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第79話 バザーで相談

 荷物を満載にしたリアカーを引いて街へと戻ってきた。

 北門を抜けたところで一度止まり、リアカーの上に張り付いた二人と相談する。


「手に入れたエアガンとかスロットのことでポン造さんに相談してみようか?」


「わかったにゃ。バザーに行くなら鍛冶屋にも寄って行くにゃ。

 今日あたり、あちきたちの防具が出来てるはずにゃ」


「そうだね。じゃ、このままバザーに向かおうか」


 南門近くのバザーへと向かう。

 ここの一角でトレーダーのポン造さんが露天を開いているはずだ。

 人でごった返す中、すいませんすいませんと頭を下げながらゆっくりとリアカーを引いていく。

 ぶつかりそうになった人たちにミケちゃんたちが荷物の上から手を振った。

 通行人の人たちもクスリと笑ってすれ違っていく。


 ポン造さんは以前に会った時と同じ場所で商売をしていた。

 相変わらずゴザの上にはジャンク品が並んでいる。

 ……以前より減ったか?

 意外と売れるんだな。


「お、にいさんたちやないか。買い物か?」


「どうもポン造さん。ちょっと見てもらいたいものがあって」

 そう言って取り出すのはエアガンだ。


「うぉ! うちは銃器は扱ってないでー」


「いえ、コレおもちゃなんですよ」


「へー、どれどれ……」


 ポン造さんに渡したのは動力がバネ式のエアガンだ。

 手に入れたエアガンは全部で40丁にプラスチックの弾が大きな袋で4つ。

 半分がバネ式で残りが電気駆動の物だった。


「崩壊前に作られたもんか……、良く出来てるなぁ。

 ここを引くと撃てるんか?」

 ポン造さんがトリガーをいじる。


「いえ、その前にスライドを引いて……」

 使い方を教え、地面に向かって撃ってもらった。


「へー、ちゃんと撃てるんやなぁ」


「そうにゃ。思ったより速く真っ直ぐに飛ぶから、部屋の中でも遊べるし、練習もできるにゃ」


「練習……」

 ポン造さんが考え込んでしまった。


「にいさん、コレどれくらい有る? 有るだけ買うわ」


「え、全部ですか?」

 思ったよりポン造さんの食いつきが良い。


「全部で40丁、バネ式と電気式で半分ずつ。

 電気式のは自分たち用で取っておくつもりなので全部は売れませんが。

 どれくらい買います?」


「んー、バネ式の全部欲しいわ。

 電気式のは充電が街中じゃないと出来んからなぁ。

 1つ……100シリングでどうや?」


 値段を提示されるがこれが適正価格かどうかわからない。

 ポン造さん自身取り扱ったことの無いものでもあるみたいだし、悩む。

 そこで服をくいくいと引っぱられる。

 ポチ君だ。

 ポチ君にタッチして、俺は下がることにした。

 …

 ……

 ………

 ポチ君とポン造さんが舌戦を繰り返し、最終的な価格は350シリングとなった。

 本物の銃の買い取り価格が1000シリングからだから、それを考えれば結構良い額だ。


「はぁ……、これで今回の買い取り予算全部使ってもうた。

 ポチはんは容赦ないで」


「あはは……」


 ポン造さんから代金の7000シリングを受け取り、エアガンとおまけにプラスチック弾の入った袋を2つ渡し取引を終える。


「そういえばコレも手に入れたんですけど、買い取れます?」

 今度はスロットを見せてみた。


「ああ、スロットやな。にいさんら、ずい分面白いの拾ってくるなぁ。

 わしはもうすっからかんやから買えんけど、酒場や闇賭場に持っていけば買ってくれるんやないか?」


「闇賭場?」


「スラムなんかにある賭け事をする場所や。

 ガラの悪いのが仰山居るからおすすめはせんけどな」


「そうですか。酒場でも買ってくれるんですか?」


「ああ、部屋の隅っこに置いてる酒場とかあるなぁ。

 酔っ払ったバカがハマってスルんや。ただ……」


「何でしょう?」


「それ遺跡から出てきたんならクレジットでしか動かんはずやから。

 シリングでも動く様にしないと酒場では買わんかもな」


「改造かぁ……」


「そこらへんのツテはわしはこの街には居なくてなぁ。

 すまんけど紹介できんわ」


「いえいえ、参考になりました」


「それじゃ、また掘り出し物があったら持って来てな」



 ポン造さんと別れ、次は鍛冶屋へと向かう。

 兵隊アリの甲殻を元にミケちゃんとポチ君の防具を頼んでいたのだ。


「こんにちはー」


「いらっしゃい、あんたらか。注文の品は出来てるよ」

 声を返したのは、バンダナをした若々しい男の店主だ。


 店主が見せてきたのは黒い光沢のある手甲と脚甲が2組。

 二人の来ている軍用のトレンチコートではカバーできない部分の防具だ。


「早速着けるにゃ!」


「うん!」

 二人がいそいそと身に着け始めた。


 今までコートの裾から出ていた剥きだしのモフモフな手足に黒い装甲が填められていく。

 二人が身に着けた防具を見て頬を緩ませている。

 ミケちゃんが手甲を爪で弾いてみたところ、キーン……と陶磁器のような甲高い音が鳴った。


「あれ? アリの甲殻ってあんな音しましたっけ?」


「そこらへんが時間が掛かった理由でな。

 水分を抜いて、代わりに特殊なニスを充填して乾かしてあるんだよ」


「ニスってテーブルとかタンスに塗るアレですか?」


「ああ、そのニスだよ。荒野サボテンから採れる樹液を煮込んでアルコールを足した物が乾くと粘りのある良いニスになるんだ。

 アリの甲殻を丸1日乾燥室で水分を抜いてな、それをニスを入れた鍋で煮込むんだ。

 それを乾かして、形を整えれば完成さ。金属に近い剛性に、割れや破損を防ぐ粘性を持った良い素材だよ。

 甲高い音が鳴るのは中までみっちりとニスが埋まった証拠さ」

 自慢げに店主が語る。


 改めて二人の装備を見るが良い仕事をしてもらったようだ。


「ありがとうございます。二人の防具に隙があったのは不安に思っていたのでとても助かります。

 お代はいくらぐらいでしょうか?」


「ん、それぐらい大丈夫にゃ。自分たちで払えるにゃよ」


「そうだよー。さっきポン造さんから受け取った代金の分け前もあるし、大丈夫だよー」


 二人がそう言うので任せることにした。

 チームだしな。

 いつまでも過保護にいるわけにもいかない。

 二人は1000シリングずつ出して、お礼を言っていた。


「そういえばお客さんたちは巨大アメーバを倒したことがあるんだよな?」


「ええ、前に東のスラム近くに出たのを倒したことがありますけど?」


「また出たらしいぜ。今度は街中だ。

 この近くの排水溝ででかいのが出たんだとさ」


「へー……、ちょっと見に行ってみようかな」


「お、お、アメーバにゃ? あちきがぶっとばしてやるにゃ」

 ミケちゃんが新品の装備を見せ付けるようにシュッ!シュッ!……とシャドーを放つ。


 巨大アメーバは討伐代金も手に入るルーブルもかなり良い。

 ちょっとギルドで聞いてみるのも良いな。

 リアカーを返す時に相談してみるか。



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