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第88話 銀行は何処かな?

「おじゃまするにゃー」

「「おじゃましまーす」」


「ええ、こちらへどうぞ」

 クーンにこの前の応接室へと案内される。

 ミケちゃんとポチ君がソファーへと大きくジャンプして飛び込むのを咎めつつ、座り込む。


「ふふ。今、お水をお持ちしますね」


「いえ、おかまいなく。すいません」


「ありがとにゃー」

「うん!」


 クーンが一度奥へ行き、コップをお盆に載せて戻って来る。

 俺たちの前に水の入ったコップを置き、テーブルを挟んで俺たちの前に佇む。


「それで今日はどうされました?」


「うん、今日はクーンに相談があって……」


「銀行を襲いたいにゃ。手ごろな所知らないかにゃ?」


「ミ、ミケちゃん!?」

 もうちょっとオブラートに包もうよ……。


「……えっと、今現在、責任者が居らず所有権の無い物件ですよね?」


「はい、そんな感じで。法に引っ掛からないやつで、お願いします」


「ちょっと待ってくださいね。調べてみます」

 そう言ってクーンの脇の辺りの外装がスライドして1本のケーブルが飛び出してきた。

 それを入ってきたドア近くのソケットに差し込む。


「クーン、それは?」


「都市ネットに繋いでみました」


「ネット! 今でもネット環境が生きていたのか!?」


「ええ、ここから接続できるのは都市内限定の地域ローカルネットのみですが」


「ん? 他の場所には接続できないのか?」


「ええ、都市郊外の方でケーブルが断線しているようで。

 無線も記録上ではあったようなのですが、現在使えません。

 こちらは施設が破壊されたか、誰かが止めたのかわかりませんが」


「へー、衛星なんかは無かったのかい?」


「そちらは……利用できませんね。

 今、アクセスしてみたのですがIDとパスを求められますね。

 一応、民間用のネットサービスなのですが……」


「何の話してるにゃ?」

 ミケちゃんが首を傾げている。

 ポチ君は我関せずとぐびぐび水を飲んでいた。


「えっと……何て言ったらいいんだろう?

 遠くの物を調べられる機械のことだよ、多分」


「ふーん……、それで銀行はどうなったんにゃ?」


「あ、そうだ。現在、機能の生きてる施設で検索できるかい?

 カードが必要なんだ」

 カードを作るには破壊された銀行では意味が無い。


「わかりました。今、お調べしますね」

 そう言って、クーンが静かになる。

 俺たちも静かに水を飲んで待つことにした。


「……わかりました。現在オンラインになっていて、ここ100年更新の無い該当物件が1件」


「ど、何処だ?」


「シューストカ市中央区4丁目、大通り沿いのシューストカ地方銀行本店ですね。

 ここから歩いて1時間ぐらいの所ですよ」


「中央……か」

「中央って、もしかして遺跡の真ん中ってことかにゃ?」

「奥はやばいって聞くよう……」


「どうしましたか?」


「聞きたいんだが、その場所はあの壁の向こうなのかい?」


「壁ですか?」


「ああ、えっと……。環状の高架道路が崩れて、今は壁になってるんだ」


「ああ、なるほど。中央区は環内を示しますから、そうなりますね」


「まずいにゃぁ……」

「きゅーん……」


「まずいのですか?」


「ああ、壁の内側はグールの数が桁違いで進むのが困難だと聞いていてね」


「グール……確か放射能でおかしくなってしまった人たちのことですね」


「ああ、それにどうやって中に入るかも考えないといけないし」

 これは一度現地を見てみないとわからないな。


「なるほど。とりあえず該当の銀行にアクセスしてみますね」


「うん、ありがとう」


 ……

 …………


「わかりました。キャッシュカードが発行できる様です。

 ローン用のクレジットカードと電子マネーカードは管軸が違うようで無理のようです」


「キャッシュカードか……。それは電子マネーも納められるタイプなのかな?」


「ちょっと待ってくださいね……。セキュリティメモリ付きのは審査が要る上位カードとしてあるようです」


「ふむふむ、それは簡単に手に入りそう?」


「ええ、機械を操作すれば」


「操作ってどうやるにゃ?」


「う……」

 どうしよう?

 適当にやるって訳にもいかないよな。

 デュプリケイターは破壊専門だから使えないし。

 マニュアルも何処かで手に入れるしかないか?

 考え込む俺たちを見て、おずおずとクーンが声を掛けてくる。


「あの……、良ければ私も連れて行ってもらえませんか?

 機械の操作は得意です、お役に立てると思います」


「え、いいのか? かなり危険だよ?」


「はい。私も外を見てみたいのです。

 皆さんのお邪魔にならなければ、どうか」


「もちろん歓迎にゃ!」

「うん!」


「ああ、こちらこそよろしく頼むよ。機械に強いクーンが仲間になってくれれば心強い」

 クーンへと腕を差し出す。


「ありがとうございます」

 クーンのアームがそれを掴む。


「よろしくにゃー!」

「うん、仲良くしてねー」

 握手した俺たちにミケちゃんとポチ君も手を重ねてきた。


「はい、おねがいします」


「さて、それじゃ早速、中央区へ突入する作戦を立てるか」

 まずは壁をどう越えるかだが。

 これは実際に見てみないとわからないか。


「……それはそうと、今日はアレは無いのかにゃ?」

 ミケちゃんがもじもじとしながら言う。


「ああ! 忘れていました。アレですね?

 今、お持ちします」


「催促しちゃったみたいでわるいにゃぁ」

 ミケちゃんがそうおどけて言うが口元から涎が垂れそうになっている。

 ポチ君もその横で笑顔だ。


 ……


 しばらくしてクーンが奥からお盆にスナック菓子の様な袋を乗せて戻ってきた。

 もちろんカリカリだ。


「うひょー! 待ってたにゃー!」

「わん! わん!」

 二人がクーンに飛びつかんばかりに駆け寄っていく。


「今日は皆さんのお仲間に入れてもらえた記念ですから奮発しました」

 袋の数がこの前の倍あるみたいだ。

 早速、ミケちゃんが手に取る。


「おにいさん、開けてにゃー」

「僕もー」


「はい、はい」

 作戦を練る前にちょっと休憩とするか。

 二人の無邪気な様に微笑み、クーンからも似たような気配が伝わってくる。



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