第84話 内壁の中へ
すいません、遅れました。
昨日は更新できず、すいません。
リアカーを引いて宿へと戻り、次の準備だ。
お昼にシャーロットさんとの商談があるのだが、時間が差し迫っていた。
部屋へと戻り、都市遺跡から拾ってきた在庫の山を目の前にする。
「おにいさん! ここらへんの服、全部持っていくにゃよ」
ミケちゃんがせっせと荷造りを始めた。
「うん、おねがい」
「ここらへんのおもちゃは?」
ポチ君がエアガンの入った箱を指差す。
「んー……、多分リアカーが服だけでいっぱいになっちゃうから、今回はそれは無しで」
「はーい」
返事を返し、ポチ君はミケちゃんの手伝いにと向かっていった。
そして俺はと言うと……パソコンの前で悩む。
売れば良い金になりそうだが、やっぱし中の情報がマズそうだよな。
まだ見つかって無さそうな工業地帯の情報とか入ってたからな。
……記憶消去するか。
パソコンを立ち上げ、システム画面をいじる。
記憶領域は全て消去だ。
OSはどうしよう?
デュプリケイターに格納したデータの中からOSだけ復元できるかな?
調べてみるとデュプリケイター自身に様々なOSと思わしきディスクデータが入っていた。
これを使って再インストールは出来そうだな。
このパソコンのOSの名前は……ブルースクリーンか。
嫌な名前だ。
……
…………
作業を続け、パソコンの中身をまっさらにした。
よし、これも運んでいくか。
「おにいさーん! 早くにゃー!」
ミケちゃんたちはリアカーの前で待ちくたびれている。
「ごめん、今行くよー」
リアカーの荷台には服の詰まった袋が山盛りになっているのだが、それを押しのけてパソコンを乗せる。
ミケちゃんたちは袋の山をよじ登っていき、いつもの定位置だ。
「出発進行にゃー!」
「はいはい」
リアカーを引いて、待ち合わせ場所の北門へと向かう。
北門の横に黒いリムジンが横付けにされており、その前に背丈の良いメイドが立っている。
「すいません、遅れましたか?」
「いえ、まだ正午前ですから時間通りですよ」
メアリーさんが答える。
「それでは皆様、車の中へ。荷物は別の物に運ばせましょう」
車と聞いて、ミケちゃんたちの目が輝くが流石に荷物を任せるわけにはいかないだろう。
「いえ、おかまいなく。自分たちで運んでいきますよ」
メアリーさんたちが盗むとは思えないが、商売をする以上自分の荷物は自分で持つのは最低の矜持だと思う。
「そうですか。それでは歩いていきますか」
メアリーさんが運転手に何か囁くと、車は走り去って行った。
商談の相手、シャーロットさんは都市の内壁の中に住んでいる。
今、向かっているのも北側の内壁へとだ。
リアカーを引く俺たちとメアリーさんとで大通りを歩く。
「おなか減ったにゃ。向こうに食べる所はあるのかにゃ?」
ミケちゃんが荷物の上にうつ伏せになりながら尋ねる。
「ふふ……、向こうではお食事の用意をしてありますから大丈夫ですよ」
「本当かにゃ! お腹ぺっこぺこにゃー」
「だねー」
「すいません、ご好意に甘えます。今日は午前中、仕事していて昼を取る余裕無くて」
「構いませんよ。お嬢様も楽しみにしているご様子でしたから、と。
着きましたね、私の後ろに並んでください」
内壁のゲートは可動式のバリケードで封鎖されており、その周りにサブマシンガンを構えた兵士たちが構えている。
装甲の付いた戦闘服にガスマスクのようなヘルメットを被っていた。
見えるだけで6人。
「なんか……何処からか見られてる気がするにゃ」
ミケちゃんがそわそわしている。
「ここからは離れないでくださいね。セキュリティレベルが外とはまるで違いますので」
そう言うとメアリーさんが一人の兵士に話しかけていく。
兵士は一度こちらを見た後、手を挙げ。
バリケードが動いて、道が開く。
そこをメアリーさんの後に続いて足早に通り過ぎた。
ここも外壁のゲートと同じで20mほどのトンネルの様な通路のあちこちに穴が開いており、その先から気配を感じる。
よく見れば銃口も見えた。
ゲートを抜けてほっと一息。
「ずいぶんものものしいんですね」
「ええ、テロを警戒していますからね」
「テロ、ですか?」
「スラムや外には反体制派の組織がひしめき、格差の是正や権利の平等化など調子の良い言葉を吐いてますから」
「……確かにそれは調子が良いんでしょうね」
格差の是正、平等、良い言葉だとは思うが俺でもこの世界でそれは危険だとわかる。
「意外ですね、わかりますか。外に住んでいる人はこれに賛成するんですけどね」
「ええ、俺でもこの世界が微妙なバランスで成り立っているのはわかります」
貧しい世界に人外の脅威。
それらに対抗するために武器や食料が人類全体に満足に行き渡るとは到底思えない。
2週間ほどか、この壁に覆われた都市に住んでいればわかる。
この壁の中ぐらいが政府の手が届き、安全な地帯なのだ。
「そうです。我々の手は短い。精々、この都市を守れる程度。
無理に手を伸ばそうとすれば軍の維持費で税が食いつぶされる始末。
それを理解しようとしない輩がエネルギーや銃弾の民間への解放。
都市公社の民営化に市民権の開放などと謳うのです」
「さっき言った反体制派の組織ってやつですか?」
「ええ、何処から掘り出してきたか?
旧時代の負の遺産、共産主義とやら持ち出してきた糞共がいまして……、と。
着きましたね」
なにやら気になる話が出てきたが、会話を打ち切り。
白い大きな屋敷の前にやってきた。
ここがシャーロットさんが住んでいる場所かな?




