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第87話 車どうしよっかな?

 宿へと戻ってきた。

 ロックさんに軽く挨拶をし、部屋へともどる途中。

 ミケちゃんとポチ君は現金の入ったカバンをぎゅっと抱きかかえながら俺の後を付いてくる。

 緊張してるのか、ミケちゃんの目は細まり、片手はいつでも硬鞭を抜けるようにしている。


「宿の中だから大丈夫だよ?」


「しっ! 誰が聴いてるかわからないにゃ……。

 おにいさん、急ぐにゃ」


 そんな調子で階段を上る途中も後ろからせっついてきた。

 部屋の扉を開けると、小走りで中へと入る。


「ポチ! 辺りを探るにゃ!」


「了解!」

 そう言ってポチ君は扉に耳を寄せ、ミケちゃんは窓からそっ……と外を覗く。


 まぁ、大金を抱えているからな。

 スラム育ちの二人からすると不安なんだろう。

 微笑ましい目で見ていたところ、ミケちゃんから叱咤が飛ぶ。


「おにいさん、何してるにゃ! 厳戒態勢をとるにゃ!」


「え、うん」

 何をすればいいのかわからないのでとりあえず壁に耳を当てるが、お隣さんは居なかったよな?

 しばらくそうしていたところ、ミケちゃんが納得したのか。

 おでこを腕で擦りながら窓際から離れる。


「ふー、後をつけてくるやつ等は居ないみたいにゃ」


「安心だねー」


「それじゃ報酬を分けようか」


「そうだにゃー。ポチ、こっちに全部入れるにゃ」

 ミケちゃんがカバンを指差し、ポチ君がそれに従う。

 報酬が全て1つのカバンに入った。

 どうするのか?と見ていたところ、おもむろにミケちゃんが顔をカバンの中に突っ込む!


 すー…… はぁー……


「「ミケちゃん?」」

 呼びかけるとミケちゃんがガバッと顔を出し。


「金の匂いがするにゃ……」

 蕩けた表情で言った。


「「えー……」」

 俺たちはそんなミケちゃんに疑問を掛けるが、ミケちゃんはそんなことに構わずまた顔を入れる。

 それを見ていてポチ君も気になったのか。


「ミ、ミケちゃん。次、僕……」

 呼ばれ、再びミケちゃんが顔を出す。


「しょうがないにゃー、ちょっとだけにゃよ」

 ミケちゃんが場所を譲った。


「う、うん」

 ポチ君がおそるおそる顔を入れる。


 すー…… はぁー……


「……どうにゃ?」


「うん! お金の匂いだ!」

 ポチ君も蕩けた表情で顔を上げた。


 二人がそう言うので俺も気になって嗅いでみたが、紙とインクの匂いしかしない。

 正直にそう言うと。


「この香りがわからないとはおにいさんは子供だにゃー。

 稼ぐ大人は一日の終わりにお金の匂いを嗅いで自分を慰めるものにゃよ」

 ミケちゃんがドヤ顔で自信満々に告げてきた。


 スラムの風習だろうか?

 まぁ、二人がお札の匂いを嗅いで遊んでいる間に、俺は今後のことを考えるか。

 目標は車が欲しい。

 現状は現金235万クレジットに電子マネーが1140万。

 電子マネーは使うのに正規のカードを手に入れる等の手順が必要となる。

 現金は正直手持ち乏しい。


 車の販売額は中型車で850万から、50ccの小型車が100万からあるそうだが。

 50ccって多分、原付バイクか一人乗りバギーって言ったところだろうな。

 シャーロットさんにパソコンを卸せば、1台200万クレジットで買ってくれるそうだから現金はもう少し増やせる。

 ……それでも850万は遠いよなぁ。

 パソコンは手持ちが1台、データ解析待ちだ。

 遺跡で拾ってくるにもちゃんと動くのは少ない。

 ほとんどは壊されているからなぁ。

 戦車バザーがやってくるまで後5日だから、それまでに最低あと3台手に入れられるかどうかはわからない。

 50ccの小型車なら現状でも手に入れられそうだが、二人と相談するか。

 カバンに顔を突っ込んで、キャッキャッ遊んでいる二人に声を掛ける。


「ん? どうしたにゃ?」


「車のことで話が……」


「それなら大丈夫なんじゃないかにゃ? 2つも手に入るにゃー」


「2つもすごいねー。お金持ちだよー」


「いや、それが実は……」

 二人に小型車の説明をする。





「にゃー!? そんなの詐欺にゃー、訴えるにゃー!」

「そんなー……」

 予想される小型車の仕様を聞いて二人が驚く。


「50ccの小型車だと多分そうなるだろうから、今後のことを話し合いたいんだ」


「でっかいのが良いにゃ」


「んー、小さいのだと荷物を運べないんだよね?」


「多分。荷物を詰め込むスペースは小型車じゃ無いと思う」


「やっぱ、でっかいのにゃ!」

 ミケちゃんが両手を広げて主張する。


「だねー」


「そうなると金策をどうするか?」


「それなら、前におにいさんがカードから集めてたのはどうなるにゃ?」


「アレが使えればいいんだけど、新規のカードの発行をどこでやっているのやら?」


「リーダーでも知らないの?」


「んー、多分銀行とかだと思うんだけど。この街の中で見たこと無いから……。

 後は都市遺跡か」


「なら、クーンに聞くにゃ! クーンはずっとあそこに住んでるから何か知ってるかもしれないにゃ」


「そうだね、そうしてみようか」

 とは言え、もうすぐ夕方だ。

 今日はもう遅いから、明日会いに行くか。

 それから手に入れた15万シリングを3等分に、クレジットの方は車の購入資金として金庫に入れる。


「うわ! うわ! 大金にゃ! ……どうしよう?」

 ミケちゃんが50枚の1000シリング紙幣を手に持ってうろたえている。


「うわわ……」

 ポチ君も同様だ。


「二人は買いたい物とか無いの?」


「欲しい物はあるけど、こんな大金の使い道なんて考えたことないにゃー」

「だよう」


 とりあえず手に持ってると危ないので金庫に仕舞うことにした。

 金庫を閉めようとするが二人が隙間から匂いを嗅いでいる。

 しっぽを振りながら金庫にへばりつく二人を尻目に、空いた時間で銃の練習をして一日を終える。




 次の朝、ギルドでリアカーを借りて早速都市遺跡へと出発だ。

 クーンの居るビルの裏側へと周り、いつものようにロープを登って屋上から侵入。

 エレベーターシャフトを飛び降りて、地下へ。

 地下シェルターのドアの横のインターフォンを押す。


「遊びに来たにゃー!」

 ミケちゃんが元気良くインターフォンに喋りかけるとすぐに鋼鉄の重いドアが開く。


「おやおや皆さん、ようこそいらっしゃいました」


「やぁ、クーン。ちょっといいかな?」


「ええ、どうぞ中へ」


 さて、クーンに相談してみるか。



いつも読んでいただきありがとうございます。

次の投稿は金曜日になります。

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