第80話 スロットの売り先
巨大アメーバがまた出たとの情報を貰い、鍛冶屋を後にする。
巨大アメーバはなかなか美味しい相手だし、討伐したいが。
先にギルドで情報を貰ってからだ。
誰かが先に討伐の依頼を受けていてバッティングしたら面倒だからな。
と、その前に宿に戻って残りの荷物も降ろさないと。
リアカーを引いて宿へと戻り、3人で部屋に荷物を運んでいく。
スロットを運んでいたところ、受付のロックさんに呼び止められた。
「めずらしいの持ってるな。拾ってきたのか?」
「ええ、近くの都市遺跡で。売ろうと思ってバザーに持っていったんですけど、上手く売れなくて」
「へー、めずらしいのにな。ちょっと見せてくれよ」
「ええ、どうぞ」
ロックさんが受付から出てくる。
一通りいじった後、コンセントを差し込み電源を入れる。
「ちゃんと動くみたいだな。これならうちで買い取るぞ。
3000でどうだ?」
「クレジットでしか動きませんけどいいんですか?」
「クレジットなら多少は蓄えがあるから両替もできるし、問題無いぞ」
どうしようか、と困ったときのポチ君頼みだ。
ポチ君が交渉を替わってくれた。
…
……
結果、3000シリング+シャワーの時間が5分延長になった。
今までのシャワーの時間が1日10分までだったので、この結果にミケちゃんが大喜びだ。
「やったにゃ! これでもっと丁寧に洗えるにゃ」
「良かったね、俺は今まで通りの時間でいいから。その分、ミケちゃんが使っていいよ」
「ホントかにゃ! ありがとうにゃー」
ミケちゃんがぺしぺしと腰を叩いてくる。
「じゃれついてるところ悪ぃけどよ、コレ開けてくんね?」
「あ、はい」
スロットを開けようとするがカギが掛かっている。
カギは?と探したところ底面にテープで貼り付けてあった。
それを使い、開く。
中には絵柄の書かれたリールやそれを動かすモーター等の機械部品が詰まっているが、設定に関係ありそうなのは2箇所のスイッチ。
まずは料金設定からいじっていく。
「1プレイいくらにします?」
「1回10シリングだと……ちょっと高ぇか。
1回1シリングとして、10クレジットにしてくれ」
「はい、……次にコレの設定はどうします?
多分、当たり易さとかだと思うんですけど」
中には1から6までを選べるスイッチが入っている。
俺はギャンブルには詳しくないのでよくはわからない。
「……たしか、数字が高い方が当たり易いんだったな。
じゃあ、2で。いや、最初は当たり易くした方がいいか?
やっぱし6で頼む」
ロックさんがニヤリと笑う。
ギャンブルは仕掛ける方次第だから怖い。
言われた通りに設定しなおして渡す。
「助かるぜ。ちょうど宿の目玉が欲しいと思ってたところだったんだ。
他にもあれば買うぜ?」
代金を貰い、スロットを譲り渡す。l
「何台くらい要ります?」
「このラウンジに5台並べたいから、後4台だな」
「それじゃ今度持ってきますね」
スロット自体は10台あったから良い稼ぎになる。
次はスロットを中心に拾ってくるか。
「おう、頼むぜ」
「それにしてもクレジットが大量に必要になりそうですが、両替とか本当に大丈夫なんですか?」
「おう、俺も昔は遺跡に潜ってたりしてたからな。クレジットは結構拾ってたんだ。
まぁ、その時に一発当ててな。それでこのホテルを買い取って引退したんだが、そん時に手に入れたクレジットは使わずに取っておいたからな」
「ロックさんもハンターだったんですか。何を見つけたんです?」
「へへ、お前たちが遺跡の奥。内側まで行けるようになったら教えてやるよ」
「いつか行ってみせます、楽しみにしていますよ」
「ああ、そうしな。そうだ、早速遊んでいくかい?
クレジットの交換レートは1000クレジット≒110シリングで良いぜ」
「ギルドよりずっと安いですね。
ギルドだと1000クレジットで200シリングって言われましたけど」
「ギルドはクレジットを集めてるからな。まぁ、市販のレートだと1000クレジット≒100シリングぐらいなんだけどな。
へへ、これで両替でも稼げるぜ」
上機嫌に笑うロックさんを後にして、部屋に戻る。
荷物を全部降ろしたら、次はギルドだ。
リアカーを戻しに行く。
リアカーを裏の駐車場に戻し、いつものおかまさんの受付へと行く。
「「こんにちわー」」
「姐さん、こんにちわにゃー」
「あら、いらっしゃい。今日も都市遺跡へ行ってきたの?」
「ええ、探索を中心にしていたので獲物の持ち帰りは無いんですけど」
本当はグールを大量に倒したが燃やしてしまった。
それを言っても混乱させるだけだし、追及されても困るので言葉を濁す。
「そうなの。出張買取が必要なら何時でも言ってね」
「ええ、ありがとうございます。その時はよろしくおねがいします」
「それで今日の用件はそれだけ?」
「いや、実は巨大アメーバがまた出たって聞いて」
「あら、耳が早いわね。まだ依頼は誰も受けてないわ。
受ける?」
「まずは状況を聞いてから」
おかまさんから聞いた話は鍛冶屋の店主から聞いたことと大体一緒だった。
違いは今度のは核が2つあり、その分大きく賢いのではないか?と。
「核が増えると賢くなるんですか?」
「そうよー、アメーバ自体知能なんて欠片も無いものだけど。
核が複数のはなんか用心深かったりするのよねぇ」
「そうなんですか」
「で、どうする? 賞金は前と同じ3000シリングだけど、大きいって聞くから素材の買い取りはそれなりよ」
「ちょっと待ってください」
二人と相談する。
「もちろんヤルにゃ! アメーバ如き、ミケ様の相手ではないにゃ」
「僕は初めてだけどリーダーたちがいけそうだと思うなら良いと思うよ」
「ふむふむ」
「決まった?」
「ええ、受けようと思います」
「それじゃ依頼を受理するわね」
おかまさんに礼を言い、ギルドを後にする。
外に出たら日が落ち始め、夕暮れに掛かろうとしていた。
これは急がないといけないな。
3人で小走りに南門の方へと向かった。
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