐で結ぶと背負い、やはりピョンッと飛び降りていく。


……二人とも飛び降りるのに抵抗無くなってきたなぁ。

俺は今だにビルの上から下を見下ろすの怖いんだが。

俺もスロットを紐で結んで背負うとロープを滑り落ちていった。



いつも読んでいただきありがとうございます。

今週の投稿はここまで、来週は中篇製作2回目(全4回予定)なので。

次の投稿は再来週の金曜日(8/19)になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング よければお願いします。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ